第13話 水エリアとDランク

 禁断の魔剤について実験した次の日。いつも通り配信しながら、新たなる階層の31階層へと向かっていた。


「30階層までは森林エリアでしたが、31階層からは水属性エリアのようですね」


 31階層へとつながる階段を降りると、所々に水溜りや池があり、川や滝なども存在するエリアが広がっていた。


 自然の景色が美しくつい見惚れてしまいそうになるが、こういった水エリアの恐ろしさを俺は知っている。

 まず、どんな魔物がどこにいるのかわからないところ。見渡せばわかるが、障害物がほとんどないにも関わらず目視できる魔物が居ないんだ。


 ほとんどの魔物が水中にいるんだろうな。人間界での経験から考え、水に触れないよう慎重に進んでいく。


 人間界の水エリアだと、水に触れなければ魔物が出てくることは滅多になかった。しかし、魔界の魔物はやはり一味違うようだ。

 川の横を通るとその足音を聞きつけたのか、いきなりタコの魔物が飛び出してきた。


【粘液の腕】


 タコはいきなり墨を吹きかけてくると相場は決まっている。あらかじめ片腕をスライムに変えておくと、案の定タコは墨を吐き出した。


 スライムは防御力、攻撃力共に最弱クラスだが、体積の大きさと形の自由度だけは優れている。傘のように形を変化させ、しっかりと墨を全て防ぎ切った。


【酸粘液の腕】


 スライムの腕を酸スライムに変化させ、空中で無防備になっているタコを拘束した。スライムの体内へとタコを入れてやれば、酸性の粘液によってドロドロと溶けていく。


 戦闘終了かと思いきや、落ち着く間も無く次々と魔物が水中から飛び出してきた。タコ、イカ、サメ、カエルなどが多いな。全員水属性の魔物だ。


 酸スライムの腕を枝分かれさせ、どんどん魔物を捕まえて処理していくが、全然減らないな。捕まえられなかった魔物は、また別の水中へと逃げて再び突撃してくるし、水中から遠距離攻撃を仕掛けてくる魔物もいる。


 1体1体は強くないが、数と水中というポジションも相まって厄介だ。1度に大量の敵を屠れて、水中にまで有効な技……アレで行くか。



【飛兎の足】【妖精の羽】


 

今から使うのは強力な技だが、それ故に自傷してしまうというデメリットもある。なので空中に浮遊し、自分は喰らわないようにしておく。



【帯電鯰】【雷馬の角】


 一瞬全身を帯電ナマズに変え、大量の雷電を生み出す。サンダーホースの角にそれを集約させて地に放つ。


 角から放たれた雷電が放射線状に広がり、川などの水中まで侵食していく。


 宙に浮かんでいた魔物たちは丸焦げになり地面に墜落し、水中にいた魔物達もかなりの数を処理できたみたいだ。結構遠くの水面にまで、魔物の死体が浮かんでいる。


『名声値が106になりました。Dランク特典が与えられます。』


 お、近いうちにDランクまで上がるとは思っていたが、もう上がったか。魔界パワーすごいな。少し疲れが溜まっていたし、これを理由に今日はもう切り上げよう。


 ドロップアイテムを拾いながらコメントを読み、返信して行く。


『やばふぎ、まだこんな技隠し持ってたんだ』

『相手の弱点ピンポイントに突けるとか最強じゃね?』

『えぐすぎ、めっちゃ遠くまで倒してるじゃん』

『帯電ナマズとサンダーホースて、弱いイメージなだったけど組み合わせるとこんな強かったんだ』


「魔物が多すぎて少し焦りましたが、水属性のモンスターはやはり単独だと弱いですね。範囲攻撃を使っていけば、楽に攻略できそうです! 」



『水エリア楽にとかえぐwww』

『顔が見えないからわからんが、魚人系魔族なのかな?』

『水中での呼吸問題についても、まさかスキルで解決できるのか……?』



「水中での呼吸ですか?みんなご心配ありがとう! 魚人系ではありませんが、スキルでエラを生やせるので全然問題ありません! 先程名声値がDランクに上がったので、少し短いですが今日はこの辺で終わろうかなと考えています。次回は水中戦をお楽しみに!」


『おー!』

『おー!』

『おつぅー』

『アレナ:もうDランクですか! 流石です!』

『Dランクになったなら、闘技場やって欲しい!』

『わかる!でも水中戦もみたいよぉー』


 お、アレナさんだ。なんだかんだ毎回来てくれるなこの人。しかし、闘技場か……うん、ありだな。

 

「闘技場! それもありですね。視聴者アンケート機能を使って、アンケートを実施しておきましょうか。水属性エリア攻略の続きか、闘技場か。次回の配信でやって欲しい方に投票しておいてください! それでは今日は終わります!」

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