第147話 神器灯台 5
シオムのところから帰ったフンボルは早速船乗りたちに声をかける。そのときに海域の主の居場所も知らせた。その反応は無事と知って安堵する者がほとんどで、悪くいう者は皆無だった。
募集を頼まれた次の日の夕方、集合場所に指定した埠頭に人が集まってくる。
話を聞き海に潜ると決めた者たちで、その中には浜で海域の主の無事を祈っていた女もいて、フンボルとサシャムに近づく。サシャムは話し合いの様子を父に伝えるためにいるのだ。
「フンボルさん」
「ラザ、お前も潜るのか」
「はい。それで調査のあとに海域の主様がいるという場所の海上に連れて行ってもらえないかと」
「参加はそれが目的か。まあ、お前たちは海域の主様のことが一番気になるだろうしな」
ラザは申し訳なさそうに俯く。
「わしとしてもどのような状態なのかは気になる。いいぞ」
許可が出るとぱっと顔を上げて、嬉しさと安堵が混ざった表情を浮かべた。
「ありがとうございますっ」
「もう少ししたら希望者が集まりきるだろう。それまで待っていてくれ」
「はい」
ラザは再度頭を下げて、隅へと移動する。そのラザにサシャムが近づいて雑談を始めた。楽しげな雰囲気な二人を見て、フンボルはふっと笑みを浮かべた。
十五分ほど経過し、集まり切ったと判断したフンボルが大声で注目を集める。四十人には足りない人数がフンボルを見る。
「説明していくぞ。海に潜って海底で探し物をしてもらうため集まってもらった」
それで間違いないなと聞くと、頷きが返ってくる。
「潜ってもらうところは五ヶ所。その海底におかしなものが落ちているということだ。それが海に異常をもたらしている。シーカーの狩場には動物の彫刻が地面に埋められていた。海にも似たようなものがあるかもしれないし、また別のものかもしれない。怪しいものは直接触れずに回収してもらいたい」
やってもらいたいことを再度説明し、クルーガム様に潜水の知識をもらえることも説明して、疑問があるか尋ねる。
「知識をもらってすぐに潜るのか?」
「練習をしてからだ。実際にやってみてやはり無理ということあるだろうしな」
ほかには特に疑問はないようなので、皆で神殿へと向かう。
皆で神託の間に入ると、人数にあわせた広さの空間に出る。
中央に置かれた神像に皆で一礼すると「知識を与える」と声が聞こえてきた。
神像から人数分の光の粒が発せられ、皆へと飛んでいく。
光が体に触れて吸い込まれると、脳内についさきほどまでなかった知識が浮かんだ。海中で泳ぐ方法、海中行動の注意点、海中で受ける身体の影響。そういった知識が与えられたものだとわかる。
「知識は与えた。あとはお前たちがそれを使いこなすだけだ。朗報を期待している」
ありがとうございますと一同は再度頭を下げて、神託の間から出て、埠頭に戻る。
知識について話している者たちへと、フンボルが手を叩いて注目を集める。
「明日の朝から浜で練習だ。当然水着で、体をふくものと少量の薪を各々持ち寄ってくれ」
「炊き出しをしてもらえるように父か神殿のどちらかに伝えておきます。体が冷えたら焚火以外に、暖かいスープを飲んで休めた方がいいと思います」
サシャムがそう言うと、皆から感謝の言葉が向けられた。
解散になり、フンボルたちは家に帰り、サシャムは神殿に向かう。
神殿の長に話し合いや炊き出しのことを伝えると、神殿から人と材料を出してもらえることになった。
そして翌日、朝の用事をすませた者たちが浜に集まり、浅瀬で知識を試していく。
フンボルは体力的な問題で潜らないが、問題が起きたときのため朝から浜で練習の様子を眺める。
浅瀬で試してみた結果、脱落者はでず、もう少し沖に出てみることにした。
今すぐではなく午後から練習することにして、皆が昼食をとっている間にフンボルとその手伝いが練習予定の沖に魔物避けの薬をまく。
昼食をとってきた者たちが戻ってきて、いくつかボートを準備する。
それに乗って薬をまいた沖に移動し、フンボルが海に顔をつっこんで海中の様子を探る。
