そして眠りにつく

ながるさんには「また同じ夢を見た」で始まり、「そして眠りにつく」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字)以上でお願いします。

https://shindanmaker.com/801664


 *・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*


 また同じ夢を見た。

 夢の中の君は少し奔放で、夜空に浮かぶ三日月のソファで話そうと僕の手を引いた。

 夢の中でさえリアリストな僕は「どうやって」と焦るのだけれど、君はそんなことをいう僕の方が解らないという顔をして、真白な翼をばさりと広げる。

 羽ばたきが呼ぶ風はいつも少しひやりとしていた。


 繋がれた手のおかげで、辛うじて僕の身体も空へと登って行く。重力から離れられない自分の重さがいつも心にのしかかっていた。

 翼を広げて、天と地の星の間を一緒に飛べればいいのに。風を作るのも、風を切るのもいつも君だけ。


「僕を置いていけばいい」

「どうして?」

「僕は重い」


 小首を傾げて、君は僕を引き寄せる。君が、近い。


「重くなんてないわ」

「嘘。手が離れれば、僕は落ちる」

「嘘じゃない。あなたが地から離れたくないのも知ってるけど」


 君は少し口を尖らせて、視線を外す。あぁ、次のセリフも、もう分かっているのに。


「一緒に行きたいのよ」


 子供を座らせるように僕を三日月に腰掛けさせ、君も隣に腰掛ける。三日月は少し沈んだようだ。


「あなたがいれば、どこまでも行ける」


 君の指差す先には幾万の星。だから。

 君を地上に留めて置きたくて、僕は翼を出せないのかもしれない。僕が錘にならないと、君はどこまでも行ってしまう。


 臆病な僕は君とどこまでも行く勇気がなくて、でも君とはいたいから。ジャングルジムの上、屋上、山の頂、飛んでいる飛行機、そして、月。徐々に上がる高度に胸がざわめく。

 いつか、行けるだろうか。君の指先が示すところ。並んで風を作れるだろうか。

 僕は地上の星を見下ろし、そして眠りにつく。

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