第15話 説明と戦闘

「みなさんこんにちは! アンケートの結果、今日は闘技場に行くことになりました!」


『こん』

『こん』

『こんにちはー』

『よっしゃ!アンケート、闘技場に票入れてたんだよな!』

『楽しみにしてた!』

『うう〜水中戦見たかったなぁ。でも、闘技場もありかも』


 「はい、こんにちは! みなさんコメントありがとうございます。それではさっそく、ロビーへ移動していきます!」


『確か闘技場って、顔隠せなかったよな?』

『あ!たしかに!』

『うわ、何系魔族なのかめちゃくちゃ気になる』

『僕と同じ鬼系魔族だったら嬉しいなぁ〜』


 闘技場システムを起動し、ロビーへと移動する。少しの浮遊感を感じると同時、視界が真っ白に染まった。初めての体験に少し不安を抱くが、数秒後には視界が戻り、闘技場のロビーと思われる場所に転移していた。


「無事、ロビーへと着きましたね。転移は初体験でしたので、少し酔ってしまいそうでしたがもう大丈夫です。そうだ、どうです?このオーガの被り物。事情があって顔出しはできないので、昨日ショップで買っておいたんですよ!」


『なんだぁ』

『顔見てみたかった〜』

『でも被り物着けれるってことは、角とかは生えてないってことよね。それか消せるか』

『でも、オーガの被り物もイケてるよね』

『ね!今日の服装に合ってる』


 よし、オーガの被り物はやはり好評だな。ゴブリンがオーガかオークか。その辺で迷ったんだよなぁ。

 

 被り物をしているせいで視界が狭いし少し窮屈だが、身バレ防止のためだし仕方がない。新品臭いし髪も潰れるけど……ひんやりしていて気持ちいいから良しとしよう。


 

 ロビーに来てまでぼーっとしていても意味がないな。他の人の試合も見てみたいところだが、今は俺の配信中だ。早速エントリーして、試合に出てみようか。


 闘技場にはランクが存在し、今の俺はもちろん最低のDランク0ポイント。

 なぜランクが存在するのかと言うと、ランダムに対戦相手を決める際に、ランクの近しい人と当たるようにするためだと言われている。


 ちなみに、Dランクで一勝すればプラス5ポイント、一敗するごとにマイナス1ポイントの形式で、1000ポイント貯まるとCランクに上がることができるらしい。



 エントリーしてしばらく待つと、対戦相手が決まったようだ。相手はDランク10ポイントか。俺と同じく初心者のようなので、おそらく勝てるのではないかと思う。


 試合開始が予告され、観客が賭け金を決める時間が設けられた後、ロビーからアリーナへと転移させられた。


 ここで初めて相手の姿を見るわけだが、格好を見るに相手は軽戦士。軽装で両手に短剣を持っている。スピードと手数で勝負しにくるタイプだと予想できるな。


 それに対して俺は装備は何もつけておらず、持っている武器も短剣一本。相手からするとほぼ何も予想できない状態だろうな。いや、特殊なスキル持ちと思われたかな?



 分析をしていると、試合が始まった。相手はやはりスピードタイプのようで、開始と同時に走り出し距離を詰め、短剣を振りかざしてくる。


 こちらも短剣で攻撃をいなす。このまま短剣だけでも勝ててしまいそうだが、能力を使わないと盛り上がりに欠けるよな。


 デビュー戦だし、しっかり能力を使って勝とうか。だからといって、魔法系の能力で近接が得意な相手を潰すのもどうかと思うし……よし。


【四腕巨人の腕】


 近接戦闘で決着をつけよう。腕が4本あるクアトロトロールに変化すると、既存の俺の腕が緑色に染まり、さらに肩から2本緑色の腕が生えた。

 

 単純に4本の腕を使えるので手数が増えるだけでなく、トロールの強い腕力も得られるのでかなり強力だ。流石はDランクモンスターだと言える。


『クアトロトロール!』

『まじかよ、Eランクでもあんだけ強かったのに。Dランクモンスターまで使えるようになったのか。』

『ばかかっこよくて草』



「腕が生えた! お前ら、やっと相手の能力がわかったぞ。身体改造系のようだな。」


 対戦相手がぶつぶつと呟いているのが聞こえる。どうやら相手も配信をしているようで、こちらの能力について話しているみたいだ。


 腕が生えたことに対して警戒しているようだ。しかし、能力がわからないという不安が解消されたからか、少しこちらへの警戒心が薄れたような気がする。

 

 その証拠に、先ほどと同じように愚直に突っ込んで攻撃を仕掛けてくる。能力は使わないのだろうか。

 

 先程と同じように両手で攻撃をいなし、残った2本の腕で相手を殴り飛ばす。


 攻撃を喰らって体勢が崩れる相手だが、得意のスピードと身軽さで距離を取ろうとしたのか、バックステップをした。


【袋鼠の脚】


 チャンスだ。クアトロトロール変化を解き、下半身をカンガルーにして一瞬で距離を詰める。


 あまりのスピードに驚いたのか、はたまた脚が動物になったことに驚いたのか。目を見開いて硬直した相手の首に短剣を突き刺すと、相手の身体が光の粒子になって消えていく。今の攻撃で、死亡判定になったようだ。



『やるやん』

『すごい』

『まあヴァリアンがDランクで負けるとは思えん』

『もっと戦ってほしい!』

『新しいモンスターもっとみせてー』


「はい、無事勝つことができました! あ、コメントありがとうございます。今日は負けるかお腹が空くまでやってみたいと思います! どんどんいきましょう!」


 


 


 


 


 

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