不親切手紙




 

「どれだけ不親切な手紙なんですか?」


 封筒の方はミシン目付きだったのでぺりぺりすれば簡単に開けられて親切だったけれど、手紙はそうじゃなかった。

 おばあさんがポケットに入っていた手紙の封筒を躊躇なく開けて、半分に折り畳まれた白い便せんを左右に開くと、黒い球体が真上に飛び出して来たかと思えば、目にも止まらない速さで形を変えて、文字を宙に表示していった。

 一文字表示したらまた一文字と。


 強調して言おう。

 目にも止まらない速さで。

 たった一文字だけを。

 次から次へと。

 不親切手紙の内容表示は、あっという間に終わって黒い球体はまた白い便せんに戻って行った。


 速読かってツッコミたくなるくらいだ。

 誰が読めるって言うのよ玄人だけじゃない不親切すぎる。


「まあ、あなたには読めないでしょうね」

「え?読めたんですか?」

「ええ。コツを教わったから。友人に」

「友人って。もしかして、水田すいでん博士ですか?」


 不親切手紙に気を取られて、開基君がもう目の前にいる事に気づかなかった私は、早いなあと驚きつつ、初めて聞く博士の名前にも、そして、開基君の怒っている顔にも首を傾げた。


「水田博士?」


 そして、おばあさんも首を傾げていた。











(2023.2.13)


 

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