第14話 食べ比べ

ガンツについて歩いていくこと10分。大きいとは言えない程の掘っ立て小屋が立ち並ぶ場所に来た。どうやらここが住民の居住区となっているらしい。どの家も掘っ立て小屋なため建築技術もまだ未熟なんだろうなとレイは結論付けた。

実際は、このあたりは建築から時間がたっており傭兵ギルドを退職した者たちに貸与される家となっており自身で家を修復しながら暮らしているのである。


「ここが俺の家だ。まあ狭い家だがゆっくりしていってくれ。おーい、テーゼ、カシン帰ったぞ」とガンツが呼ぶと家の奥から40歳くらいの女性と15歳くらいの青年がでてきた。テーゼと呼ばれた女性はレイを見るなりガンツに詰め寄り。

「あんた、どこからこんな小さな子をひろってきたんだい。家の家計も火の車だってのにどうするんだい」


「違う。この坊主が家の串焼きが美味くなる方法を教えてくれるってんで連れてきたんだ。で肉の下処理が悪いってんでちゃんとした処理した肉を提供してもらって今から焼いて比べてみようと連れてきたんだ。まあ、泊まる宿もないってんで泊めてやるきでつれてきたけどよ」


とガンツは今までの経緯を説明し、さっそく串焼きを焼いて食べ比べしてみることにした。

まず最初にレイが狩ってきた肉を食べた4人は

「まず獣臭くないし、味が全然ちがう」「美味しい」「触感も違うよ」「もぐもぐ」

左からガンツ・テーゼ・カシン・レイの感想である。


「これなら間違いなく売れるだろ。レイ、1日にどれくらい肉を卸せる」

とガンツは食いつき気味に話す

「う~ん。1日3匹分くらいが限界かな。今日狩りをしてみたら1匹分しか運べなかったしそれだけ街への入場料とられるしね」


「まあしょうがねぇか。肉1ブロック銅貨11枚で買い取ろうと思うがどうだ」


「それで利益でるの?」


「傭兵ギルドでの仕入れ値は銅貨10枚だ。それにこの美味しさなら売れるだろう。仕入れ値が上がる分少し値段も上げなきゃならねぇがそこは味で勝負する」


「それだと最初の1本が売れるまで赤字続きだと思うよ。試食を試すか香草を使って匂いで客引きした方がいいと思うよ。ただ香草は乾燥させないと使えないから今は無理だね」


と話しているうちにテーゼさんがこれでいいかしらとパリパリに乾燥しているタイムを渡してきた。どうやら生活魔法の「ドライ」で乾燥させたらしい。生活魔法は誰にでも使える魔法で8歳になったときに教会で洗礼を受けるとつかえるようになるらしい。


「これを粉になるまですりつぶして肉に振りかけて焼けば香りがたつから客引きできると思うよ」


この案が採用され、タイムは1房銅貨1枚で購入してもらえることに決まった。そして、明日の狩りは荷物持ちとしてカシンを連れていくことになった。カシンは傭兵ギルドに加入はしているが狩りが苦手なためときどき荷物持ちとして同行している程度なのだという。

それでレイと一緒に狩りに行くことは問題ないということでついてきてもらうことにした。


こうした話をしている時、ずっと静かにしていたナインは傭兵ギルドで仕入れた肉を食べ続けていた。

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