【SEMI】

暗く冷たい土の中で過ごす間も時は進み、日は昇りまた沈む


人間は「毎日同じような日が繰り返されウンザリだ」などと愚痴をこぼす


毎日同じような日々が続くが、その日その時は人生の中でただの一度しかない


同じ毎日が繰り返されているようだけれど、違うんだよ


その証拠に人間は少しずつ成長するだろう?


一日二日では気づかぬが、一年二年と経てば見違えるほど成長しているものだ


人生百年といわれるこの時代


我々は地下でじっとしている期間が長く、地上で生きられるのが約一週間


子孫を残すためだけに生き、ほとんどの時間全力で叫んでいる


ある者は交尾には至らず叫び続けて力尽きて生涯を終え


またある者はカラスなどに食べられて生涯を終える


腹が立つのは人間の子どもとその親だ


夏休みの宿題だか何だか知らぬが、我々を網で捕まえて籠にぶち込もうとする


一週間という短い命、なぜ人間どもの都合で捕らえられ、籠の中で生涯を終えなければならないのだ


できれば放っておいて欲しい


とはいえ、まぁこれもそれぞれの運命だと言ってしまえば、それまでのこと


人間は人生百年時代


蝉は地上に出てからは約一週間


同情し、助けてくれる人間もいる


助けてくれるのはありがたいが、同情はいらぬ


逆にこちらが長い間生きねばならぬ人間に同情しているからだ


百年という長い期間生きねばならぬから惰性し怠けて、誇れる生き方ができなくなる


また、長い間生きるから”死”というものを受け入れがたく、多くの人間が死を恐れ、人の死、特に家族や恋人の死に対して立ち直れない程の絶望を感じる


我々も生物が持つ本能上は”死”に対して恐怖を感じる


しかし、一週間という短い期間しかなく、この期間を全力で生き抜くのみのため、人間よりかは死への恐怖が少ない


さらには地上での生活が短いからこそ”生命”というものも悟った


この世で”縁”した生命とは過去も未来も永遠に繋がれる


この世とは関係性は異なるかもしれぬ


この世では親子、次の世は親友といった具合に


ただ、人との縁は永遠


だから家族や恋人の”死”によって絶望することはないんだよ


次の世でまた会えるから、ゆっくりと心を癒して楽しみを見つけてさ、自分の人生を生き抜くんだよ












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