「薬は効いているようだ。だが油断はするなよ」
フンボルが注意を促し、次々と海に飛び込んでいく。
海上で泳ぐのは全員平気だった。息を止めて海中に潜っていく。
ここの深さは三十メートルほどで、潜る予定のところはもう少し深い。与えられた知識から五十メートルくらいではないかと潜った者たちは推測する。
実際に潜ってみて、リタイアしてくる者たちが六名出てきた。
フンボルの乗るボートに近づいて詫びる。
「すまない。俺たちは無理だ」
「気にするでない。得手不得手といったものは誰にでも存在する。潜る者たちのフォローに回ってくれ」
「わかった。サポートを頑張るとするよ」
リタイアした理由は水圧に慣れない、暗い水の向こうに恐怖を抱いた、呼吸が長続きしないといったものだ。
残った者たちはそのまま練習を続けて、練習後に体調の変調がないか調べたあと、問題の海域に挑戦することになる。
翌日、二隻の中型ボートが港を出る。北から調査していくメンバーと南から調査していくメンバーに別れたのだ。
フンボルとサシャムは南側のボートに乗っている。こちらの調査は二ヶ所で、その後海域の主がいるらしいところへ向かう予定だ。
一つ目の海域に到着し、潜る者たちは火ばさみを持って次々と海に入り、海底を目指して潜っていく。
一度目の探索を終えた者たちは休憩のためボートに上がる。
サポート役に、体調におかしなところはないか聞かれて、大丈夫と答えていく。
そんな一人にフンボルは近づく。
「海の様子はどうだった?」
「異様でしたね。練習したところだと魚や蟹などがいましたが、こっちはそれらがまったくいません。死んだ海と言われても納得しそうなくらい静かなところでした」
「毒とかそういったものは感じ取れたか?」
聞かれた男は首を横に振る。
「薬といったものは使われていないと言い切れます。儀式とやらのせいなのでしょうね」
「そうか。引き続き調査を頼む」
三十分の休憩を終えて、再び潜っていく。そして人工物を見つけることができた。
それは十五センチほどの陶器の人形だ。配色がなく置物や玩具というには無骨。ここらではみかけない感じのものだ。
念のためもう一度潜って、ほかにも探してみたがそれ以外におかしなものはなかった。
次の海域でも同じものを探したが見つからず、また明日探すことにして海域の主がいると思われる東へ向かう。
「とりあえずここらでいいか。魔物避けの薬を撒く。その後潜るように。だがこれまでの海域と違って魔物がいる可能性が高い。少し潜って危ないと思ったらすぐに引き返すように」
いいなと潜るラザたちにフンボルは強く言う。
ラザたちは頷き、薬がまかれたあと二十分ほどして海に飛び込む。サシャムは飛び込もうとしているラザに無理はするなよと心配そうに言っていた。
フンボルたちは心配そうに海面をじっと見る。
一分ほどでラザたちはボートに上がってきた。
「ここらにはいないようです。もっと東をお願いします」
「わかった。船を動かしてくれ」
フンボルの声を聞いて、船が動き出す。
「魚や魔物はどうだった」
「ここらにはいました。魔物は薬のおかげか離れたところをうろついていましたけど、私たちに気付いたのか近づいてきそうでした」
「あの二ヶ所以外では正常な反応だったか」
ラザたちは頷いた。明らかに探索した二ヶ所とここは海の様子が違ったのだ。陸地のようにいろいろな音が聞こえてくるわけではないが、魚たちが泳いでいる姿が見えるだけで静けさは感じなかった。
船が移動する。そして二度目の移動で、ラザたちは海底でじっとしている二十メートル近い巨体を発見することができた。怪我をしている様子はないが、ほぼ動きがなく深く眠っているようだった。
ラザたちは一瞬死んでいるのではと思ったが、もしそうだったら水生生物たちに食い荒らされているだろう。それに死んでいたら、セブレンが気配を感じ取れなかったはずだ。
ラザは近づいて触れたかった。無事だと知りたかったし、心配していることを伝えたかった。
だが魔物がうろついていて危ないので一緒に潜っていた者たちに止められた。
