第100話 雷雲の台風と混濁の台風

 やはり、味方とは心の支えとなるものである。狼や冒険者達がヴァリアンの強さに救われているように、ヴァリアンも仲間に……特に狼達の存在に助けられていた。


 火水闇、3つの閃光が視界に入るたびに、全身に力がみなぎるような感覚に襲われる。その攻撃が自分を助けるためのものだと理解しているからこそ、より仲間の存在を意識した。


「……絶対に守る」


 改めて決意を。迫り来る黒雲の台風を前に、ぽつりと呟いた。


【大風妖の瞳】【風龍の両腕】【天災の悪魔の胴】【翡翠蝶の羽】


 体を魔物へ変化させると、風を操った。風鬼雷鬼の台風に対抗するように、天災を引き起こす能力を用いて台風を巻き起こしていく。


 砂や土を巻き込み巨大化していく濁った台風。十分災害と言えるレベルの大きさであるが、しかし。それは風鬼雷鬼のものより1回り程度小さく、ぶつかり合ったとして、とても打ち勝てるようには思えぬようなものだった。


 もちろん、ヴァリアンもそれは理解している。そのため、風龍と大風妖、それから翡翠蝶の力を用いて台風を強化していく。


 風をかき集め、土砂を巻き込み、高速で旋風させる。あまりの風邪の強さに耐え切れず、何体かの魔物が台風の一部となった。


 そして、それはやがて風鬼雷鬼の台風を超え、超巨大な混濁の台風となった。


(これならぶつけても平気そうだな)


 台風を台風へ向けて放つと、気流の向きが反対の2つの台風がぶつかり合い、衝撃波と暴風を生む。

 

 天災同士のせめぎ合い。それはまさに神話の再現のようで、視聴者の視線を独占した。


『すげえ……』

『やっば……』

『……不謹慎なのはわかってるけど、なんか芸術的』

『初見です。ヴァリアンってこんなに強かったんですね。なんか安心して見てられます』

『いや、恐ろしい……』

『こんなんうちの街に来たらおしまいだわ』

『それな。うちもSランク1人もおらんし』

『スクショした。システムのホーム画面にする』

『これ絵に描いたら売れそうだね』


 チラッとコメント欄を見る。……マイペースな視聴者が多いが、いつものことである。あまり緊張感がないのは、それだけ俺を信頼してくれていると言うことなのだろう。きっとそうだ。


 そんなマイペースな視聴者達を他所に、台風のぶつかり合いは終息する。ヴァリアンも風鬼雷鬼も、お互いに力の均衡を感じた為だ。


 これでは埒があかないので、接近戦でケリをつけようという意思が合致した。


 混濁の台風と雷雲の台風が一つとなり、解けるように消え去る。すると、雲の上に立つ2体の鬼が現れた。


 その姿を形容するならば、羽衣を失った風神雷神。いわばこいつらは、風神と雷神の成り損ないである。


(やっぱり風鬼雷鬼か。サラマンダーが先で良かったぁ)


 Sランクとの初戦がこの2体であれば、相当厳しい戦いになったことが予想できる。しかし、今のの俺にはサラマンダーの力があるのだ。負けるつもりなどさらさらない。


【炎蜥蜴の腕】【風龍の両腕】【天災の悪魔の胴】【大風妖の瞳】【翡翠蝶の羽】


(先手必勝!)


 風鬼雷鬼の姿が見えた瞬間。再び禁断の魔剤を使用し、全力で飛翔した。追い風も巻き起こして高速接近すると、そのままサラマンダーの腕で雷鬼の腹を殴りつける。


 強大な推進力と、まるでマグマのような灼熱の乗った拳。それは抵抗する間も与えず、雷鬼の腹を貫通した。



あとがき


ここまでお読みくださりありがとうございます!


無事、試験に合格しました!温かいコメントをくださった皆様、本当にありがとうございます。


今後は投稿頻度を増やしていけると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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