04_全てをかけて

 ぎりぎりぎりぎりぎりぎり。


 いびつな音をひびかせながら、コアを覆う壁は、黒瀬の短剣の一突きを耐え忍ぶ。


 なんて、強度なんだ。だけど、この一撃にかけるしかない。この一撃に全てをかける!!


「うおおおおおおおおおおお!!!!貫けえええええ!!!」


 黒瀬は、短剣の刃先に、影力を集中させる。


 イメージするんだ。この壁を、コアを貫くイメージを。もっと強く、もっと鋭く影力を練り上げろ。


 すると、影力をまとった短剣は、禍々まがまがしい輝きを放ち始めた。


 この光は……。見たことがある。朱音が鎌に纏わせていた光だ。


 黒瀬は、初めて紅園に出会い、ダーカーに襲われた時のことを思い出した。花が咲き乱れる中、彼女は一人、ダーカーに立ち向かい、光を纏った鎌で攻撃をしていた。


 いける。これなら、この壁を打ち砕くことができる。


「うぉおおおおおおおおおお!!!!」


 黒瀬は、さらに短剣に影力を流し込み、刃先に集中させた。


 壊れろ、壊れろ、壊れろ!!!


 ピキッ!?


 その瞬間、コアを覆う壁にヒビが入る音がした。


 ヒビだ。ヒビが入った。あと一押しだ。あと一押しで、破壊できる。


 ふと、周囲に気配を感じる。


 身の毛がよだつような強烈な殺意に、黒瀬は視線を向ける。


 彼は輪っかの形に変形したワームワームに囲まれていた。


 まずい。囲まれている。輪っかから、また、巨大な手が出て僕を襲う気だ。


 黒瀬は、視線を再び、コアの壁に目を移した。


 こいつらと戦ってはいられない。襲われる前にコアを破壊する!!


 黒瀬は一か八か、コアの方を見て、全身の影力を短剣に込めて攻撃し続ける。


 僕が先か、周りのワームワームが先か。今は考えるのはやめよう。今は、このコアを破壊することだけを考えるんだ。


 コアを覆う壁は、ヒビが入ったが、なかなか破壊するところまで行くことができない。そんな中、周囲のワームワームの作り出した輪っかから、巨大な手が姿を現す。


 そして、すっと伸びた巨大な手は、ぎゅっと握りしめて拳を作ると、その拳を黒瀬に勢いよく近づける。


 破壊するんだ!絶対に、諦めない!


 黒瀬は、巨大な拳が自分に、迫ってくるのを感じながら、集中力を極限まで高めていく。短剣の光が、さらに輝きを増す。


 なんだ、この感覚は……。


 短剣のまばゆい光が、黒瀬を包んだ瞬間。彼は、不思議な感覚に襲われた。


 まるで、時間が止まったように周りの動きがゆっくりに感じる。それに、短剣に纒わせている影力がいつもより安定しているような。


 行ける気がする……いや、やるんだ。


 イメージしろ。


 この壁を、コアを破壊するところを。


 黒瀬は、心を落ち着かせ、短剣をコアの壁に刺した。


 ピキッ、グシャ。


 何かが砕ける音とともに、ついにコアを覆う壁が崩壊した。


 壁が壊れた!!これで、終わりだ!!!


 黒瀬は露わになったコアに向かってすかさず、短剣を使って最後の一撃を加える。


 短剣の刃先が、コアに触れた直後、コアは、凄まじい光を周囲に放ち、耳をつんざくような爆発音が響いた。


 これで終わったのか……。


 確かに、コアを破壊した感触かんしょくはあったが、神々こうごうしい光で視界が真っ白になっており、確認できない。


 もう影力を使い切った。これで終わってなかったら、僕は対抗たいこうできない。


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