第7話 ギルドへ
俺は門番のお兄さん?いやおっさんに説明を求められたので何があったのかをざっくりと話した。 ヘルムを被っているからよく分からないが、30代半ば位だろうか?
「そうか。 あいつら昨日帰って来られずに野営をしたんだな。 あれほど外は危険だって言ったのに馬鹿野郎!」
「あのう、彼らの荷物はどうすれば良いでしょうか?この剣もです」
「俺の知る限りあいつらには身内はいない筈だぞ。おそらく大丈夫だが、お前さんがもらって、使ってやるのが彼奴等へのせめてもの手向けだと思うが、悪いがギルドマスターに報告しに行ってもらえねえか?一応掃除人で死んだ奴が出たらギルドマスターに報告する事になってんだ。この札を持って行け。これを見せれば面談中でなければギルドマスターにすぐ面談ができる筈だ 」
そうして木の札を渡された。
「死体を見つけた者が報告するのが鉄則なんだ。見たところかなり疲れているようで悪いとは思うが、頼めないか?」
「 あっ、はい、分かりました。その、少しだけ休ませてください。そしたら俺も今日中にギルドには行きたかったので、予定を早めて先に報告しに行きます」
「そうだな。ちょっと待っていろ。水位出してやるよ」
そして俺は少し休憩する事にした。
俺はとりあえず椅子に座り、足腰を休めて水を飲んで体を落ち着けた。
プハー!
一気に水を飲み干したが、高々水だが「生き返った!」と呟きつつ一気に飲んだものだから噎せてしまい、 門番に笑われた。5分位休んでからギルドの場所を聞いてそちらに向かった。
俺はあれ?っと思う。普段コミュ障気味で、見知った者以外にはぶっきらぼうにしか話せないが、普通に話せられていた。
葬儀場以外で初めて死体を見て吐きこそはしたが、その後はもうなんともなかった。剣を持っていた方は顔も潰されており、血塗れでかなりエグかったが、最初の死体を見付けた時とは違いもう吐くような事もなかったな。
埋葬する為とはいえ、死体を引きずってくる事に何の感情も湧かなかった。
魔物とはいえ生きている奴を殺す事に忌避感も無い。これはゲームの影響なのかなと思うも、俺は本来は血を見ると気絶していた筈だが、吐いた後はなんとも思わなかったが、吐いた直後に一瞬頭が痛くなったような気がする。以前交通事故が目の前で発生し、被害者が血塗れなのを見た時に救助どころか気絶した事がある。今回一度吐いた程度だったのは必死だったからかな?
現実とゲームは違うが、それでも街並みは中世のヨーロッパといった、いかにもといった感じの街の風景で、ゲームでもおなじみの風景である。勿論当然だがゲームとは質感が違う。街並みも構成は違うが、典型的な小さな規模の町だという事が分かる。所謂始まりの町というような感じの辺境の町、そういう雰囲気が醸し出されている。そして言われた通りの道を進むとギルドが見えてきた。
本来は冒険者ギルドと言いたいところだが、正式には便利屋ギルド、何故そう呼ばれているのかは分からない。 俺の持っている翻訳能力がそうなっているのか?ゲームではただ単に、ギルドだった。確かに公式HPにある世界観などにはそう出ていた気がするが、実際はギルドと言われていた。
そう、それまでは話が通じる事になんの疑いも持たなかった。見た目がどうあがいても日本人ではない者、それらの者がいるにも関わらず言葉が通じているので、異世界転移のあるあるの翻訳機能が備わっているのだろうと感じた。
ただし問題が一つある。文字が自分には認識できないのが使われている事だ。文字らしき何かの模様や線はあるのだが、ミミズが走ったような何かの記号にしか見えないのだ。小説やアニメの中では文字が読めるように変換されてくれるようなものもあるが、違うようだ。
それでも話す言語が翻訳されているのはありがたい。そしてギルドに着いたが、やはりゲームの中で見たそれである。最も規模だとかが違うので似たような構造としか言えない。
建物の中を見るとロビーがあり、そこに打ち合わせスペースのようなテーブルが並んでいる。勿論カウンターがあり、そこに受付の人がいる。
一階のロビーの周りの壁にはおそらく依頼が書かれていると思われる木の札である依頼票?が掲示されていて、依頼が書かれた木の札が所狭しと掛けられている、いわゆる依頼掲示板というのだろう。この辺もゲームとは違う。
紙はまだかなりの貴重品かまだないかのどちらかだろう。ゲームだと掲示板をタップして現れる画面を操作してクエストを探していた。
ゲームを模した世界にいるのではなく、この世界を模した世界感のゲームだったのだと勝手に理解していた。
朝一番ではもうないので、ごった返してはいないようだが、掲示板の周りには依頼内容を眺めている者達がちらほらといる。そして、まずは受付のところに行こうかと思うが、俺はため息をつくしかなかった。
アニメや小説とかでは受付の所には綺麗な若い受付嬢がおり、男の冒険者はその受付嬢を口説くのに頑張る!受付嬢とアバンチュールな関係になる!そういう設定があるのだろうが、残念ながらそうではなかった。
おっさんばかりなのだ。中には女の人もいるが、みんな年配だったり、体に何かしらの不具合を抱えている者達ばかりだった。片腕がない者、片目がない者、おそらく足のない者も多いのだろう。冒険者崩れといった者が受付に座っているからだ。
仕方がないので、空いている受付へ行く。
「どうした若いの?見ない顔だな」
ゲームでは綺麗なNPCが出迎えてくれたのにと、そんなの約束と違う!騙された!と項垂れながら相対した。
左腕がない者だった。
「冒険者になりたくて」
「どのだ?」
「魔物を駆除する奴です」
「その歳で掃除人になるのか?まあいい。この紙に書け」
「すんません。俺読み書きが出来ないんで」
「俺の方で書くから、名前は…」
名前と年齢、魔法の有無、有るなら使える属性を聞かれ、火、水、土、光と伝えるとジト目をされた。
ほら!と両手に火の玉と水球を出し、放たずに消すと受付のおっちゃんは驚いていた。
「その様子だと土と光も嘘じゃないようだな。クワッドか。久し振りに見たな。それなら登録しない訳にはいかないな。まあ今ので属性検査は不要っと。登録料は金貨1枚だが大丈夫か?」
俺は頷き、そうやってギルドへの登録がスタートしたのであった。
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