17、森へ行こうよ(※「16」と関連あり)


森から吹く風に当たったら

「森へ行こうよ」

と誘う声が聞こえる気がして



君は森が好きだった

お気に入りの曲よりも 梢の揺れる音が好きだった

きっと

好きな人の声よりも 木々の声が好きだった


君に誘われ森に行き 過ごしたあの日々

ついぞ君の気持ちを聞けぬまま 終わった儚い日々



君はある日消えた

森の奥へ 奥へ 奥へ


「二人だけで森の奥に行こうよ」

と初めて言われた日


自分には薄暗い森の奥が怖く感じられ

その背を追いかけられず

君は一人森の奥へ消えた



友人に話すと そもそも君のような人はいなかった

見たことも聞いたこともない人だと

森の精霊に おそらく自分は騙されたのだと


そうかもしれない


けれど いつかあの森に行こう

いつか君に会いに行こう


もう一度

君と木の下で木々の声を聞きながら

うたた寝をしたいから



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