名残惜しそうにしながらラザはボートに上がる。
「いました! どこか怪我をしている様子はありませんでしたけど、反応がなくて。私たちが近づいたときは反応を返してくれるのに」
「死んでしまっているのか?」
ラザはそんなことはないと勢いよく首を振る。
「死んでなんかいません!」
「そうか。怪我でないとすると病気の可能性もあるか」
「医者を連れてきた方がいいのでしょうか」
「馬といった身近な動物の医者は探せばいるだろうが、海の生き物の医者などいるのか?」
フンボルは聞いたことがなかった。しかも海域の主は魔獣だ。動物の常識が通じるかもわからない。
「人間が手を出すと悪化させるだけかもしれない。自然治癒に任せた方が無難だろう。そのために海域の主様もじっとしているのかもしれない」
ラザも医者に心当たりはないので、なにかできることはないかと思いつつも見守ることに同意するしかなかった。
像の回収と海域の主の確認を終えて、港に戻る。
北側の回収班は先に戻っていて、埠頭でフンボルたちを待っていた。
「おかえりなさい。こちらは収穫と思えるものがありました」
「こっちと同じものかもしれないな。こっちは一つの像だ」
「こっちもです。二つの像が見つかりました」
「クルーガム様のところに持っていって確認してもらおう。ほかの者たちは明日に備えて十分に休んでほしい」
「フンボルさん。私もついて行っていいでしょうか。もしかしたらクルーガム様が海域の主様について解決策を持っているかもしれません」
サシャムもお願いしますとラザの隣で頭を下げる。
少しでもラザの不安が晴れるならと承諾し、回収した像を持って神殿に向かう。
「クルーガム様。回収してきました」
「像の前に置いてくれ」
フンボルたちは手袋をした状態で神像の前に回収した像を置く。
「ああ、間違いない」
すぐにクルーガムが像のことを見抜く。うっすらとだが、たしかにダストがこびりついているのだ。
「儀式として用いられたものなのでしょうか?」
「そうだ。あと二つ海中から回収してくれ」
「それはもちろんです。ちなみにこれを使った儀式とはどのようなものなのでしょう」
「海で起こる悪いことの切っ掛けを、その像に集めるんだ。海に下ろして一年経過したら回収し、潰して別のものに作り変える。作り変えることで、集めた悪いものをなかったことにするんだ。今回はその逆になっていると思ってくれ。作られた像に悪いものを詰めて、長時間かけて海にばらまく。それを察して海に生きるものは近寄らなかったのだろう」
今回詰められたのはダストだ。儀式とダストが組み合わさって、生物も魔物も避ける空間ができあがったのだった。
その空間を作ることの狙いはなんなのかとクルーガムは考えるが、さっぱりわからなかった。
「クルーガム様?」
急に静かになったクルーガムに疑問を抱き、フンボルは呼びかける。
「ああ、少し考えごとをな。儀式に関してはそのような感じだ。次は海の魔獣についてだが、俺では状態も解決策もわからんな。町に近づいてきたらわかるが、離れた海底にいられると見えない。それでもなにか情報を得たいというなら、一度だけ触れるくらい間近に近づくことだ。その記憶を見ることができたら少しは状態がわかるかもしれん」
人の記憶に出てきたものの記憶や感情は探れない。しかし呪われていたり病気かどうかくらいはわかる。
やりますとラザが言う前にフンボルがやめておきますと答えた。
「フンボルさんっ」
「お前の気持ちはわかるが、危険だ。魔物がいたのだろう? 魔物避けを使っても近づいてきそうだったと聞いているぞ。普段ならばお前たちに危険が迫れば海域の主様が助けてくれるだろう。しかし今回は危機に気付かないかもしれない」
「それでも!」
「お前の考えていることはお勧めしない」
クルーガムからも止められる。
「お前に危機に迫れば、海の魔獣は確かに動くかもしれない。しかし休養をやめるということでもある。無理をさせて現状を悪化させてしまう可能性がある」
