最弱クラスと言われている死霊術師、前世記憶でサブサブクラスまで得て最強無敵になる~最強ネクロマンサーは全てを蹂躙する~

まんじ

第1話 前世

この世界では、生まれてくる時に神から職業クラスを授かる。

そしてそれは変更の効かない物であり、それ次第でその人間の将来が決まってしまう程に大きな意味合いを持つ物だった。


――何故なら、クラスには必要なステータスとスキルがレベル毎に与えられるからだ。


商人ならば荷物を収納できるインベントリを。

鍛冶師ならば、武具の作成に有利に働くパッシブスキルを。

剣士なら強い補正と剣技スキルを。


等等、クラスによってその恩恵は多種に渡る。

だが何事にも、当たりハズレという物はあった。


本人の望んでいない方向性の職業というのも、その一つだろう。

だがそれよりももっと根本的な理由による、ハズレという物が存在していた。


――それは単純に、使えない無能なクラスが存在しているという事だ。


死霊術師。

それは死者をアンデッド化し、従えるクラスだ。


その特性上、悪側だったり、イメージの悪いクラスではあるが、ゲーム等ではそこそこ強いクラスである事が多い。


だが俺のしていたゲーム。

ヘブンスオンラインでは、この死霊術師はぶっちぎりの最弱クラスだった。


そして今俺が生きているのが、そのゲームと全く同じ仕様の世界だ。

そんな世界で、俺は冷遇職である死霊術師として生きていく事になる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あれ?」


通っていた学校を卒業する日、俺は唐突に思い出す。

自分の前世を。

そしてこの世界が、嵌まっていたゲーム――ヘブンスオンラインに、瓜二つである事を。


「ひょっとして……俺って転生者?しかもゲーム世界の」


それが只の妄想でない事は、前世の生々しい記憶から確信できた。

そしてこの世界で生きて来た15年の経験から、今生きているのがゲーム世界である事も。


「マジか……うわっ!?」


急に背中に衝撃が走り、驚いて振り返る。

そこには大柄な青年が一人立っていた。

俺の――この世界での俺が知っている人物だ。


「おい、無能。何ぼーっと突っ立ってやがる」


「ああ、ちょっと寝不足でさ……」


彼の名はマクシム。

俺の幼馴染で、武闘家のクラスを持つ――所謂ガキ大将的ポジションの人物だ。


本人は将来大冒険者になると豪語しており。

学校卒業後は即冒険者ギルドに登録し、冒険者として名を上げて行くそうだ。


「けっ。ハズレクラスでも、生きていくだけならどうにでもなるだろうが」


俺のクラスは死霊術師と呼ばれる物だ。

このクラスは、世間一般ではハズレと認定されていた。

実際、戦闘職としては最低ランクなので、その認識自体は間違っていない。


「ははは、まあね」


さっきのは適当に返した返事だったのだが、マクシムは俺の寝不足が卒業後の不安から来るものだと考えた様だ。


マクシムは少々粗暴で口も悪い――人の事を平気で無能呼ばわりする――が、実はいい奴だったりする。

このハズレクラスのせいで虐められそうになっていた俺を、彼は何度も救ってくれていた。


マクシム曰く「喧嘩する理由が欲しかった」だそうだが、勿論そんな訳はない。

何故なら、彼が喧嘩するのはいつだって理不尽に立ち向かう時だけだからだ。


「ま、あれだ。本当にどうしようもなくなったら、俺が荷物持ちに雇ってやるよ。それ位なら、お前だって出来るだろうからな」


「ああ、うん。ありがとう」


アンデッドを使役できる死霊術師は一見荷物持ちに適してそうに思えるが、全然そんな事は無い。

何故なら、使役するアンデッドがかなり非力だからだ。

当然術者も体力や腕力がないので、アンデッドと分けて荷物を持つ事を考慮しても運搬には向いていなかった。


死霊術師の最大の欠点。

それは使役できるアンデッドの弱さにある。


死霊術で使役できるのは、貢献度を50%以上とった――要は、ほぼ自分で倒した相手に限られていた。

しかもその貢献度には、使役しているアンデッドのダメージなどは一切考慮されない。


つまり、基本的に自分より弱い者しか使役出来ないのだ。

死霊術師は。


しかもアンデッド化した際に、アンデッドの能力は生前の30%程度にまで下がってしまうと来ている。

こんな糞みたいな仕様のせいで、死霊術師はヘブンスオンラインでは最弱職扱いされていた。


ま、それも最新アップデートが入る以前の話ではあるが。


実は少し前に――死んで?転生して15年経っているので、少し前と言うにはちょっとあれだが――死霊術師の強化が来ていた。

それがこの世界に当てはまってさえいれば、最弱を脱却する事も難しくない。

寧ろ、最強クラス待ったなしだ。


「ま、そん時はこき使ってやるから覚悟しろよ。むの――ぐわっ!?」


言葉の最中で、いきなりマクシムが吹っ飛ぶ。

理由はまあ分かっているので、俺は特に驚かない。

毎度の事だからな。


「全く、朝っぱらからユーリに絡んでるんじゃないわよ。脳筋」


マクシムを豪快に蹴り飛ばしたのは、後ろでまとめた茶髪ロングに、動きやすい白の厚手のシャツと黒の短パン姿の女性だった。


「おはよう、アイシス」


彼女の名はアイシス。

2年ほど前、この街へと引っ越して来たクラスメイトだ。


その性格をは一言で表すなら、正義のクラス委員長と言った所だろうか。

その気質から、アイシスはガキ大将のマクシムとはよく衝突していたりもする。


まあ勿論、本気でいがみ合っている訳ではない。

さっきも言ったが、マクシムは口が悪いだけで悪人ではないからだ。

2人のやり取りは、ちょっとしたじゃれ合いと思って貰えばいいだろう。


「テメェ、いきなり人の事を蹴るんじゃねーよ!ゴリラ女!」


「誰がゴリラよ!あんたがユーリの悪口を言おうとしていたからでしょうが!」


因みに、アイシスは武僧というクラスだ。

武僧は高い近接戦闘能力と、回復系の魔法まで使える優秀なクラスになっている。

彼女がごついマクシムを軽く蹴り飛ばせたのも、そのためだ。


「無能を無能と呼んで何が悪い!」


「悪いに決まってるでしょうが!全く……最後の最後まであんたは変わらないわね。こんな奴放っておいて行きましょ、ユーリ」


アイシスに手を掴まれ、思いっきり引っ張られる。

武僧というクラスで体を鍛えている彼女に手を引っ張られると、虚弱な死霊術師の俺では抵抗できない。


ま、抵抗する理由もないからしないけど。

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