第7話 魔導士の少女セラが仲間になる

「はぁ……はぁ……はぁ」


 魔導士風の少女は体力のステータスが高くないのだろう、しばらく走っただけで息切れを起こしていた。


 俺達は立ち止まる。


「こ、ここまでくれば大丈夫だと思う」


「そ、そうですか。それは良かったです」


 少女は胸を撫で下ろす。


「け、けど、あの人達の言っていた事はとても信じられません」


 あの人達が言っていた事。俺が『Fランクの冒険者』である事とか、不評が広まってどこのパーティーにも入れて貰えないとか、そういう事だろう。要するに俺が弱くて役立たずだという評判の事である。


「あなたはあの人達よりもずっと強かった。そんな気がしています。も、申し遅れました」


 少女は改まる。


「私の名はセラと申します。セラ・ユグドレシア。見ての通り魔導士をやっています。固有スキルは『黒魔法』です」


『黒魔法』。主に攻撃に特化した魔法の事だ。魔法にも種類がある。攻撃、護り、補助、癒し。魔法と言っても、様々な種類があるのだ。


「俺の名はエルクだ。奴等の言っていた事は全くのデタラメと言うわけでもない。俺が一年経ってもFランクの冒険者をやっているのは本当の事だ」


「そ、そうですか。け、けど、とてもそうは見えませんでした」


 無限とも言えるスライム退治の末、俺の剣技スキルは限界を突破し、限界値であるはずの『50』を超えた。そのスキルレベルの恩恵ではあった。だが、今はまだ彼女にその事を話すべきではないと俺は思った。俺自身、まだ自分の固有スキルについてまだよくわかっていないのだ。


「よろしければ、私をパーティーに入れてくれませんか?」


「な、なんで?」


「私も右も左もわからない、新参のFランク冒険者なんです。けど、同期の冒険者もいなくて。それに、エルクさんは困ってた私を助けてくれました。エルクさんなら信用できると思ったんです」


 思わぬ事が起きた。俺のパーティーに入りたい、という冒険者がいるとは思わなかったのだ。だが、この提案は俺にとっても良いものだった。今後、クエストの難度が上がっていけば上がっていく程、パーティーの必要性も増してくる。


 それに、受付嬢も言っていたように、ソロでの攻略は推奨されていないのだ。いつまでもソロのままだと、いずれはクエストを受ける上で止められかねないのだ。


 見た目だけの事だとしても、一応はパーティーを組めていればそうなる心配もないだろう。


「俺のパーティーには入ってくれるっていうのなら実に嬉しい事だ。これからEランクの昇格クエストを受ける予定だったんだけど、受付嬢にソロ攻略は推奨されてないって止められてさ。君が入ってくれるって言うなら、もう止められる心配もないし……」


「本当ですか!? それは良かったです!」


 セラは喜んだ。


「セラ、パーティーに入る上で君の事を良く知りたいんだ」


「え?」


「だから……」


 俺は意味深な顔で告げる。


「君のステータスを見せて貰っていいか?」


「あ、はい。勿論いいですよ」


「ありがとう。じゃあ、見させて貰うよ」


 俺はセラのステータス画面を開く。


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【名 前】 セラ・ユグドレシア


 【年 齢】 15歳


 【固有スキル】 『黒魔法』


 ※ありとあらゆる攻撃魔法を使う事ができる可能性がある固有スキル


 【レベル】 30


 【HP】    100


 【MP】     200


 【攻撃力】    35


 【防御力】    35


 【俊敏性】    30


 【魔力】     200


 【魔力防御力】  200


 【運気】     30


 【スキル】


 火属性魔法LV30

 風(雷)属性魔法LV30

 水(氷)属性魔法LV30

 地属性魔法LV30


 【装備】


 魔道士の杖 攻撃力+5 魔力+10

 魔道士の服 防御力+5 魔法防御力+10


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流石は後衛の魔法職というだけあって、ピーキーな性能をしていたが、Fランクの冒険者の割にはレベルも高いし。敵に接近させる事を許さないようにフォローできれば、という条件こそ付くが、戦力として十分期待できるものであった。


 基本属性である四大属性の火、風、水、地。四つの属性魔法をどれも高いスキルレベルで習得している点も評価できる。


「ありがとう、セラ……」


 俺はステータス画面を閉じる。


「それじゃあ、冒険者ギルドに戻ろうか。そこで正式にパーティー登録をして、Eランクへの昇格クエストを受けよう」


「はい! そうしましょう! これからよろしくお願いします! エルクさん!」


「ああ。こちらこそよろしくな、セラ」


 こうして、俺達は冒険者ギルドへと戻っていくのであった。


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