第5話 方針会議

「それでこのあとまずどうするべきだと思う?」

 ひとしきり笑いあったところで、オロチに尋ねてみる。


 すると笑ったままオロチは答える。

「難しく考えることなんてないですよ。もともといた時代ではどうしていましたか?」

「もともとの時代?もともといた時代に日本を統一することなんてなかったからなぁ…」

「そういうことじゃないですよ。まず何かをするには自分がそのことをしやすくするように根回しするんです。その中でもいちばん大事なことは、上司の承諾を取るっていうことですね。」

「なるほど、上司の機嫌を損ねると面倒だし自分がしたいこともできにくくなるもんな。」

「そういうことです!」

 簡単でしょ?というようにオロチは首を傾げてくる。


「ここで言う上司って誰なの?」

「あ、そこは高御産巣日神たかみむすひのかみさんに聞いてないんですね。基本的にはその地域の地方神がリーダーのような感じになっていて、その神を中心にヒエラルキーが形成されている感じです。」

「じゃあ新しい地域の神々を支配下に入れようとするときは、まず地方神のところにいったほうがいいってことだよね?」

「はい!それでここの地方の地方神は三重県にいらっしゃる天照大神あまてらすおおみかみ だから、まずはそこに行くのが無難だと思います!」

  

 天照大神あまてらすおおみかみ


 社会科選択で地理を選択していた俺でさえ聞き覚えのあるワードだ。


 えーと確か……だめだ。何をした神様かまでは思い出せない。

「ごめん。その神様って何をした神様だったっけ?」

「多くの神様が住んでいる高天原たかあまのはらを治めていた神様です!」

「ほー、じゃあ今でも人徳はある神様なの?」

 もしも天照大神あまてらすおおみかみが人望のある神様だったら余計に機嫌を損ねる訳にはいかなくなる。


 まあでも、そんな偉大なことをした神様なんだから人望はあるに決まっているか。と自分で納得していると、オロチが暗い顔で首を横に振る。

「いや実は最近になって天照大神あまてらすおおみかみも更年期に入ったのかもしれないんですけど、機嫌が悪くてイライラしていることが多いんですよ。その影響でここ200年くらいで人望がなくなってきているんです。」

「お、おう」


 あれ?


 思ったよりも神様に人間らしいところもあるんだな。

 そう思いながら話に耳を傾け続ける。


「まあでも、力が強いことには違いないですし、怒らしたら厄介なので穏便に済ます方法で行きましょう!」

「いや、俺も初っ端からバトルとか嫌だからぜひともそうしたいかな」


 さて方針が決まった。


 思い立ったが吉日。

 そんなことわざがあるくらいだ。


「じゃあとりあえず、三重県に行って、天照大神あまてらすおおみかみのところに話を通しに行こうかな?」


 そう呟いて腰を上げる。

 その腰は思ったよりも重くなかった。

 よし!日本統一の始まりだ!

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 神様紹介NO.2

 天照大神あまてらすおおみかみ


 伊邪那岐命いざなぎのみこと伊邪那美命いざなみのみことのいる黄泉の国から生還し、黄泉の国の穢れを「筑紫の日向の橘の小門のアハキ原」の川で洗い流した際、左目を洗ったときに化生した神。その後、たくさんの神が住む高天原たかあまのはらを治めるようになった。

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