第93話 影響がで始めるには早すぎる
そして、盲目すぎて周りすらまともに見えなくなってしまった結果がこれである。
もし、早い段階でその事に気付いていればきっとこんな事にはならなかったのに、と思わざるを得ない。
「どうしたん? さっきからウチを見つめて。 は、恥ずかしいやんか。 でも、やっとウチの事を見てくれた気がしてめっちゃ嬉しいっ」
「あ、あぁ……そうだな」
「ウチな、感情表現が下手やからこんな強引な不法になってしもうたんやけど、逆にこんな方法をとってしまうくらい圭介の事が好きなんよ……っ!」
そんな事を考えながら自己嫌悪に陥っていると、心配そうに南川が俺の事を気にかけてくれて声をかけてくれるのだが、それに返事をせずただ何も思っていない、強いて言えば『南川が何か喋っているなぁー』程度だったのだが、それを南川が別の解釈をしてしまったようで嬉しそうに涙を流しているではないか。
その涙を流す南川を見た時、俺はなぜか知らないのだけれども今まで感じた事のない、愛おしいという感情と共に彼女に好かれなければならないという脅迫観念のような感情も同時に感じてしまう。
「ごめん南川……」
「圭介……?」
「俺が鈍感だったせいで南川に辛い思いをさせていたみたいだって事に今更気がついた。 ごめんな? 今まで辛かったよな? でもこれからは俺がちゃんとお前の事を見てやるからっ」
そして、今まで彩音の事が好きな自分に酔っていたせいで彩音の事すらまともに見れなかった俺は、俺の周りの人すら当然のように見ていなかった事にようやっと南川の涙で気付かされる。
もし俺がちゃんと初めから南川の事も見てやる事ができたのならばここまで拗らせてしまう事も無かっただろう。
それに気づいた俺は愛おしいと言う感情の他に申し訳なさすら感じ始め、そして謎の強迫観念もより強くなっていく。
この事からも、この謎の『南川に好かれなければならない』という強迫観念はきっと南川に対する罪悪感からくるものなのだろうと俺は自分なりに解釈する。
「も、もうっ、圭介ったら。 気づくのが遅過ぎなんよっバカっ!」
「ごめん。 でもこれからはちゃんと南川の事を見るからっ」
「ほんまに? 嘘つかへん?」
「あぁ、本当だ」
そして今俺が思っている事をそのまま口にすると南川は流れる涙を拭う事もせず俺へと抱きついてくると共に、南川の柔らかい二つの果実が俺の胸に押し当てられ、今現在自分自身の感情で一杯一杯であった所に性欲も加わり、頭が回らなくなってしまい南川の事以外何も考えら無くなってくる。
「ちょっと影響がで始めるには早すぎる気がするけどストックホルム症候群ってほんまやったんやな……」
「え? なんて? ごめん聞こえなかったみたいだ」
「うううん、なんもあらへん。 ただ、こんな幸せでええんかな? と」
そして、そう言ってまた嬉しそうに泣き始める南川を抱きしめながら俺は『これからは南川の為に生きて行かなければ』と思うのであった。
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ここまで南川はずっと似非関西弁なので泣いているのも全て演技で……(唐突になるチャイムの音)すみませんちょっと誰かきたので少し待っててくださいね。 はいはい〜どちら様ですかぁ〜……ヒィっッ!! ちょっ!! ヤメテッ! …………。
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