グループ決め
「さあこれで全員のアリバイが出揃ったわけだけど。誰が犯人なのかわかるのかしら。メモしてた赤城さんと東條さん。」
珍しく佐藤ではなく風間がそう切り出した。
「私は赤城さんが犯人の可能性は低いと思います。彼はまず20時過ぎにこの旅館に来ていますよね。そのあと荷物を下ろして身支度を整えただけですぐに食堂に来ています。そのあと0時近くまで私と話していたことは私が保証します。また、思うのですが、22時の時点で塩見さんが高橋さんの不在に気づいた時点で彼は殺されていたと思っています。だから彼が殺されたのが19時から22時の間とするならば、彼には毒物を混入させる時間も、彼と直接会う時間もどちらもあったとは考えにくいです。」
私は私なりの意見を述べたが、塩見にすぐ反対された。
「毒物混入させるだけなら20時から20時半の30分の間に案内してもらって自室で荷解き終わった後でも別に1、2分あれば可能じゃねえのか。」
「たしかにちょうどその時に運良くタイミングが重なっていたなら可能です。例えば高橋さんの飲んでいるペットボトルがたまたま見つかった。もし部屋の中にあったのなら鍵がたまたま空いていた。それに高橋さんがどの部屋かもたまたま前から知っていた。など。塩見さん、あなたが19時に高橋さんと一旦離れたのは別に予定通りではないんですよね?」
「まあたしかにそうだけどよ。」
彼も赤城くんが犯人だとはあまり考えていないようだ。
「彼が自由に使えた時間といえば色々早く済ませたとしても10分くらいしかなかったことでしょう。私はその偶然できた10分の時間に高橋さんを運良く殺せたとは考えにくいと思います。」
「まあたしかに。赤城くんは犯人候補から外しても良さそうね。」
佐藤がそう続いてくれた。
「聞いた限りだと他に犯行不可能な人はいないです。」
東條がメモを見ながらそう告げた。
誰もその意見に反論はないらしい。誰からも意見は出ず、ただうなづいていた。
「じゃあとりあえず赤城さんだけが犯人ではないことがわかったってことか。たしかにあんまり疑う部分も見えないし。俺はあなたを信じますよ。」
塩見も赤城くんは信じたいらしい。
「ありがとうございます。俺からも高橋さんを殺していないことをここに明言させてください。それでは俺の疑いが晴れたとこで、俺が今後の流れを仕切らせてもらっても良いですか?」
誰からも異論は出なかった。
「先ほど話した通り、ここから先は誰かから助けが来るまでグループでの行動を心がけましょう。また、外にも出れない今、大事なのは食糧の確保ですが、管理人さん、残りの食糧はどれほど残っていますか。」
「この人数でしたら1週間は大丈夫です。元々ここは島であるために、たまに天候で船がこちらに来れないことはよくあるため、いつもかなり多めに食糧は確保してあるんです。」
「なるほど。それはとても助かります。ではあとはグループのチーム分けですね。このような事態になっては、管理人さんもどこかのグループに入っていただきたいと思います。先ほどもお伝えした通り、ここには10人いるので、パワーバランスを考えながら、3人、3人、4人の3グループに分けたいと思います。とはいえ、女性だけのチームは不利になってしまいますので、均等に男女混合チームになるよう組みたいのですが、何か案はありますか。」
「俺は疑いが晴れてるあなたがどこのチームになるのかが大事だと思うぜ。誰も異議がないのなら俺は赤城さんと同じチームが良い。俺から見れば確実に親友を殺した人ではないと思ってチームに入れられるからな。あなたたちからみても怪しめの俺が確実に犯人じゃない赤城さんと組むのは安心でしょ。」
「まあもしそこがグルだったらとか考えたらキリがないけど。そんなこと言ったら誰にでも当てはまるわけだし。まあいいわ。私は構わないわよ。」
案外佐藤はすぐに許可を出した。
「ではまず俺、赤城と塩見さんが同じチームですね。男性が2人となったので、残りは女性の方がパワーバランスが良いかと。」
「まあそうね。」
「他にチーム組みの希望はありますか。」
赤城くんがそう呼びかけると意外にも三森が手を上げた。
「私、…男性が苦手なんです。だから私以外にも女性がいるグループでお願いします。」
「なるほど。ではそうしましょう。他にご希望ある方は。」
「私もそうですね。女性がいたほうが安心です。」
そう続いたのは風間だった。ここまでは全員そこまで驚くことではないだろう。
「ではほかにそのようなご要望の人はいますか。」
橘、佐藤、私の3人は特に反応を示さなかった。
「それではまず要望がある人から叶えられるように、私赤城と塩見さん、三森さんに風間さんの4人でまず一チームでもよろしいでしょうか。」
もちろん誰も異議を唱えない。
「では残りですか、男性3人、女性3人となっています。どちらかのグループが男性が一人でもう片方が女性1人となるのですが、何かあった時の安全のため、男性1人のグループには飯田さんが入ってもらえますか。力がとても強そうに見えるので。」
「わかりました。」
飯田が素直に答える。
「まあその班が全滅したらあからさまに飯田さんのせいでしょうしね。」
佐藤が嫌味として釘を刺す。
「僕はそんなことしませんよ…。」
飯田が弱々しく答えた。
「では残りは女性陣ですが、1人だけ女性1人グループ、もう1組は女性2人グループとなります。どちらがよろしいですか。」
「おそらくこの3人の中では一番体力があると思うので私が女性1人のグループに入ります。」
私はそう答えた。
「運動されていたのかなとは見ていて思っていましたが、やはりそうなんですか、清野さん。」
「あれ、先ほどお話ししていませんでしたっけね。私こう見えて昔はプロのスポーツ選手を目指していたんですよ。」
ある程度まだ体に筋肉が残っていたからかそこまで驚く者は誰もいなかった。
「これでグループが決まりましたね。一つ目のグループが俺赤城と塩見さん、三森さんに風間さん。二つ目のグループが東條さんと管理人の國谷さん、そして清野さん。最後のグループが佐藤さんと橘さん、そして飯田さん。これでよろしいですか。」
もちろん全員が賛成した。
「ではこれからですが、もう朝日も登り始めていますが一休みしますか。ぜひ交代で睡眠を取って残りの方は見張りに徹してください。今5時なので、再集合は12時でいかがでしょうか。そこから安全のためにも、全員で昼食を準備して食べましょう。」
誰も反対を唱える者はなく解散となった。
しかし、この時は安全と思えたこの策でさえ、犯人に嘲笑われることになるのだ。
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