第4話 現実
10分位歩いていると異変を感じた。道端に血痕やら魔物の魔石が転がっているのだ。そうあの宝石のようなのは最早疑う余地がなく、魔石という奴だと俺は確信した。手に取ると不思議な感覚に見舞われるのだ。
ゲームでも魔物を倒すと魔物は霧散して魔石を残す。稀にアイテムや武器をドロップしたりする。それらを拾い換金するのだ。ただ、魔石を拾うと雑魚の魔石はゴールドに自動変換するように設定をしていたので、高ランクの魔物の魔石以外はお金に勝手に変わっていた。リアルではそうはいかないだろうが。
一番最初にここが異世界だと理解というか確信したのは、インプに襲われていたが、咄嗟に持っていた剣を目の前に突き出したところ、偶然そいつに刺さったので倒れたが、その時にそいつの体が霧散し、魔石と思われる石を残したからだ。
その後ステータスがあったりゲームのシステムの表示が頭の中に現われるという事が分かり、この宝石のような石が魔石なのだろうなと理解していた。そんな魔石が落ちており、血痕が見える。誰かが戦っているのだろうか?と少し震えた。そして少し離れたというより、藪の向こうより何かの争っている音が聞こえて来た。
俺はどうするか?と少し逡巡した。見も知らぬ者を助ける程の力がある訳でもお人好しでもない。だが今この場を離れた場合の事を考えると、そいつらの次のターゲットが自分になるのではないか?背後から襲われるのは御免被りたいと考えた。
自分に万が一ヘイトが向いた時が恐ろしいので、こちらから叩こうと思った。奇襲されるのは嫌だが、するのは好きだ。
自分の周りに何かの気配が無い事を確認し、メニュー画面を開いた。残りのスキルポイント1で火魔法を取得する事にした。
水と火どちらが敵に有効か分からないが、水魔法に対して抵抗がある場合、火に抵抗がない場合が殆だ。その逆も然りだ。それはゲームでの場合である。
万が一に備えてポイントをひとつ取っておこうと思っていたが、戦っている最中にそのポイントを使って何かを習得する暇はないだろう。そう判断し、今整えられる最大戦力として火魔法を選んだ。元々早々に属性魔法は全て習得するつもりではあった。
今取得する最大の理由は、同じ属性の魔法を連続で投射するのは約3秒のインターバルを空けなければならないからだ。その為、他属性の魔法を覚える事にした。他の属性の魔法で攻撃する分にはインターバルがなく、間髪入れずに放つ事ができる。なので、最大3匹を相手にして魔法とスラッシュでの非近接攻撃が可能だ。万が一への対処の為にポイントを温存していたが、そのポイントをここで振ったのだ。
気配は直ぐ近くだ。俺は剣を握りしめ、藪の中を掻き分けて行く。すると何かに躓いて転けた。足元を見ると冒険者と思われる者の死体があった。目を大きく見開き、苦悶の表情を浮かべており、大量の血を流していて、どう見ても息絶えているのだ。俺はヒィ!と唸りながら、思わずその場で嘔吐してしまった。
しかし、落ち着け!落ち着け!念仏のように唸り、水筒を出してうがいをし、水を一口飲み落ち着け落ち着けと深呼吸をして落ち着かせて行くが、数秒で落ち着いた。死体に手を触れるとまだ温かかった。
手を合わせてからその先へ進もうとすると、ぐぎゃー!と断末魔の声が聞こえた。
俺は叫び声がした方に行くと、1人の男が倒れており、おそらくゴブリンと思われる3匹が棍棒で何度も何度も頭や体を叩いていた。俺はなっ!?っと唸りアイスアロー、ファイヤー、そしてスラッシュを各々に向けて放った。正直どれが正解か分からないが、手を前に翳してファイヤーとアイスアローを放った後、剣を振りスラッシュを放つ。そしてアイスアローが1匹の腹を穿ち、氷の矢が貫通した事が分かる。そして数秒するとそいつはポンという音と共に霧散した。一発で仕留めたのだ!もう1匹は頭を抱えてのたうち回っている。そう頭が燃えているのだ。3匹目のスラッシュの当たった奴は胸を押さえている。
