第23話 第二部 好奇心はやっかい事を招く 4
「やってしまったなぁ」
背後を走るフェリオを見、周りを見た。
野次馬が何人か転がっていた。
オリビエにしてみれば、ちょっとビリビリさせてやろうぐらいのものだったが、いつものごとくの結果に苦笑しか出ない。
路地を戻るにつれ、新たなる野次馬たちが口々に「さっきの物凄い光は何だ!」と、集まってきていた。
たまに現場方向から来ているというだけで捕まり、「何があったんだ?」と訊かれる始末だ。
街中にやっと入るとまた別の野次馬の人垣があった。
その隙間からこのゴタゴタの大元、オリビエに麻袋を投げつけた青年、トザレが黒ずくめたちと剣を交えていた。
「あー、ずるい! こっちの方が人数少ない」
場違いな苦情がオリビエの口から出る。
「でも、あのお兄さん、トザレだっけ、かなりマズいね」
関係者となってもオリビエの感覚は野次馬だった。
「オマエなぁ。呑気に見ている場合か? さっさとあの男にその厄介物を返せ。でないとこれからずっと黒ずくめたちに追いかけられるぞ」
返したところで放免となるかは不安だったが。
「だね。けどさ、ちゃんと返せるかなぁ」
奪い取られる可能性もある。
「オマエのことだから、黒ずくめの手に渡るのが嫌なんだろう。だったらさっさと助けるぞ」
なかなか動こうとしない。オリビエの性格からすれば、こうだろうと指摘する。
受取人、トザレに渡す前にもしやの事態になったら、奪い取ろうとする黒ずくめたちよりもトザレが持って行こうとしていた所に届けたいといい出すはず。
全く関係がないが、渡したくなければこうなる。
これが二人のいつものパターンだった。お人好しコンビと皆から兪やされる。
「そうなるか……って、待って!」
剣の柄に手をかけているフェリオの腕を掴む。
「面倒なの来たよ」
自警団がこっちに向かっているのが見えた。
「うわぁ!」
視線を戻せば、当のトザレが二人の元へ駆けて来ていた。
「街外れのラグニー森にある木こり小屋にいる」
オリビエとすれ違いざまに告げた。
「え! 待て! うぐっ!」
「黙るんだ」
振り返り、文句をいい出しそうなオリビエの口を背後からフェリオが塞ぎ、野次馬の中へ紛れ込む。
トザレの後を追う黒ずくめとそれを追う自警団の目を欺くために。厄介な事になったとしみじみ思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます