週末フリーエッセイ

二輪ほむら

　本格的な一人暮らしを始めた。

　わざわざ「本格的な」と書いたのは、おとといまでは母がいたからだ。最初の頃は慣れないことも多いし、荷物の受け取りなんかも多かったから、家にもう一人いて助かった。

　でも、もうそれはない。自力でやっていくのだ。

　……なんて意気込んでみたものの、いきなりやらかした。

「休日だし自炊でもしようかな」なんて思って、目玉焼きを作ろうとしたのだ。

　油を引くつもりが買ってない。仕方ないのでネットで「卵料理　油なし」と検索したら、最初に水を入れて蒸し焼きにするやり方を見つけた。サア仕切り直し……といきたいところだが、ここからが本物の失敗だ。

　うっかり水を入れすぎ、「蒸し焼き」どころか「割った卵を茹でる」状態になり果てた。卵をお湯の中に割り入れるとどうなるか。白身が水中に広がり、一部は細かく散ってしまう。炊事の経験が少ないので、それを知ったのはこの時だ。

　白身をこぼさないように、慎重にお湯を捨てようとした。少しは捨てたが、それを思いついた時には手遅れだった。

　とりあえず適当な時に火を止め、水浸しの卵に買ってきたカット野菜を乗せて、塩をかけてお湯と共に食べた。なんかメチャクチャだが、不味くはなかった。

　……こういうのを「ポンコツ」って言うのかね。アニメに出てくる美少女だったら可愛いが、むさ苦しい男子学生では可愛くも何ともない。

　これからもこの手のしくじりは無数にやるだろう。不安でもあり、楽しみでもあり……ネタが増えるからね。あんまり大きな損害が出たら困るが。

　ともかく、「絶対にしくじる」ことが目に見えている以上、失敗しても大惨事になる前に食い止めるための知恵をつけていきたい。

　……志が低い？無理な目標を立てるよりはいいじゃないか。

　とはいえ、高めの目標もある。それは「いい習慣をつける」ことだ。

「じゃあ、『いい習慣』って何よ？」

　答えは「心と体を健康にする習慣」「時間を有効活用する習慣」だ。具体的には、

「早寝早起き」

「栄養バランスのとれた、腹八分程度の食事」

「ネットサーフィンとSNSを控える」

「幅広いジャンルの読書」

「大学の予習復習を欠かさない」

「毎日少しずつでも執筆などの趣味を楽しむ」

「筋トレだけでなく有酸素運動もする」

「休日でも時間を浪費しないようにする」

　ここまではいいだろう。次の3つはちょっと説明が必要だと思う。

「禁欲」

「善行、特に陰徳を積む」

「身だしなみに気をつける」

　前2つだが、スピリチュアルにハマった訳じゃない。どちらもこの身で確かめた効果だ。

（しばらくは少し下ネタです、苦手な人は飛ばしてください）

　禁欲については、17歳の頃から挑戦している。ことごとく13日以内に挫折しているが。

　ネットで「性欲を自分で発散しないようにするのは健康にいい」という話を見て、騙されたと思って始めてみた（一応ぼかして表現してます）。

　その結果、本当に昼間の眠気が軽くなり、勉強や執筆もはかどったのだ。

　ただ、私はその手の界隈が少し苦手だ。具体的には「禁欲しない人を『猿』呼ばわりして見下す」「エビデンスが少ないこともあって、すぐにスピリチュアルな説明をする」「禁欲のモテ効果（真偽不明）を重視し、ナンパ界隈に結びつく」「結果、女性を軽視しがちになる」などの風潮に抵抗がある。

　それでも、界隈で言われる「ポルノ依存症」の存在や、禁欲と健康のつながり自体は否定しない。少なくとも自分には効いたので続けたい。

（下ネタここまで）

　さて、陰徳とは「人に見えない所で善行を積むこと」だ。だからあまり説明したくない……というか具体例を自分で出したらもはや陰徳じゃないんだが、この際仕方ない。

　先週、大学の敷地内で昼食をとっていると、菓子パンの袋が落ちていた。

　それを拾って近くのゴミ箱に捨てたら、少し清々しい気分になった。周りは誰も見ていなかったので、ほめる人もないが。

　エビデンスもメカニズムも知らないが、心にいいのは確かだ。これからも善行を続けようと思う。

　身だしなみは、前々から気になってはいた。生まれてこの方無頓着で生きてきて、やっと気づいたのだ。「身だしなみを整えるのは、会う相手への礼儀である」と。

　きっかけの一つは、教室で隣に座っていた女子がカバンから落とした櫛を拾ったことだ。

　最初「こんな薄汚い野郎が拾ったら『汚い』と思われないか!?」などと無駄にためらっていた。どう考えても心配しすぎだが。なんとか覚悟を決め、拾って渡したら感謝してくれた。その後教室を間違えていたことに気づき大慌てで出たから、それ以上の会話はなかったが。やはりポンコツだ、私。

　その夜、一日を振り返りながら考えた。

「善行を積んでも、相手が喜ばなければ自分の喜びも半減だ。次こんなことがあった時にもっと喜んでもらえるように、自分自身もせめて小綺麗にはした方がいいんじゃないか」

　……正直に言おう。「モテたい」という下心も無きにしも非ず。何にせよ、自分の見た目にも意識を向けていきたい。

　翌日、Twitterのフォロワーさんのツイートで、「鼻毛に気をつけて」という内容があったので、その辺からでも整えていこう。

　ちなみに、櫛を拾った相手はもちろん女子だが、例のフォロワーさんも女性だ。そして私は推しのVtuber、シスター・クレアさんから大きな影響を受けて人生が上向いてきている。

　……こうしてみると、私ってかなり女性から影響を受けてるよな。相手は無自覚だろうけど。

　そう思うと、「モテたい」理由を「欲を満たすため」でなく「自分にいい影響を与えてくれる女性を見つけるため」そして「より多くの女性と関わり、自分からも相手にいい影響を与えるため」と捉え直せば、「モテたい」と思うのも悪くないんじゃない？私にとって「モテ」つまり「多くの異性に好かれること」は「多くの人と関わって、いい影響を与え合う」ための手段で、目的じゃない。

　……何話してたんだっけ。アー、そうだ。一人暮らしでいきなりやらかした話と目標の話だ。ゴメン、脱線した。

　とにかく、健康な生活のために、目標を持って日々を過ごしたい。

　あなたの共感できた目標があったら、ぜひ参考にしてほしい。

　……と言いつつ、夜遅くにコレ書いてるんだけど。やれやれ、先が思いやられますな。