幸いな事に2匹ともポンっ!ポンっ!と弾け、魔石を残して消えていった。
よっしゃー!倒したど…!と思うと、横からカサカサという音がしたので振り向くと、棍棒を振りかざしたゴブリンがキシャーと奇声を発しながら襲ってきた。甘かった。3匹しかいないと思い込んでいたが、もう1匹いたのだ。うおぉおお!と俺は咄嗟に頭に向けて振られた棍棒を剣で受け止めたが、無情にも剣はバキッ!と鈍い音と共に折れてしまった。
「嘘だろ?初期装備の銅の剣って脆過ぎるだろ!」
俺は唸りつつアイスアローを放とうとしたが放てなかった。まじかよ!?と唸るが、俺は咄嗟に足元に倒れている冒険者のところに転がりながら向かい、ごめんと言いながらその手に握られている剣を取り、ゴブリンに振った。棍棒で受け止められてしまったが、体格の差からかその後は俺が一方的に攻撃し、奴は防戦一方だ。そして俺はそいつに蹴りを入れた。すかさずスラッシュと念じて剣を振って見ると発動し、そいつの胸に傷を負わせる事に成功した。
そして俺は間髪入れずに懐に飛び込み、その胸に剣を深々と突き立てた。やはりポンという音と共にそいつは霧散し、魔石を残して消えていった。
はーはーはーと俺は肩で息をし、死ぬかと本気で思っていたので脂汗をかいていた。
俺は倒れている人の所に駆け付け、脈を確認するも既に事切れていた。一応周りの気配を探るが、特に動いている者の気配はなかった。
一応軽く周辺を回わり、魔石を拾いながらもう1人の所に行く。
先程魔石を踏んでしまい、魔石が砕けたのだが、その時にかなり大きな音がし、魔石が周りに粒子を撒き散らせながら消えていったのだ。その音で己の位置を周りに知らせているそういうような状況になったので、同じようにならないように、慌わてて魔石を拾っていく。
取り敢えず死体を引きずって来て、後から死んだ方の男の所にまで来た。そこは少し開けた場所だからだ。ふと思うと、胸から何かカードのような物が出ていた。
ゲームにはなかったが、小説等でよくあるライフカードとかギルドカード等、そういった類の物であろう。これを町で見せて、この人が死んでいたと伝えれば報告が終わるのではないか?と考えた。
また、俺は気になったのでザクッと己のステータスを見た。何故魔法が放てなかったのかが気になったのだ。するとMPがゼロになっていた。
思い当たる節がある。水魔法と光魔法を取得した時に試し撃ちをした為だ。今の俺には自然回復以外にMPを回復する術を持っていなかった。
つまり魔力切れを起こしたのだ。幸いなのは魔力切れを起こしたからといって気絶する事がなかったという事だ。ゲームの仕様もそうだ。
それとこういった場合、この死んだ人達の荷物はどうすればいいのか?という事が分からなかった。
ごめんと言いつつ、この2人が持っていたカバンの中を漁る。するとMP回復のマナポーションという物が見付かったので、いただきますと言って一気に煽った。小瓶に緑色の液体が入っており、コルクのような栓を外して飲んだ。かなり苦かったので、飲んだ後に水を一口飲む。
するとMPがある程度回復している事が分かる。また先程4匹目を倒した時に【レベルアップしました】と頭の中に現れるモニターにテロップが流れたので、レベルアップをした事が分かった。
そしてステータスを見るとレベルが3になっていた。おそらく1匹目、もしくは2匹目を倒した時に1つレベルが上がっていたのであろう。戦闘中で気が付かなかったようだ。まあ、一瞬の事だったからな。
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