第29話 好き
最近将棋を頑張っている。
これはあの人に告白する準備……いや、理由にしたいから。
「なあ一緒に遊ぼうや!」
友達ができたのは幼稚園の頃。
「うん!」
その頃の私は素直に受け入れた。
「将棋が好きなん?なんかババア臭えな」
友達が消えたのも、小学生の頃。
「えー?友達じゃん!お願い!!」
また友達ができそうになったのは小学校卒業する寸前。
「え〜友達だと勝手に勘違いしてたんだ〜ごめんね〜」
そして
本人たちに悪気はなかったのかもしれない。
けれど無意識に他人を利用し、軽々しく友達と言いながらただ自分の踏み台としか使ってないその姿に、反吐が出そうになるほどの憎悪を感じた。
結局人間はこんなものなんだと諦めてた。
都合がいい時は友達やらなんやら呼び、用済みになれば「え?友達だと思ってたんだーごめんね君の一方的な勘違いみたいだね」
だなんて言うのは見慣れたもの。
愚かにもそんな奴らに影響されて好きだった将棋をずっとやめていた。最近活動を再開したが。
それからというもの人と付き合っていく上で必ず裏切られることを覚悟してきた。
どれだけ優しそうでも裏切る。
それが人間の本性だ。
実際私には今友達という名の駒がいる。
駒と言っても利用しようってわけではない。
仲良くしてるようでいつでも裏切られることを覚悟している存在を、私は駒と呼ぶ。
覚悟しておけば感情を注ぎ込まずに済む。つまり裏切られた時の傷が浅いということだ。
そんな私の常識を打ち破ったのがあの人だ。
なんでかはわからない。
本当は知り合って間もない。
信じていいはずもない。
信じていい根拠もない。
信じていいメリットもない。
信じていい理由もない。
信じていいことなんて全くないのに—
あの無垢な笑顔を見ると、自分が長年守ってきたプライドが、砕けていった。
どうしてあんな目をできるのか。
わかっている。これは自分が言ってきた『どれだけ優しそうでも裏切る』という言葉と矛盾する。
けれどこれは理屈じゃない!!
ずっと理屈で考えてきた私がいうのは説得力が欠けるかもだけど、理屈じゃない何かが動いてる。
あのどこかの怪しい人にすぐツボを売られそうな呑気な顔をみると、落ち着く。
下心ありげだけど結局は優しくて企み抜きで助けてくれるのをみると、心が温まる。
やる気がなさそうな目をよくしてるけど将棋をする時は途端にかっこよくなるのをみると、心が揺れる。
どうしてずっと人を信じられなかったのに君にはこんなほいほいと—
可愛いところもかっこいいところも優しいところも呑気なところも——
好き……
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き……どうしようもないくらいに、好き。
自分でも意味がわからない。
人を信じなかった自分がなぜ知り合って間もないこの人をここまで信用できるのか?
もし本当に運命があるのだとすれば——
きっと好きになるのも信じるのも偶然でもなんでもなく、必然だったのかもしれない。
しかしいざアプローチしようとしても、弱い自分は逃げてしまう。
相手に彼女さんがいるからだとか自分はその彼女に勝てっこないからだとか、理由を探してしまう。
だから決めた、私たちが出逢った方法で、私たちの決着をつけようって。
———将棋
本当は自分もそこそこ強い自信はあるのに、初めてあった時に感じた彼の違和感、それに強く気を引かれて頓死した。
要するにずっと言えてないけど、一目惚れというものかもしれないな。
本当に久しぶりのタヤヒシです。
実はずっと完結させたい作品がいくつかあって、読む人いないのはすぐさせたけどこれは結構読む人いるからちゃんと区切りつけたいなと思いました。
某○王のおしごとに憧れ少しでも文脈というか文章を寄せるように書こうとしたけどやっぱり無理だったかな。
新作に将棋系書きたいけど熱くさせられる文章力なかったら絶対伸びないよね…
ちなみにかなり前に言ってたリクエストありの新作は…いつか作ります(汗
全く別の新作を作って既に公開したが深夜テンションみたいなもので…
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