第77話 殺し合いが起きるかも
今現段階で俺はこの北条姉妹を旅行に誘った事を早くも後悔し始めていた。
せめて姦しくするのは会話する女性が三人揃ってから姦しくしてほしいものである。
「とりあえず喧嘩するのは良いが朝から甲高い声でキャンキャンと喚くのだけはやめてくれ。 頭に響く……っ」
「あっ、ご、御免なさい」
「んなっ!? ……ご、ごめん」
「分かればいい」
流石に目眩がしてきそうなので俺は二人に注意すると、彩音は今まで人前で妹と口喧嘩をしていた事に気付いたようで、それが他人から見てどのように見えるのか分かったらしく、珍しくも流石に今回ばかりはどの角度で見ても自分に非があると思ったのか素直に謝ってくる。
そして妹である莉音は一瞬だけ俺に反抗的な態度を見せたのだが、それでも姉が俺へ謝る姿を見てバツが悪くなったのか、自分の行動を客観視できたのかはわからないのだが、とりあえず感は拭えないものの謝罪をしてくる。
莉音に関しては今現在思春期と反抗期の真っ只中だと思っているので、そんな思春期真っ只中の彼女が謝罪の言葉を口にするだけでも大したものだと俺は思う。
俺が思春期かつ反抗期が重なった時にそれが出来たかと言われれば間違いなく、自分の方が明らかに悪いと分かっている事でさえ自分から謝罪する事はできなかった上に、反抗期でなくとも思春期は謝る事が、何かの催眠術にかかっているのではないかと言われても納得できないほど何故かできなかった。
そう思えばこそ、例え心がこもってなさそうでも莉音が謝罪をする凄さというところは評価してあげるべきであろう。 ウザいかどうかは別問題だが。
「祐也様、車を用意いたしました」
そんな感じでわいのわいのと時間を潰していた中、田中が車を用意してくれてたよでみんなで車へと乗り込む。
ちなみに俺は女性陣満場一致で助手席となった。
理由としては隣に誰が乗るかで殺し合いが起きるかもしれないからというものらしい。
そんな大袈裟な、と思ったのだが俺自身がそれほどまでに皆車の助手席に座りたいとは思わなかった。
俺敵にはタクシーも含めて後部座席の方が好みである為何がそこまで良いのか分からないのだが、彼女達にしか分からない拘りというものがあるのだろう。
きっと、俺が後部座席に座ってしまうと誰が左右に座るかで大揉めになるからではないはずだ。 と現実逃避でやり過ごしながら、田中が運転する車は目的の別荘まで走り出す。
とりあえずなんだかんだ言っても俺自身あの別荘に行く事は楽しみに思っており、特に別荘を管理してくれている茂さんに会えるという事は北条姉妹の姦しさを考慮したとしても楽しみの方が上回っているのも事実である。
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