ラザはそんなこと考えていないと思わず否定しようとしたが、その前にクルーガムが続ける。
「心配する思いの中に、自分が危機に陥ればという思いも確かにあったのだ」
「……」
改めて指摘されて、ラザは自分たちの家系が海域の主にとって特別だから危機に駆けつけてくれるという思いがあったことを自覚する。
大事に思っている海域の主を、思い通りに動かそうとしたことが恥ずかしく愚かしいと落ち込む。
「たしかにお前たちの家系は魔獣にとって特別だろう。しかしお前たちのために存在しているわけではない。あれ自身の考えで、お前たちを見守っている。無茶が過ぎると見捨てられるぞ」
「……はい」
海域の主に見捨てられうる行為だと指摘されて、ラザは項垂れる。
それを聞いてフンボルは疑問を抱く。
「ラザがこう考えたのはクルーガム様のお言葉が発端です。しかし否定したということは、別の方法があるのでしょうか?」
「止めたのはわざと危機に陥って魔獣を動かすということだぞ? 十分に魔物対策をとって近づくなら止めることはない」
「ああ、そういえば。しかしなにか方法はありますか?」
「簡単だ。囮を用意すればいい。魔獣のいる場所から少し離れたところに魔物寄せの薬などを撒いて、魔物の注意がそちらに向いているうちに魔獣に近づけばいい」
言われてみればたしかに簡単だった。
もっとも実行するにはしっかりと魔物対策をとる必要があるのだが、そこまでクルーガムは口を出す気はない。
フンボルはその方法を皆で考えることにして、神託の間から出る。
翌日も像の回収作業を行うため埠頭に集まる。そのときに海域の主の状態を調べるための提案を行う。皆に良い方法を考えてくれと頼んで、出港する。
そして二つの海域で像の回収に成功する。
あとは帰るだけというとき、北側で回収をしていた者たちは貿易船を見つける。港に寄ろうとしているのだろう。どんどん接近してくる。
ぶつからないように離れておこうと思っていたそのとき、海中に大きな影が見えて、すぐに貿易船が大きく揺れた。
「大型の魔物が出たのか!?」
「いや、あれは」
海域の主様だと呟くと同時に、その姿が海中から姿を見せた。
呟きのとおり海域の主であり、貿易船に体当たりをしかけている。
ここらの人間にとっては驚きの光景だった。船を助けることはあっても、攻撃をしかけたことなどなかったのだ。
海域の主によく似た魔物だと思いたかったが、何度も姿を見た彼らが見間違うことはなかった。
「ああっ、沈んでいく」
海域の主の攻撃で致命的なダメージを受けたのか、船が傾く。
「見ている場合じゃない! 助けよう!」
「そうだな!」
船を操作し、傾いている船に近づく。
海域の主は船が沈み始めた時点で去っていたので、彼らは警戒していない。
「なあ、おかしくないか?」
「なにがだよ」
海に飛び込むため服を脱いでいた一人が疑問を抱く。
「あの船に慌てた雰囲気がないような気がするんだが。沈みかけていたら乗っている奴らが慌てふためいたり、海に飛び込んだりするんじゃないか?」
そう指摘されて彼らは沈みかけている船を見る。
小型ボートで脱出しようとしている者はいるがごく少数で、甲板で騒ぐ者や海に飛び込むような者は皆無だ。
たしかに異様な感じだった。海域の主が攻撃をしかけたのにはなにかしらの理由があるのだろうかと思えた。
「だが助けないわけにもいかないだろう」
「そ、そうだな」
急いで服を脱いで、沈む船に巻き込まれないようにロープを腰に結び、男たちは海に飛び込む。
その間にも船は沈んでいく。船員も一緒に沈んでいるところが見える。
ゆっくりと手足を動かすだけで泳ぐ様子がない船員に疑問を抱きつつ、近づいて抱いて泳ぐ。
「連れてきた! 動きが鈍く自力で甲板に上がれそうにない。ロープを下ろしてくれ、結ぶ」
「おう」
ロープが下ろされて、それを使って救助された船員の胴に結び、合図を出す。
船員が甲板に上げられたのを見て、男はほかの船員を救助に向かっていった。
船員を引き上げた者たちは、溺れたから動きが鈍いのだろうと水を吐かせようとする。
