第11話 衝撃とドロップアイテム

 『30階層エリアボス【ゴブリンキング】の死亡を確認しました。30階層までの転移ポータルが解放されます。』


 『30階層エリアボス【ゴブリンキング】の死亡を確認しました。貢献度、攻略ランクに応じて、宝箱を配布します。』


 これは……ダンジョンのボスを討伐した時に流れるメッセージだ。

 転移してからの数日間、全く人間や野生動物に遭遇しないので少しおかしいとは思っていたが、まさか転移先がダンジョンだったとは。


 ダンジョンという危険地帯に飛ばされたことに関しては運が悪いとしか言えないが、今回に限っては都合がいいかもしれない。

 

 この凶悪な魔界に住む魔族のことだから、良くて即死。悪ければ拷問や人体実験など、死んだ方がマシだと思うような目に遭わされるだろうと考えている。


 そのため、なるべく魔族との交流は避けようと思っていたところだったんだ。

 魔族に遭遇しないよう、しばらくダンジョンに滞在していようかな。


 ただ、配信のコメント欄でのやり取りなどで魔族への偏見は若干薄れてきてしまっている。みんな普通にいいやつだからな。


 しかし、それは俺のことを魔族だと視聴者たちが考えているからであって、人間だとバレたらどうなるかわかったものではないからな。やはり、警戒しておくに越したことはないだろう。


『いきなり固まってどうしたんだ?』

『フリーズしてて草www変なもんでも見たか』

『体調不良とか?』


「ああ、いえ。ボス討伐後のアナウンスが思ったよりも大きくて驚いてしまいました。設定ミスですね。あとで音量を下げておきます。」


『アレナ:おー! ボス討伐、おめでとうございます! というか、ゴブリンキングがボスだったんですねー!』

『おちゃめ』

『設定ミスな。あるある』

『可愛くて草』


 ダンジョンにいることを自覚していなかったことがバレたら、怪しまれるかもしれないからな。ひとまず誤魔化し、焦りを悟らせないよう、あくまでも自然にドロップ品の確認を行う。


「そうなんです、ゴブリンキングがボスだったみたいですね。僕も事前情報を集めずにこのダンジョンへ来ているので、驚きました。」


 よし、コメントの反応的に怪しまれては居ないようだな。


「さて、それではお待ちかねのドロップ品の確認を行っていきたいと思います! ボスのドロップ品ですからね、期待できますよ〜」


 今回のドロップ品は3つだ。1つ目はゴブリンキングの死体で、これはさまざまな装備や薬を作る材料として活用できる。

 ただ、自分では活用できる気がしないので、これは売却だな。体にあまり傷をつけずに倒したため、高く売れる気がしている。



 思わぬ収入ゲットにガッツポーズを決めてしまいそうだが、配信中なのでグッと抑え、次のドロップ品の確認だ。


「次は、ゴブリンキングの大剣です! 単純に大きくて硬いだけでなく、オーラが通しやすい剣みたいですね。黒光りしているところをみるに、魔鉱石で作られているのかなと思います。 ちなみに、僕はスキルでオーラを扱えますが、まだまだ練習不足なので、この剣を使用することはしばらく無いかなぁ……」


 オーラとは、戦士系スキルを持った生物が一定の熟練度を超えると扱えるようになる力のこと。   

 では、なぜ戦士系でもなんでもないスキルの俺がオーラを扱えるのかというと、オーラを扱える魔物に変身できるからだ。


 オーラを扱える魔物に変身することにより、一時的にだけオーラが扱えるのだ。常に使用できるわけではないので、もちろん熟練度は低く扱い慣れていない。そのため、わざわざこの剣を使うメリットもない。武器を使うとしても、これを売って別のものを買うことにしよう。

 


「最後はお待ちかねの宝箱です!」


 ボス討伐報酬の宝箱だが、これは正直ハズレが出てもいい。もともとゴブリンキングをボスだと分かって倒したわけではない。得られると思っていなかったものだから、何が出てもプラスだと考えている。


 もちろん、高値で売れるものや使えるものなら尚更嬉しいけどね。



『宝箱(B級)を開封しますか? はい/いいえ』


 システムを開き宝箱を開封しようとすると、このようなメッセージが届いた。もちろん『はい』だ。


『禁断の魔剤を入手しました』


禁断の魔剤

・魔物にのみ使用することができる。

・使用された魔物は、一定時間能力が上昇する。

・使用された魔物は、一定時間知能が低下する。

・一度使用された魔物には、240時間使用することはできない。

 

 

 宝箱から出てきたアイテムは、禁断の魔剤という魔物に対して使うアイテムだった。魔物の能力を上昇させてしまうようだが、使い道はあるのだろうか。視聴者に問いかけてみよう。


『使い道?あるぜ!知能の高い技巧型の魔物の知能を低下させるのに使うんだ。』


『技巧型は多少能力が上がったところで、その技術が失われれば大したことないからなぁ。倒すのが楽になるんだ。』


『そうそう、Aランク冒険者のライインもそれでヴァンパイアロードを倒してたよな。』


『まぁーでも当たりではないよなぁードンマイだ! ドンマイ! 』


 なるほど。能力が低くて知能が高く、厄介な相手に使うようなものなんだな。使い所が限られすぎていてハズレアイテムのようだが、『魔物』か。


 もしかするとこの魔剤の効力は、俺が能力で変化した魔物の部分にも有効なのではないだろうか……。


 



 


 

 


 

 


 


 


 

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