第57話 迷えるリリーちゃんのシャレにならない愚痴

 

 拝啓、前世の両親へ。愚痴に付き合うにはそれなりのスキルが必要だと思います。相手の話に乗り、肯定し、うまく不満を吐き出させる。そんなスキルが。その点私は人と対人関係を失敗し続けていたのでそのようなスキルは持っていません。今日この日、今まで以上にこのスキルを渇望したことはありません



             敬具

             フルール・ヤマト・ジャポニカ




 お嬢はあれから『報連相』の大切さを身に染みて分かるほどこってり絞られた。そして、お嬢が画策していた計画をつまびらかに話した。そしたら一番ノリノリになったのはイザベラ夫人だった。

曰く、「こんなスリリングな事やってみたかったのよ」とのこと。この辺からやっぱり血は争えないんだなと思いましたマル。お嬢もなんだかんだで、はっちゃけるときははっちゃけるしね。


 まあ、そのことは置いといて。今日は文化祭準備の初日です。何事も一が肝心だと言います、それはこの準備においても同じことだと言えましょう。私たちが目指すのはそう、誰もが「あっ」と思うほど完璧な相談所を作ることです。


 「完成しました。これが『フルール皇女の悩める子羊達へ相談所』です。」


 …一日で終わってしまいました。サーカスのテントみたいな模様をしていて、横の部分は黄金色、屋根?の部分が紫色になっている。見た目で想像しやすいのは、コ〇ネシティにあるポ〇モンのニックネーム変更のNPCがいるテントだ。

 なぜここまで早く終わったかというと、事前にユリウス君が必要な物、内装に使える家具、組み立て想定図を作ってきてくれたおかげです。初日にして暇になりました。


 「では、ここからは前日に決めてあった通りにどんどんグレードアップしていきましょう。」


 なぜか仕切り役になってるマリーちゃんが「ふんす」と聞こえてきそうな意欲満点な声をかけてきた。


 「けど、何をすればいいのでしょう?正直ここからどうすればいいのか見当もつかないです。」


 「それな、分かるわ~ナノアちゃん。ぶっちゃけこれで十分でしょと思ってしまう自分がいますよ」


 えーもうこれでよくない?私これ以上働きとうないぞ。


 「確かに手詰まりですね。これは…もうこのままでいいのではないのでしょうか?後は聡明(笑)なフルール皇女が誰もが相談したくなるような相談所にしてくれますよ」


 「…お嬢、それ絶対に馬鹿にしてますよね。絶対聡明(笑)って言ってるでしょう。」


 「ええ、馬鹿にしてますけど?」

 

 「野郎ぶっ殺してやらぁ!!」



 そんなこんなでじゃれていたら後方から客人がやってきた。


 「やあ、同志フルールよ。準備は…順調のようだな。」


 「あ、作中では1か月半しか経ってないのに約1年ぶりに登場の同志ダーリアではないか」


 「…すまない、何を言ってるのかが分からない」


 「いえいえ、気にしないでください。」


 本当に久しぶりだな。正直忘れかけていた人物だぞ。作者ァ、作ったキャラはちゃんと責任もって登場させろ。


 「それで?何か用があるのかね?」


 「ああ、冷やかし半分だがちゃんとした用事だ。先程リリー王女殿下にお会いしてな、君のとこに行くと話したら伝言を頼まれてな。『今度お時間がありましたら王女と皇女二人っきりでお話しませんか?』とのことだ。」


 …怪しい。とても賢いフルールちゃんは気づきましたよ。そう、粉バナナ!こんな見え見えな罠引っかかるわけないじゃないですか。しかし、私は天下のフルール皇女だ。罠など食い破ってしまえばいいのだよ!故に私は罠に飛び込む、いい情報もあるかもしれないしね。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。


