第3話 無限とも思えるスライム退治
「はあっ!」
俺は剣を繰り出した。スライムの数が増えたと言っても、基本的な事は変わらなかった。スライムの単調な攻撃を避けて、それから反撃をする。
それだけだ。
強いて変わった事があるとすれば、肉体的疲労と引き換えに、経験値とSP(スキルアップポイント)の習得効率が変わった事くらいか……。
どれほどの時間が経ったろうか。無我夢中でスライム達を俺は斬り続けた。そして気づいた時には、夕暮れになっていた。
「はぁ……はぁ……はぁ。疲れた」
俺は汗だくになっていた。攻撃を食らわなかったとはいえ、剣を振るい続ければ当然のように体力を消耗する。
だが、確実な成果が一つあった。俺は沢山のスライムを討伐したので、冒険者ギルドから貰える報奨金が増えた事だ。銅貨一枚が、銅貨十枚になった。その程度の変化でしかないが……それでも一日の収入が10倍になったのだ。
これは俺にとっては凄い事だった。少なくとも、安宿に泊まらなくても済むし、普通に食事ができるのだ。それだけで俺の生活水準が大きく改善される。明日からまた頑張ろうという気持ちになれるのであった。
こうして俺その日のスライム退治を終えたのだった。
◇
スライム退治の日々は続く。俺はスライムを倒し続けた。朝が来て、スライムを退治しに向かい、気づいたら夕暮れ時になり、宿で眠る。そんな単調な生活を送り続けた。気づいたら、その生活だけでまた半年が経過していたのだ。
そうだ……。スライムを退治する事に夢中で、しばらく俺は自身のステータスを確認する事を忘れていた。たまには確認するか……。あれだけスライムを倒してきたんだ、いくら『成長率鈍化』のスキルを持っている俺でも少しは強くなっているに違いない。
「ステータスオープン」
俺はステータス画面を開く。
「な、なんだ! これはっ!」
俺は驚いた。勿論、悪い意味ではない。良い意味で驚いたのだ。そこにあったステータスは俺の想像を絶するようなものであった。
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【名 前】 エルク・フリオニール
【年 齢】 16歳
【固有スキル】 『成長率鈍化』
※レベル及びスキルレベルの成長効率が鈍化する
【レベル】 30
【HP】 300
【MP】 150
【攻撃力】 105
【防御力】 105
【俊敏性】 100
【魔力】 100
【魔力防御力】 100
【運気】 100
【スキル】
剣技LV60
【装備】
ブロードソード 攻撃力+5
冒険者の服 防御力+5
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レベルが上がっている事自体は、そう驚く程の事ではない。スライムを大量に、半年間も倒してきたのだ。塵も積もれば山となる。いくら低経験値の雑魚モンスターであるスライムと言えども、『成長率鈍化』の経験値効率を補って余りある程、大量に倒したのだ。
故にレベルが上がり、ステータスが向上している事自体には驚きがない。
だが、問題なのはスキルの方だった。俺の『剣技』のスキルレベルが『50』を上回り『60』になっているのだ。
これは、一体どういう事なんだ。俺が知っている知識ではレベルの上限は『99』そして、スキルレベルの上限は『50』だという事だった。
スキルレベルが『50』に達した人間はその分野でも卓越した人間しかいない。
例えば剣技スキルを極めた人間で言うのならば『剣聖』と言われ、称えられるような存在、という事になる。
それなのに、俺の剣技スキルは上限値であるはずの『50』を超えて『60』まで到達していた。
これは一体、どういう事なのか。見間違いでなかったとするのならば、俺は剣技スキルの上限値である『50』を超えてしまっているという事だ。
なぜこんな事が起きているのか……。剣技スキルのスキルレベルが大きく上がった事は恐らく、スライム退治で剣を振るい続けてきたからだろう。
その結果として、剣技スキルのSP(スキルポイント)を大量に獲得でき、スキルレベルの大幅な上昇をもたらしたのだ。
だが、それだけでは剣技のスキルレベルが『50』を突破できた事の説明にはならない。
ひとつだけ推論を立てる事が出来た。それが俺の固有スキル『成長率鈍化』だ。
この固有スキルはネガティブな効果しかない、ただの外れスキルだと思っていたが、もしかしたらとんでもない可能性があるのではないか?
俺が勝手にこの固有スキルを役に立たないものだと思っていたのだが。もしかしたら成長率が鈍化するのはこの固有スキルの本来の効果ではないのかもしれない。
世の中には呪いの魔剣というものがある。持ち主に様々な呪いを与え、その代償として強力な力を得るのだ。
俺の固有スキルもそういった類のものなのかもしれない。成長率がただ鈍化するだけだと思っていたが、それはあくまでも代償に過ぎない。
本来の効果はまた別にあるのではないか……。
そう思うようになって、俺の人生に僅かではあるが、はっきりとした光明が差し込んでくる事を感じた。
こうしてスライム退治を終えた俺はいつもよりも軽い足取りで、冒険者ギルドへと戻っていくのであった。
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