第2話 キャラメイキング

 俺は痛みから意識を取り戻した。

 するとよく分からないが、何やらどこかの草原にいて、小人?子鬼?に棍棒で攻撃されていた。左腕が痛い。

 咄嗟に転がって避けたが、どうやら蹴られ、生きていると分かると棍棒を頭に振ってきた。

 俺の手にはショボイ銅の剣が握られている。そいつは赤茶色をしており、背丈は幼稚園児?位だが気持ち悪い。


 えっ?と思いつつ、咄嗟にそいつに向かって握られている剣を突き出した。

 すると一歩踏み出した所にグサリと突き刺さり、口からゴボゴボっ!と血を吐き出したかと思うとポン!っと小さい音と共に霧散し、小さな宝石?ビー玉位のがそこに残されていた。どうやらこれは真剣のようだ。


 俺は痛みから腕を擦っていた。折れてはいないし血も出ていない。軽い打ち身程度だ。


 回りを見ると、のどかな草原で何もない。


「なんじゃこれは?」


 唸りつつ己の格好を見る。


 ゴワゴワした綿の上下のいかにもファンタジー物の一般人の服に胸当てを着けており、剣を持っている。

 背中には背嚢を背負っていた。

 取り敢えず周りに他の生き物の気配はない。


 先程までゲームの入賞者の表彰式に参加しており、そういえばネタだと思った世界転移云々があって、実行を押したら意識が遠のいた。そして気が付いたら先程の変な生き物に攻撃されていた。


 飛び跳ねたり、体を少し動かして状態を確かめた。腕が少し痛いが問題なさそうだ。


 どう見ても尋常ではない。

 襲ってきた奴を倒した時に霧散したのも本物だった。


 石を拾い、これは何だ?と思うと頭の中に画面が現れ、解説が出た。


「インプの魔石」


 ふと思う。これって、アリムレリアオンラインのヘルプ画面にそっくりだと。

 まさか!と思いつつステータスと呟いた。


 すると見覚えのあるステータス画面が目の前に現れた。ただ、少し違う所があるが、基本的に同じだ。目を瞑っても見えるので、リアルに投写されているのではなく、頭の中に出ているのだと分かる。


 _______________

 名前 未決定

 年齢 17

 職業 一般人(モブ)

 種族 ヒューマン

 性別 男

 レベル 1

 HP   8/10

 MP   7/7

 筋力  10

 器用さ 10

 精神力 10

 幸運 0

 ステータスポイント 

 残り 0


 スキルポイント   

 残り 0


 スキル

 なし


 魔法

 無し


 特記 

 キャラメイキング未実施

 メイキング残り回数3


 あっ!これはゲーム開始時のデフォルトだ。

 そう俺は理解した。

 半年以上前に一度キャラメイキングを行っただけだが、サービス開始直後にキャラメイキングした事を後悔した。


 攻略サイトを見て後から愕然としたのだ。

 初期の割り振りが大事だ。

 目先のステータスに目を奪われがちだが、そうではない。最初のスキルは幸運全振りが鉄則だ。初期が辛いが、中盤から顕著に差が出る。

 お金が有れば作り直しか、スマホをもう1台契約してサブ垢でやりたかったが、高校生にはそんなお金がない。


 俺は恐る恐る周りを見た。先ずはこのキャラメイキングをしないと駄目だと感じられたが、それをしていると無防備になる。


 今理解しているのは、理由はともかくとしてこれが現実だという事。

 あのゲームは謎だらけだった。

 正確にはあの大会だ。

 賞金があり得ない位の高額で、しかも一位のみ。


 神か何かしらないが、この世界に送り込む者を選定していたようだ。

 やらかした。

 多分本来この世界に来るのは俺ではない筈だ。俺は勝利を横取りしたのだから。


 どこにもログアウトだとか、問い合わせボタンがない。

 日本に戻れるか否か分からないが、このもう一つの現実世界を生き延びなければならない。


 ゲームと同じようになっているのかどうかは分からないが、確信するまではゲームと同じと思ってやっていこうと思う。

 もしも同じなら、他の者に、つまり現地人に対して多いなるアドバンテージがある筈だ。


 また、何故か今いる所から10mも離れられない。

 先程襲われた事から、こちらが動く事が出来なくても向こうからはこちらに来る事は出来る。


 つまりとっととキャラメイキングをしなければならない。

 どうやらそれをしないとこの場所から動く事が出来ない。つまりここはキャラメイキングルームの代わりだ。確かあれもカウントダウンがあった。

 モニターにそれらの表記はないが、先程のような奴が襲ってくる可能性があるから、その危険性がカウントダウンの変わりだろう。


 よし、ゲームの知識を総動員して生き残るぞ!

