第52話 二人の想い

 俺達は、映画を観終わった後、近くの喫茶店にいた。


 この喫茶店に寄った後、レストランに向かう。


 コーヒーもおいしいが、パフェもおいしいと評判の店。


 紗緒里ちゃんは、甘いものが好きなので、喜んでもらえるるだろうと思い、ここに行くことにした。


 二人でコーヒーとそのパフェを頼んだ。


「このパフェおいしいです。ありがとうございます。好きです。パフェも好きだけどおにいちゃんも好きです」


 と紗緒里ちゃんは、微笑みながら言った。


 彼女が喜んでくれることは、俺にとって、とってもうれしいことだ。


 俺もおいしく食べていく。


「おにいちゃん、今日の映画、感動しました」


「うん。俺も感動した」


「最初は、二人がケンカをすることが多くて、仲が進まなくてやきもきしていました。でもその内、仲がどんどん深まっていって……。いいですよね。こうして素直じゃない二人が恋仲になっていくというのは。そして何といっても主人公がいいです。かっこいいですよね。二人が相思相愛になってからは、どんなに傷ついても疲れていても、ヒロインを守ろうとするんですから。ヒロインに、『俺はあなたに命を捧げたんだ。何がなんでもあなたを守る』と言ったシーン、思い出すだけでも涙が出ます」


 主人公は、男の俺からしてもかっこいいキャラクターだ。


「俺もこういうセリフが言えるようになりたいと思う」


「まあ。おにいちゃんたら。誰に対してそのセリフを言うんですか?」

 そう言われて、俺は心が熱くなる。


「そ、そうだな。俺の大切に想っている人に言いたいな」


 恥ずかしい気持ちになったので、紗緒里ちゃんに、ということは言えなかった。


「わたしにだったらいいんですけどね」


 と小声で紗緒里ちゃんは言う。


 ちょっと残念そう。


 気を取り直して続ける。


 ごめん。紗緒里ちゃん。


「そして、ヒロインが、『わたし、あなたの為ならこの命を捧げられるわ』とけなげに言うシーン、これもいいですね」


「そうだな。俺も感動した」


「わたしもおにいちゃんになら、言えますよ」


 と言って紗緒里ちゃんは微笑んだ。


 この笑顔。なんて素敵なんだろう……。


 俺は紗緒里ちゃんのことがますます好きになっていく。




 そして、レストランに着く。


 ビルの最上階にある、オシャレな店だ。


 俺達は、予約をしていた席に案内される。


 窓側の席で、眺めは最高だ。


 レストランのおすすめ料理を頼み、それを食べる。


 おすすめ料理だけあって、味も素晴らしい。


 食べている間に、外は夜になっていた。


 俺達は、コーヒーを飲みながらくつろぐ。


「おにいちゃん、今日はありがとうございました。映画を観て感動することができて、おいしいパフェも食べられましたし、映画のことでいろいろおしゃべりできました。そして、この素敵なレストランでのおいしい食事。そしてこの夜景。こんな素敵な夜景を楽しむことができるなんて……。おにいちゃんにいろいろ計画していただいたので、うれしくて楽しい時間を過ごせています。こんな楽しい時間は初めてです。もちろん、まだデートは続いています。これから電車に乗って、家に帰るまでずっと一緒ですものね。でも、まず今日の今までについて、ありがとうと言いたいです」


「俺の方こそ、ありがとう。楽しい時間を過ごしているよ。こんな楽しい時間は初めてだと思う」


 そして、今日俺は、紗緒里ちゃんに対する気持ちをしっかりとしたものにすることができた。


 紗緒里ちゃんは、俺の恋している大切な人。


「おにいちゃん、好きです」


 うっとりした表情の紗緒里ちゃん。


 いよいよ俺は、紗緒里ちゃんに告白する。


 彼女への想いはもう頂点に達しようとしていた。


「紗緒里ちゃん、話があるんだ」


 緊張してくる。


「話って?」


「そ、その……」


 その後の言葉がなかなか出てこない。


 恥ずかしい気持ちにどうしてもなってしまう。


 紗緒里ちゃんは、一生懸命、俺が次に言う言葉を聞こうとする態勢に入っている。


 彼女の想いに応える。それが今、俺がしなければならないことだ。


「俺、紗緒里ちゃんのことが好きだ。付き合ってほしい」


 俺は頭を下げてそう言った。


 彼女と再会してから、一か月近く。俺はようやく彼女に告白することができた。


 彼女の反応はどうだろうか。


 嫌だということはないと思うけど……。


 しばしの間、紗緒里ちゃんは黙っていた。


 やがて、


「おにいちゃん、わたし、うれしいです」


 と言って、紗緒里ちゃんは涙を流し始めた。


「その言葉をどれだけ待っていたことか……」


「ごめん」


「わたし、おにいちゃんが好きです。好きでたまらないんです。でもその想いが通じているのかどうか、わからなくて……」


「俺は幼い頃から紗緒里ちゃんのことが好きだった。いとことして。でも再会してからは、一人の女の子として好きになっていった。ただ、それからも、いとことしての意識が強かったし、紗緒里ちゃんに恋していくということがなかなかできなかった」


「おにいちゃん……」


「ごめんな。だいぶ待たせちゃったようで」


「ううん、そんなことはいいんです。おにいちゃんがわたしのことを好きって言ってくれる。それだけでわたしは幸せです」


 紗緒里ちゃんは涙を拭き、そして、微笑んだ。


 素敵な笑顔だ。


「ありがとうございます。おにいちゃん、これからよろしくお願いします」


 そう言って紗緒里ちゃんは俺の手を握る。


 柔らかく、温かい手。


 俺の心は沸騰していく。


「こちらこそよろしく。好きだ。紗緒里ちゃん」


「おにいちゃん、好きです。大好きです」


 紗緒里ちゃんの甘い声。素敵な声だ。


 俺は紗緒里ちゃんにますます恋をしていこうとしている。

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