待ち合わせ

 どうやら『女性向け風俗 』と言う、性的なマッサージと愛撫を受けられるサービスがあって、ここで恋人プレイが出来るらしい。


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 初めての『女性向け風俗 』を体験する事を決めた私は準備をする事にした。

せっかくの初体験を適当な格好や気持ちで受けたくない。どうせなら、めいいっぱい楽しんでやろう。夫だって『推し活』を楽しんでるんだ。私だって疑似恋愛くらいは良い筈。


 なので、それから私はよりダイエットやスキンケアに気を使った。出来れば結婚前の状態に戻したかったけれど、大変だし。そんなに待っていられない。


 なので、期間を1ヶ月後と決めて、その日は『女友達と食事に行くから遅くなる』と夫に伝えて子供は、私の両親に預ける事にした。夫もちょうどその時に行きたい場所がある様で『ちょうど良かった。俺も行きたい所あってさ。そっちも楽しんで来てよ』


 と言っていた。こちらの気も知らないで呑気な奴だ。そう思いつつも『ありがとう。嬉しいっ』と自分史上最高の笑顔で言ってやった。


 そうしたら夫は何かを感じたようで、まるで高校生の時に私が告白した時の様な反応をしていた。なんか、ちょっと気分がスッキリしたが、その時には私の心は決まってしまった。


 そうして『女性向け風俗 』を頼む事にした当時、私は初めて、想い人に告白する様な。そんな感覚を覚えていた。ウェブサイトの電話番号を押してそこからコールするのがとても、とても緊張する。これを押してしまったら後戻りは出来ないんだ。そう思うと、指が震える。


 トゥルルルルルウ


 ……押してしまった……


「はい。カイカン男子です」


「あ、あの。私カオルって言いますっ」


「はい。カオル様ですね。当店のご利用は初めてですか?」


 本名を名乗ってしまった。でも、恋人プレイとは言え、他の女の名前でなんて呼ばれたくない。電話する前は旧姓にしようかとも迷ったけれど。つい下の名前を名乗ってしまった。


「は、初めてです………えっと、レイジさんってご都合いかがでしょうか?」


「レイジですね……彼なら空いてますよ。何時頃が宜しいでしょうか?」


「それじゃ、18時からデート付きコースでお願いします」


「承知しました。場所はどちらでしょう?」


「S駅周辺のレストランでお願いします。場所はXXXです」


「はい。ホテルはいかがしましょう? 事前に予約しますか?」


「はい。お願いします。でも場所が分かりません」


「場所は、当店提携の所をご紹介します。ご休憩は5000円になりますね。よろしければ、待ち合わせの1時間後にしておきます。もし、時間が変更になる場合は、レイジにお伝えください」


 緊張で、心臓が高鳴り。少し言葉が出づらい、


「…………わかりました。それで問題ありません」


「承知しました。本日は当店をご利用いただき有難うございます。18時の待ち合わせ30分前にもう一度お電話頂けますと助かります」


「は、はい。わかりました。ありがとうございます」


「それでは、失礼いたします。本日はお楽しみくださいませ」


 そんなやりとりをして、電話を切った。なんだか頭がフワフワする。

 

 自分が自分でないかのようだ。今の時間はお昼を過ぎたあたりだから、これから準備して子供を親に預けないと。


 そう思って、鏡の前でお化粧をして準備をした。いつもよりも少し気合い入れた感じになってしまったかもしれない。そして夫に声をかけた。


「なんか、今日はいつもより気合い入ってるな」


「そうなの♪ 今日会う女友達もお洒落だから負けたくなくて♪」


「そんなもんなのか。まぁ言ってらっしゃい」


「じゃ、行きましょうね。りゅーくん」


 子供のりゅーくんを連れて、外に出た。これで最初の段階は超えた。

夫に嘘を付いて、出かけると言う行為に胸が高鳴って、ドキドキする。ちょっと顔が紅潮しているかもしれない。


 私は、両親の家に行き。子供を預けた。その際、母から『今日は随分とお洒落だね』と言われたが『うん。まぁね。稀にはね』と返した。


 その時にりゅーくんがグズりだしたけれど、母はりゅーくんが産まれたばかりの頃に手伝いに来てくれていたから、手慣れた物で、すぐにいい子になった。


 そして、今の私はS駅に居る。


 これから、まだあった事のない男性とデートしてそして、ホテルに行くんだ。

 そう思うと、足が震えて来た。本当にこんな事をして良いんだろうか?


 でも、もう予約してしまったし。キャンセルしても、一人でお洒落して食事する変な女になってしまう。もう行くしかないんだ。


 そう決心をして、お店に電話をして予定通りにお願いします。と伝えた。


 駅で待ち合わせをしてから、レストランに行く事になったので、今、待っている所なんだけれど、心が若返ったみたいに緊張する。


「こんばんは、カオルさんですか?」


 そう声をかけて来たのは、少し髪の毛を明るく染めた男性で昔、私が好きだったアイドルの面影を感じるレイジさんだった。


つづく

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あとがき


初めての待ち合わせ

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