「これは!?」
船員を横にすると服の背中側が破れているのがわかる。その破れた部分と同じところに傷がある。
まずは手当かと服をめくりあげておかしいことに気付いた。
血が全く流れておらず、乾燥した血が傷口に少量こびりついていた。できたばかりの傷ではないのではと思う。
「ど、どういうことだ?」
「わからん」
傷を治療した様子なく、放置したのなら死んでいてもおかしくはない。しかし少しだけだが動いていて、不気味にしか思えない。
「海域の主様はこれが危険だと判断したから船を壊した?」
「わからん。これには悪いが縛ろう。突然暴れてもおかしくない」
「そ、そうするか」
船員は五名ほど救助される。どの船員も同じような状態で、泳ぐことをしないため船と一緒に沈んでいった。
これ以上は救助不可能ということで海に入った男たちは甲板に上がる。
「なんで縛っているんだ」
「これらは異常だ」
傷のことを話すと、救助した男たちは自分たちでも確認し、同じように不気味だと感じる。
「医者に見せてどうにかなると思うか?」
「いや無理だろう。クルーガム様に知らせた方がいいと思う」
こんなもの医者に見せてどうにかなる状態ではないと判断し、ほかの者たちも同意して港へと帰る。
先に帰っていたフンボルが船から降りた者たちに近づく。
「少し遅かったな。探すのに苦労したのか?」
「探すのは苦労しなかった。アクシデントがあったんです。海域の主様が船を襲って」
助けた船員が異常だと続ける前に、ラザが嘘だと遮る。
「海域の主様がそのようなことするはずがありません!」
「見間違いじゃない。俺たちも見間違いと思いたかったが、本当に海域の主様だった。それにまだ続きがある」
ラザの肩に手を置いて静かにさせ、フンボルは先を促す。
「助けた船員たちが異常なんです。何日も前に致命傷を負っていて、しかもそれを治療していないのに生きている」
「どういうことだ? 今回のことで傷を負ったというわけではないのか」
実際に見ればわかると言って、甲板に寝かせている船員たちを見せる。
彼らを見たフンボルたちも異常だと判断する。
「神殿に連れていっていいものかもわからん。空いている倉庫に入れておこう」
皆で倉庫に運び、フンボルたちは回収した像を持って神託の間に向かう。
二つの像を神像の前に置いて、報告する。
「まずは回収ご苦労。この二つも儀式で使われたものだ。そして動く死体が出てきたか」
「動く死体……救助した船員のことですよね」
フンボルが確認するように聞く。
「そうだ。冬頃に西の方で同じようなものが出てきたんだ。フレビスの仲間がしでかしたことだった」
「フレビスという女がいろいろとやっているとは聞いています。あの船に乗っていたということでしょうか」
「もしくはその仲間かもしれないが」
「海域の主様も動きを見せました。船の異常を察して攻撃をしかけたのかもしれません」
フンボルの予想をクルーガムは肯定する。
「海を荒らしたフレビス本人か似た者の気配を察して、攻撃をしかけた可能性はあるだろう。ただの貿易船ならば攻撃する理由がない。もし理由なく攻撃したのなら、フレビスになにか仕込まれて暴走しているんだろう。暴走を耐えるために眠って耐えていたが、フレビスたちが近づいたことで刺激された。推測だがな」
「そこらへんを調べたいなら海域の主様に接近しないといけませんか」
「ああ、そうだな」
フンボルたちは本格的に陽動を行うことを決める。
神殿を出て、すぐに話し合いを行おうと思っていたが、無理だった。船を沈められた商会が海域の主の排除を訴えたのだ。
商会の人間が今後同じことが起こるかもしれないと言い、それを聞いたほかの商会に動揺が生まれた。
地元の人間はそのようなことありえないと言い切るが、外部の人間は海域の主を信じられていないのだ。
外部の人間を落ち着かせるのに時間を取られて、魔物の陽動を行うのに数日かかることになった。
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