送り狐の統率者

副題をもう少しだけ変える予定ですので、タイトルのみにしてあります。

第1話を使用しています。



不憫ふびんねぇ」

「とうとうお払い箱なのね」

「そんな事はないでしょう? ようやくお役目に就かれたのに」


 うるさい。

 お前達と一緒で、私も耳が良い。

 聞こえるように話すな。


「お役目って、お天気占い?」

「くすくす。それも立派なお役目でしたわね」

「天候が操れるなんて、素晴らしい白狐様よね」


 それが私の特技だ。

 何の問題がある。


「これからお天気がわからなくなるのねぇ」

「うふふ。雨季には呼んで、晴れにしてもらう?」

「あんな一瞬じゃ、何の意味もないでしょうに!」


 一瞬ではない。

 一分は持つようになった。


 女の園といえば聞こえはいいが、暇を持て余す女狐達の格好の餌食は、いつでも格下の者だ。

 巫女装束を着込む飢えた獣の視線を受けながら、同様の白衣緋袴に身を包む華火はなびは前だけを向き、長い廊下を歩き続ける。


「あぁ、華火様がいなくなるなんて。とぉっても寂しいわぁ」

「そうよねぇ。華火様がいなくなったら、誰のお話をすれば良いのかしら」

「あら。いなくなってもご活躍はここまで聞こえてくるはずよ。だって華火様、ようやく送り狐の統率者になられたのですから。まぁ、お相手も華火様に相応しい噂の問題児だらけの送り狐、ですけどね」


 私は統率者の血筋だ。

 ただ、それだけの事だ。

 それに問題児と言っても、噂に尾ひれがついただけだろう。


「ぷっ。もう我慢できない! 統率者があのようなお天気占いだけしか出来ないって!」

「失礼ですわよ。きっとお天気占いで送り狐達を、ふふふ、鼓舞されるのよ」

「くくっ。ぽかぽか陽気でうたた寝させるのかしら」


 統率者は送り狐の力を十二分に発揮させる存在で、自身も武芸に秀でる者である。

 しかし華火は体が弱く、鍛錬を積めていない。

 それでも、私達の娘なのだから胸を張れと、父も母も言う。


みやび様と咲耶さくや様の御息女ですから、これからのご活躍が楽しみですわね」

「でもほら、送り狐って凄いのを相手になさっているのよね? それって――」


 いつも悪意に満ちた言葉を浴び続けていたが、今回はさらに酷いものが吐き出されるのを予測し、華火は奥歯を噛み締める。


「その送り狐のお役目に紛れるようにして、何の役にも立たない華火様を送らせようとしているのでしょう?」


 長い廊下が終わりを迎え、だん! と足で床を打ち鳴らし、白く長い髪を翻しながら振り返る。

 そんな華火を、袖口で顔の下半分を隠した女狐達が一斉に見た。


「今までお世話になりました。皆様どうぞ、お元気で」


 一瞬の静寂ののち、ひそひそと囁く声が増え続ける。

 それを無視し、赤い鼻緒の雪駄せったを履き、今まで過ごした朱塗りの社を出る。

 すると、見送りの為に時間を作ってくれたであろう、父と母の姿が見えた。


「華火、無理をしてはいけないよ」

「はい」

「いつでも、私達のいる場所が華火の帰る場所ですからね」

「はい」


 父も母も、雪のように白い髪をなびかせ、愛おしむように話しかけてくれる。


「本来ならば、あの予言の時期に送り出したくはなかった。けれども、若い統率者が下へ降りるのが安全な時期でもある。華火を任せる送り狐達の実力は確かなもの。しかし万が一にも何かあれば、すぐにここへ戻るか、下で暮らす兄姉を頼りなさい」

「予言は白狐を指し示しましたが、他の大社を含め、統率者はこの時期に降りるのが決まりだと聞いております。ですから、何かあったとしても、すぐには戻りません」


 驚く両親を見つめ、華火は笑顔を向ける。


「それに、姉様も兄様達も、立派にお役目を務めております。ですから華火も、それに続くまでです」


 華火の言葉に、両親が笑い出す。


「さすがは私達の娘だ!」

「そうですね。ですからこれを」

「これ、母様の……」


 手渡されたのは、母の愛用している紅の紐が編み込まれた銀色の鉄扇。広げれば、華火の顔を覆ってしまえる程の大きさのもの。しかし、人間界には存在しない鉱物で造られており、軽くも頑丈なものでもある。


「私の霊力を込めてありますので、御守りに。戦えなくとも身を守る事に使いなさい」

「でも母様もここを護るお役目が――」

「大丈夫です。私にも同様のものがありますから」


 くすくすと笑う母へ礼を言い、緋袴の帯に差し込む。

 そして顔を上げれば、両親が印を結んだ。


「それでは、行きなさい。これからは、統率者としても胸を張るといい」

「無事を祈ります。たまには顔を見せて下さいね」


 父の緑色の炎と母の桃色の炎が、華火の周りをくるくると回る。温かな想いを込められたはらいを受け、華火は頭を下げた。


「お清め、ありがとうございます。それでは、行って参ります!」


 両親に対して名残惜しさはあるが、ようやく陰険な女狐達から離れられるのは喜ばしい。だから華火は、清々しい気持ちで下山した。



ここからAIさんです。



送り狐達は華火の姿が見えなくなるまで見送った後、散り散りになって行く。

華火も、自分の送り狐である送り狐達を探す為に歩き出した。

「おーい! 華火ー!!」

「あぁ、良かった。やっと追いついたわ」

「華火様~、待ってくださ~い」

華火が歩く先には、それぞれ違った髪色をした男女が三人いた。

華火の送り狐達であり、家族。

「みんな、ごめんね」「気にしないでください。それよりも華火様、本当にこの格好のまま行かれるのですか?」

「うん。だって、これが一番動きやすいんだもん」

「でも華火様、その服は……ちょっと……」

「そうだぜ? それに、華火だけじゃなくて俺らにも恥をかかせるつもりか?」

「まぁ、兄さんたら。そんな言い方はないでしょう?」

「おい咲耶! お前も何か言ってやれよ!」

「私は別にいいと思うけれど……。華火、似合っているわよ」

「うぅん。やっぱり変なのかなぁ……」

華火は自分の姿を改めて確認する。

黒い着物の上に、白い羽織を着ている。それはいつも通りだが、下は真っ赤な長袴を履いている。

その色合いはまるで、血の色。



以下、ソラノです。


見送りも送り狐、そして何故か親でもなくなり、すぐに自分の送り狐が見つかっちゃいましたね(笑)

でも、この流れは好きです。

私の物語でも送り狐は家族のような仲間の立ち位置なので、AIさんもそのような物語を考えてくれたのだろうなと思います。

あとは、着ているものの描写がわかりやすいなと思いました。


こちらは戦うイケメンコンテスト用に書きましたので、男狐だらけなんです。

しかし、このコンテストに出さなければ、女狐も最初から仲間として出していたと思います。

女性を書くというか、女の子を書くのが好きなんです(笑)

やっぱりですね、同性の友情もあるものが好きです。


ただいま第一章まで公開してありますが、第二章からは女狐も出てきます。

そしてですね、こちらの物語は三部作にする予定です(ぼんやりと浮かんでいたものでしたが、いっそ書いてしまえと思いまして)

なので、副題に〇〇編と付けようかなと考えているので、副題を書きませんでした。

続きからは恋愛も絡めていきますので、公開までもう少しお待ち下さい。

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