第6話 日歴123年 懲悪の日

 衝撃、熱、怒号。その場にいる皆がこの世の地獄のような光景に怯え、息を呑む中、1人だけただただ静かに涙を流す者がいた。


 男の名は、ギオザ・ルイ・アサム。


 アサム王国の現王でありながら、他国から指名手配を受けた男。


 血も涙もないと知られた彼が流した涙は、誰に気づかれることもなく、熱風に攫われた。

 直後に彼は、両手両足の自由と神力シエロを奪われ、捕らえられた。彼は抵抗する素振りを一切見せずにこう言ったという。


「最後にいい仕事をした」


 その日メルバコフ王国は、7日後にギオザ・ルイ・アサムの公開処刑を行うことを決定した。



 懲悪の日……

 ラミヤ大森林の旧ラミヤ教会の建物内にて潜伏中のアサム王国国王ギオザ・ルイ・アサム確保のためメルバコフ王国第一軍がかの地に侵攻。建物外に避難したギオザ・ルイ・アサムが建物を爆発させたことにより、メルバコフ王国第一軍の主力が壊滅した。推定死者数は約348名、内1名はギオザ・ルイ・アサムの側近であったとみられる。白刃の乱(p291)にて負傷していたギオザ・ルイ・アサムはメルバコフ王国第一軍補助部隊に捕らえられた。

(黒の国歴史大全より)

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