第10話 王妃




私は王都に戻ってまずは、母である王妃様のところに行った。


早朝ではあるが、王妃様はこの時間起きている。 部屋の前にいる護衛騎士に部屋に入るジェスチャーをして扉から避けてもらった。



コンコンコン



「王妃様!ルーカスです。入ってもよろしいでしょうか」


「ルーカス?どうぞお入りなさい」


扉を開け、すぐに王妃様が出迎えてくれた。 こんなに元気そうな王妃様も来年には急病で亡くなってしまう。


そこから私の地獄が始まる。



「王妃様にお願いがあります」


「2人のときは母上と呼んでもらいたいわ」



王妃様は子煩悩でおっとりしている。側室のカーリー妃の息子であるアデル第二王子にも同じように愛情を注ぐ。 王妃様は側室に嫉妬したりしないのだろうか。 王家は子孫を絶やさぬためとはいえ、側室を設ける王は少なくない。


政略結婚で仕方なく結婚したりすると側室に愛情を求めたりするのだろうか。


私もクロエをそばに置きたくて婚約者候補にしたが、側室のつもりじゃなく、イザベラ嬢との婚約を破棄してクロエだけを妃にするつもりだった。


そのために王位継承権も放棄する覚悟だったが、私の考えは甘かった。


その前にあんな事件になり、私にはどうする事も出来なくなった。 15歳とは成人と言われる年齢でありながら、私には頼れる人がいなかった。実の父である国王さえも私の味方ではなかった。


「こんなにも早くからどうしたのですか?珍しいですねあなたの方から会いに来るなんて」


「今日はお願いがあって来ました」


10歳にしては真剣な目つき、態度で王妃様はこれはいつもと違うとおもったようで、すぐに人払いをしてくれた。


後ろ盾は大事だ。まずは王妃様に長生きしてもらいたい。王妃様はベルジック公爵家の1人娘だ。ベルジック公爵家はこの国で1番の権力がある公爵家だった。ベルジック公爵家は王妃様が嫁いだ後に遠縁の親戚より養子を取ったがその方も短命であった。


次のベルジック公爵家跡継ぎは、実力も知識もなく 対抗するデュラン公爵家に権力を奪われていった。 その後デュラン公爵家の娘ミア嬢が第二王子の婚約者になった。


よく考えれば、おかしくないか? 王妃様がこんなに元気なのに急病だとか、その途端ベルジック公爵家が権力が奪われていくとか ベルジック公爵家の力を奪って行く者がいたのでは? ならば先に手を打つしかない。


私は私が信頼する影の従者の軍団が欲しい。 それにはベルジック公爵家しか信頼出来ない。 王妃様が私の話しを信じてくれればだが・・・・・ なかなか難しいかもな


それに時間の逆行をあまり知られてはいけない気がする。王妃様は優しい、悪く言えば人を疑わないから騙される。 「ルーカス難しい顔ばかりしないで、さぁそこにかけて、ゆっくり話していいのですよ。朝食までたっぷり時間はあるのですから」


「母上、私には守りたい女の子がいます」

「まぁ!」

王妃様は乙女のように可愛らしく微笑んだ 私の金髪と金色の瞳は国王と同じ色だが 母上の綺麗な赤髪と綺麗な緑色の瞳を引き継ぎたかったと思っていた。 母上の存在感は城の中でも格別で周りをすぐに魅了してしまう。 ただ王位継承権は金髪と金色の瞳が絶対条件であるために、私が生まれた時は国王がものすごく喜んだとか。


王妃様はどの髪色でもかまわないと言っていた。


『私の子供に生まれて来てくれてありがとう』 王妃様の口癖だった。


「私は夢を見ました。この国が戦争に巻き込まれる夢をそして、それは私の大事な女の子を犠牲にしてしまったのです。信じてもらえないかも・・・・」


「信じます!」


王妃様は食い気味に返答して来た その瞳はいつもの優しく穏やかな瞳ではなく、鋭く未だかつて見た事のない目つきだった。

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