風の鎮魂歌

天野久美

第1話 オリビエとハスラム 1



 ひゅうひゅうと風が吹いている。

 木々も激しく音を立てて揺れている。

 がたがたと窓枠も揺れる。

 深夜、心も同じように揺れて不安になってしまう。

 いつもと違う場所ならばなおさら。


「ハスラム」


 肩まで伸びた少々癖のある亜麻色の髪をした少女は、幼馴染の少年の部屋の扉を開けベッドの脇に立った。

 

泣きそうな声で名を呼ぶ。


「うーん」

 

名を呼ばれた少年は眠気眼を向ける。


「オーリー(オリビエ)か。ほら」


 慣れたことと布団の端を掴み上げた。


「風が強いだけだから」


 丸まるように横になる少女に布団をかけ背を向ける。


「オレ、眠い」

「ごめんね」


 両親が用事で出かけ、母親の親友のお隣さんに預けられていた。

だが、帰って来ることができなくなり、そのままお泊りになった。


「いいから」


 オリビエが背中に頭をつけてきた。

 怖がっているのかと思いきやすぐに寝息が聞こえてくる。

ささ

「ったく」


 オリビエの方に身体を向けて頭を撫ぜた。

 こうしないと不意に起きた時に泣き出してしまうのだ。


「まだ怖いんだ」


 風の強い時に怖い思いをしていた。



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