116.バイバイ

 卒業式のあとの集合写真やクラスメイトとの自撮り。あの一連の流れが嫌いだった。日常のひとコマを切り取る感じで撮られるのはいいけど、インスタにあげるためだけに撮るような付き合いで撮られる写真に抵抗があった。隣に立って、かわいい子の引き立て役になるのが嫌だった。また会おうねのまたがもう来ないことを私は知っていたし、そういう思い出は残したくなかった。


 鏡を見て、地元の友達が気付かないくらい変わったんじゃないかなと思う。明るい髪色。テカテカの唇。別に、俗に言う「垢抜け」とか「大学デビュー」なんかの為じゃない。私を捨てるため。誰も知らない、私でいるためだった。

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