 そうやって先ずはキャラメイキングをスタートした。


 やり直しは3回目が勝負だ。後悔しない為に最初の2回は見ないのが鉄則だ。あくまで統計からの確率だが、3回目はボーナスが増える率が高い。


 だが、それも情報だ。

 ステータスとは関係ない自分でチョイスするところだけはまず確定だ。年齢は実年齢とは異なるが15が鉄則だ。それ以下だとステータスにマイナス補正が入り、序盤の死亡率が高くなる。身長もゲームの世界観からは高身長だ。これ以上だとサイズアウトで服や防具が中々手に入りにくくなり、それはそれで序盤の困りごとになる。少しでもネガティブ要因は排除したい。ステータスには影響がないが、身長はリーチが長くなり、攻撃の当たり判定に影響しているらしい。そこでバランス値が175だった。性別を選択出来るので女にもなれそうだが、恐ろしくてやめた。また、種族もどうなるかが分からないのでヒューマンのままだ。これは一長一短があるが、ヒューマンを辞める気はない。


 名前 トニー・デュノッゾ

 年齢 15

 身長 175cm

 職業 一般人

 よし、基本はこれで見た目は良し悪しが分からないので写真撮影にした。何かの写真を取り込むのとか出来るようだが、本来の自分にした。

 ここまでが基本だ。顔も己の顔だと認識し、先ずは確定した。まあ、冴えない顔だが。

 HPとMPはランダムらしい。


 そして次はステータスだ。

 1回目


 レベル 1

 HP   8/14

 MP   3/3

 筋力  10

 器用さ 10

 精神力 10

 幸運 0

 ステータスポイント 

 残り 15


 スキルポイント   

 残り 11


 ほぼ底引きだ。気を取り直して2回目だ。



 レベル 1

 HP   8/21

 MP   7/12

 筋力  10

 器用さ 10

 精神力 10

 幸運 0

 ステータスポイント 

 残り 20


 スキルポイント   

 残り 14

 悩ましい。そこそこ良いが、ボーナスがイマイチだ。妥協するか3回目に掛けるか悩ましいが、あまり時間はない。

 己の運にかける。

 ままよ!と唸りながら最後のメイキングだ。



 レベル 1

 HP   8/32

 MP   7/26

 筋力  10

 器用さ 10

 精神力 10

 幸運 0

 ステータスポイント 

 残り 35

 特殊補正

 決断 +3


 スキルポイント   

 残り 25


 スキル

 逆境

 獲得経験値2倍

 

 キター!

 全体的に高いが、決断がちゃんと付いた。それも3だ。

 これは2回見送った場合に付くが、1~3のどれかだが、ラッキーな事に3が付いた。中盤以降は微々たるものだが、HPから幸運までプラス3補正が常に入る。特筆すべきは幸運値は上限が100だが、これの補正が入り103が最大値になる。スキルとアイテムで上げる以外はこれが最大だ。


 スキルポイントもステータスポイントも最大ではないが、上位5%の値だ。その為一先ず安心した。


 それと先の戦闘時にレベルが上がっていないのが幸いだ。補正が無い状態でレベルが上がるとレベルアップ時のボーナスが最低になる所だった。


 そして振り分けは後からもできるが、一度ここから動く事が出来るか試すと動く事が出来た。


 よし!キャラメイキングは終わった。周りを警戒するも特に無いので、初期振りをする。


 レベル 1

 HP   8/32

 MP   7/26

 筋力  10

 器用さ 10

 精神力 10

 幸運 35

 ステータスポイント 

 残り 0

 特殊補正

 決断 +3


 スキルポイント   

 残り 1


 スキル

 逆境

 獲得経験値2倍

 剣術レベル1(1)


魔法適正(4)

  水魔法レベル1(1)

  光魔法レベル1(2)

 身体能力向上レベル1(1)

 強運レベル5(15)

 

 スキルポイントは1を残した。

 スキルの後ろの()は注ぎ込んだスキルポイント。

 魔法は厄介で魔法適正を取らないと使えない。ポイントの関係で使い勝手の良い水魔法を取得した。レベル1が有れば飲水は最悪なんとかなる。


 逆境と獲得経験値2倍がキャラメイキング3回目に得られる確率が高い。これは序盤のポイント振りに有利だ。

 幸いなのが強運をレベル5まで行けた事だ。次にレベルが上がった時に強運をレベル6に持っていける。レベルアップ時に強運レベル/2のボーナスが入り、早々に10のマックスにしたい。


 スキルレベルを1上げるのに必要なポイントは、スキルを取得した際のポイント×レベル数がポイントになる。


 初期にも関わらず何故運に振るかというと、レベルが上がった時に増えるステータスと、自由に割り振りが出来るボーナスとなるステータスポイントとスキルポイントの獲得に幸運値が大きく影響するからだった。




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