ゲス貴族転生〜罪を償いドン底から這い上がる〜

オノレノギ

第一部 罪と没落

第一章 ゲス貴族転生

第1話 転生

 香水だろうか?

 強烈な香りが鼻の奥を突き刺し目を覚ますと、俺の上で獣のように腰を振る女が目に飛び込んでくる。

 両脇には豊満な乳を押し付け、肩や胸を舐めまわす女たち。自分で自分のものを弄っているためか頬を赤らめ、今にも溶けてしまいそうな顔をしている。


「(な…、なんだコレ……!?)」


 驚きと恐怖と気持ちよさが一気に襲いかかってきて頭がパニックになる。

 俺は女たちを押し退けベットから飛び出すが、いつもより身体が重く動きが鈍い。思ったより足が上がらなかったため、ベットから思いきり転げ落ちた。


「(夢?! いや痛いし、夢じゃない!)」


 思いきりぶつけた鼻を摩りながら、痛みを確認し夢でないことを再認識する。


「大丈夫ですか〜?ゲシュタル様ァ」


 女の一人が俺の足の方から胸元に向かって手を滑らせ耳元で吐息を垂れる。

 背筋がゾクゾクと波立つのを感じながらも俺は小さな違和感を感じた。


「(ゲシュタル様?)」


 女は俺に向かって「ゲシュタル様」と言った。俺はそんな名前じゃないし、日本人は大体の人がそんな横文字ではない。そんな呼ばれ方をされたことはこれまで一度もなかった。

 頭がサッと、波が引くように冷静になっていくのを感じる。


 俺はペタペタと自分の体を触ると、いつも触り慣れてる体とは全く違うことに気づいた。腕にはモジャモジャの毛が生え、なんだか脂がギトギトして気持ちが悪い。なにより、標準体型な俺にはない贅肉に体が覆われている。


 この部屋もなんだか変だ。装飾が海外っぽいし、よくよく見たら女の顔立ちも日本のそれじゃない。そもそも俺は仕事が終わって終電の電車を待っていたはずだ。

 入社3年目。仕事にもだいぶ慣れ、可愛い後輩もできた。安月給だったし仕事は忙しかったが、上司も後輩もいい人ばかりだった。

 仕事も楽しくて、上司にも新しいチームを任されたところだった。


「そうだ…」


 思い出した。俺はあの日いつものようにプロジェクトの資料をまとめるため終電まで会社に残っていて、眠い目を擦りながら帰る途中だった。

 終電の電車を待ってる時ついつい居眠りをして…。

 電車のブレーキ音とライトであたり一面が包まれた光景を思い出した。


「もしかして俺死んで…」


 俺はかぶさる女からするりと抜け、化粧台へ向かう。


「…ッ!」


 化粧台の鏡を覗き込んだ俺は驚愕した。

 そこには油ぎった、人相の悪い男がいた。


 アニメとかで見たことがある。トラックが突っ込み突如死んだ主人公の前に女神が現れ、主人公の生前の行いを憂い異世界へ転生させ新たな人生を与えるというもの。


「(アレだ…。俺、異世界に……)」


 このゲシュタルという人間に──

 転生したんだ。




★お礼

 第1話「転生」を読んでいただきありがとうございます!

 ゲス貴族に転生してしまった俺はこれからどうなってしまうのか…。

 これから始まるゲス貴族での異世界生活を楽しんでいってください。


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