 「わかりました。その旨は直接伝えに言っていった方がいいですかね?」


 「ああ、そうしてもらえると助かる。何分こちらの準備は終わってないからな。クラス出しものとは別に教会関連で出すものがあるからな。」


 「それなら私も手伝った方がいいのではないのでしょうか?端くれとは言え、私も百合教信者ですので。」


 「いや、大丈夫だ。同志の手を煩わせるわけにはいかない。お気持ちだけ受け取っておこう。」


 「さいですか。リリーちゃんはどこに?」


 「噴水前広場でお話を聞きました。20分ほど休憩を取る予定だとおっしゃっていたので、今から向かえばまだいらっしゃると思います。」


 「分かりました、では待たせるのもなんだし、すぐ行きますね。では皆様今日はお疲れさまでした。」


 「「「お疲れさまでした」」」


 うん、皆な元気だね。私とは違い本当のピチピチJK達だ。声のハリが違うよ。


 



 --------------------------------------------




 移動中によくよく考えたら皇女って私以外にもアーちゃんいるよね?と思い、ナチュラルにハブられてるなと感じたフルールさんだぞ。


 さて、目的地に着きました。この学園の名物にもなっている噴水前広場にやってきました。名物とはいっても陰キャの者ども御用達の一人になるスポットという意味だけどね。

四方を建物の廊下と廊下に挟まれた場所にある広場で、真ん中にポツンと噴水があり、その周りには丁寧に整備された芝生、そして北側にベンチが一つ置いている間取りになっている。

 そのベンチに1人で、物思いに更け空を眺めてるリリーちゃんを見つけた。さながらその様は少女漫画のようだ。まあ王女だなんて設定自体少女漫画だろと言われてはお終いですが…


 「やっほー、リリーちゃん。話は聞いたよ。何か二人きっりで話したいことがあるんだって?」


 「あ、フルールさん。伝言上手く伝わったようですね。」


 「まさかリリーちゃんから呼び出されるなんて思ってもみなかったけどね。それで?どうしたの?」


 「はい…実は…って立ち話はなんですから私の隣にどうぞ。」


 王女と隣合わせで座れるなんて…こーれ中々ないですよ。


 「では失礼して。本日はどうされましたか?」


 …会話下手くそか!本日はどうされましたかって医者じゃ無ねぇんだから。


 「実は…フルールさんには私の人生のハジメテに付き合ってもらいたくてお呼びしました。」


 ハジメテ…がなんだって(迫真)あーいけません、王女のR18指定は不味いです。薄い本が厚くなってしまいます。


 「ほう、ハジメテですか。」


 「ええ、ハジメテです。」


 「任せてください。バッチリとリリーちゃんの役に立って見せましょう。」


 みんな、ごめん。私、一足早く向こうに行きます。


 「ありがとうございます。私のハジメテの愚痴に付き合ってくれて。」


 ……ん?…ん?(宇宙猫状態)…あーそーゆーことね 完全に理解した。←わかってない(ポ〇子状態)


 「私は立場上誰かに愚痴を吐くなんて事が出来なかったのですが、同じような境遇のフルールさんにならと思い声を掛けました。」


 「…愚痴の前にリリーちゃんには指導を入れないといけませんね。」

 

 「指導?」


 ここでクワッ!!と目を開く!


 「女の子が何度もハジメテを強調してはいけません!R18指定になってしまいますよ」


 「R18?そう、とにかく気を付けるわ。」


 「それで愚痴の内容はなんですか?なんでも言っていいですよ」


 「まあ、半分相談のようなものなのですが…母親に弟か妹どっちが欲しい?と聞かれた時、どう対応すればいいのでしょうか?」


 「え?…え?…ッスーーーー。その…そういう知識はあるの?」


 リリーは恥ずかしそうに頬を真っ赤に染めながらコクンと首を縦に振った。


 「…閉廷、お疲れさっしたー。」


 「ちょっと!本気で困ってるんですが!」


 「心中お察しします。最早拷問ですね。」


 「そうなのよ、そ、そういう方面の教育もされてきているのにそれを聞かれるなんて…両親の生々しいの想像しちゃうじゃないですか。ものすごく虚無顔になりますよ。」


 「まあ、冗談はここまでにして、私個人の意見からすると…ちょっと待ってください。私も両親のを想像しちゃいました。…ごほん、結論から申し上げますと、もう率直に弟か妹というべきです。」


 「…やっぱりそれしかないのよね…」


 「ええ、残念ながら。」



 この時、偶然通りかかった生徒は後にこう語った『お二人ともスンと虚無を見るような顔をし、空を見上げていたが、空とは違うナニかを見ていた』と

 



 


  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る