第81話 流石に子供扱いし過ぎたか


 この山なのだが、都内からは離れており山菜、または食べれる野草が多く自生しているのでここへきた時はよく茂さんとよく採って来ては天ぷらにして食べたりしたものである。


 ちなみに俺は、勿論ここで取れるもの全て美味しいのだが特にここで採れたヨモギで作る草餅やドクダミで作ったトクダミ茶が意外と好きだったりする。


 そんな過去の俺の記憶を楽しみながら俺たちは近くの沢まで降りて行く。


 ここには昔茂さんが植えたワサビが生えており、人の手を加えてないので小ぶりだが一食食べる分には丁度良い大きさだろう。


 そして沢へ行きながら莉音はついでにふきを採っていたのであろう。


「見て見て祐也っ!! この私がふきを大量に採って来てやったわっ!!」


 と嬉しそうに言うではないか。


 そして、ふきに関しては下ごしらえが面倒臭い上に量を食べるものでもないので少量で良いと言っていたにもかかわらず莉音は両手に抱えるほど採って来て『さぁ私を褒めろっ!!』と顔を輝かせているではないか。


 ふきの筋とり全てやらしてやろうか?


「何を偉そうにしているのよ。 ふきは小鉢一品程の煮物料理にするからそんなに量は取らなくても良いって祐也さんが言ってたでしょうっ!? それに、そんなに採ったら次の年採れなかったらどうするのよっ!? もし採れなかったら茂さんに申し訳ないじゃないっ!!」


 そう思っていた時、彩音が俺が言いたい事を言ってくれたのだが、ふきを大量に採ったところで次の年で困るようなものでもない程にはこの辺はかなりの数自生しているのでその点に関しては少しだけ莉音が可哀想に思えて来たので仲裁に入る事にする。


「まぁまぁ、莉音も悪気があった訳じゃないし良かれとみんなの事を思ってわざわざ採って来てくれたんだからそう責めなくても別にいいだろう? それにここら辺はいくら採っても大丈夫なくらいにはふきは自生してるしな。 流石にワサビは生える場所が沢の湧き水付近と限られている為取り過ぎるのは困るけどな。 だが、流石に食べ物をむやみに採ってはいけないという彩音の言い分も分かるのでふきの下ごしらえは莉音担当な」

「そ、そうね……ちょっと考えなしだったみたい。 ごめんなさい」

「気にするな。 次から気をつければ良いさ。 それに、取り過ぎた分は細かく刻んでかき揚げの具材にすれば良い」


 そして俺がそう言いながら微笑んでやると莉音は顔を真っ赤にしながらそっぽを向くではないか。


 できるだけ刺激しないようにと思っての対応だったのだが、流石に子供扱いし過ぎたかと思うものの姉妹喧嘩まで発展する前に鎮火できたので今はこれでよしとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る