第94話 到着と茶番
あれから数分走り続けると、ようやくダンジョン都市に到着。
血の匂いは無し、戦闘時に感じる独特の雰囲気もなければ、戦闘音なども聞こえてこない。どうやら、まだ戦闘は始まっていないようで安心した。
「ほら、街についたからもう大丈夫だ。通らせてくれ」
今俺は狼達に包囲されている。流石にこのまま街に入るわけにはいかないので、包囲陣形を解いてもらえるように声をかけた。
ちなみに包囲されている理由だが。
「お前が無茶しないように、俺たちが見張ってやるんだ!」
「変身して俺たちを置いてくかもしれないしな! いつでも捕まえられるようにしておくんだ!」
「敗亡者は黙って守られておけばいいのよ!」
とのことだ。狼達に敗北したのは事実なので、素直に包囲されながら移動していた。
素直に包囲を解いてくれた狼達の間をくぐり抜けると、大量の魔族が集まっているのが見えた。皆武器や防具を装備しているし、戦いに備える冒険者達だろう。
大量の魔物を引き連れてやってきたわけだが、混乱などは起こっていないようで安心した。
「ヴァリアン! 来てくれたんだな!」
南口を通過すると、大量の冒険者に囲まれた。1年も冒険者をしていたら顔見知りも増えるし、狼の貸し出しサービスを通じて知り合いも増えた。
それからSランクということもあり、1部の冒険者には俺を慕ってくれるやつもいて、結構仲良くさせてもらっている。
「そりゃ、この街は大切な場所だからね。何かあったらすぐに駆けつけるよ。」
「とか言って、時間ギリギリだけどな。高ランクの連中はもう作戦会議を終えたようだぞ」
仮面の中でキリッと表情を作り、カッコつけて発言したつもりだったのだが……やはり遅刻か。
落ち着いた中年のベテラン冒険者からの指摘は、なかなか効くものがあるな。
「いやぁ、危ないから置いて行こうとしたんだが、こいつらが付いてくるって聞かなくてさ。それで遅くなった」
「ははは! 狼ちゃん達のことになると過保護なお前が、今回は珍しく折れたんだな?」
ぽんぽんと金狼の頭を撫でながら話していると、その金狼が意思を伝えてくる。
「僕たちが勝ったんだ! ちゃんと伝えてよ!」
……わかってるって。正直に話すよ。
「いやぁ、それがな……こいつらにボコられちまってさ」
「ははは! おい! 聞いたかよ! ヴァリアンのやつ、従魔にボコられちまったらしいぞ!」
「あひゃひゃひゃひゃ!」
「草wwwwwwwwww」
「馬鹿にしやがって! お前らも絶対勝てねえからな!?」
狼達を連れてきた理由を正直に話すと、その場がどっと笑いに包まれた。くそ! これだから話したくなかったんだ!
普通は従魔のほうが上下関係において下のことが多いため、従魔にボコられる主とはなかなか聞かない話である。
しかし、それにしても笑いすぎだろ。クソ野郎どもめ!
「お前を小馬鹿にして楽しむのもいいが……ヴァリアン。ギルドに向かわなくていいのか?」
「あ……ま、まあスタンピートって聞いてみんな緊張してるかなと思ってさ! 別に忘れてたわけじゃないけど、そろそろいくわ!」
ただでさえ遅刻したというのに、すっかり忘れて話し込んでしまっていた。まあ、緊張をほぐすという意味ではいいコミュニケーションだったよな。
【一角風獣】
狼達はその場の冒険者達に預け、全力でギルドに向かった。
あとがき
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!
なんとか本日も投稿できました!
テストは終わりましたが、それでもまだまだ忙しい日々を送っております。
今後も投稿できない日もあると思いますが、どうにか時間を見つけて頑張って参りますので、星やフォロー、ハートで応援のほどよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます