第14話『螺子先輩の正体・1』
ピボット高校アーカイ部
14『螺子先輩の正体・1』
あれから、先輩の顔がまともに見られない。
ほら、プールの壁が壊れて、その……不可抗力で先輩のお尻を見てしまってから。
部活は一回あったんだけど、また、ポッペのケーキとか食べて喋っただけで終わってしまった。
そのあとは二日続けて部活は休み。
先輩も女の子だ、不可抗力とは言え見てしまったんだ、いちどきちんとお詫びを言って仕切り直しておかなきゃと思った。
あ!
そんなことを思いながら廊下を歩いていると、窓から旧校舎に向かっている先輩の姿が見えた。
チャンス!
階段を下りて、旧校舎に向かおうと思ったら、階段の途中で中井さんに呼び止められる。
ほら、女子の保健委員が休みなので、僕が付き添って保健室に行ったクラスの女子。
「田中君、あの時はありがとうね。清水さん(女子の保健委員)は休みだし、あのままじゃ、教室で倒れてた。保健室の先生も、よくやってくれたって褒めてたし……」
「あ、いや、保健委員なんだし、ドンマイドンマイ(^_^;)」
もう一言二言と思うんだけど、僕も旧校舎に急いでる。
不器用な笑顔をのこして、階段の残り二段は飛び降りて旧校舎を目指す。
ガッシャーン!
明るいところから、急に暗い部室に入ったので、マネキンを引っかけて倒してしまった。
先輩は部活中は、旧制服のセーラー服に着替えて、正規の制服はマネキンに着せている。そのマネキンを倒してしまったんだ。
ウ……
マネキンは、膝をついたうつ伏せの姿勢で倒れている。
つまり、スカートがめくれ上がって、お尻が剥き出し(#'∀'#)……。
え?
脚の付け根に傷跡が……プール事件で見てしまった、あれといっしょだ。
それまで、あっちの世界で見えてしまった時には、傷跡やあざとかは見えなかった、無かったんだ。
じゃ、これは……。
「そんなに見つめるな、恥ずかしいじゃないか」
斜め横から声がしてビックリした!
「せ、先輩!?」
魔法陣のところに先輩が現れていた。
ツカツカとマネキンに寄ると、スカートを直して腋の下に手を入れて持ち上げ、スタンドに戻した。
「見られたからには仕方がない、説明するから、そこに座ってくれ」
「は、はい」
「急なことで、お茶も無いが、辛抱してくれ」
「い、いいえ」
「実は…………」
「はい?」
「わたしは……ではないんだよ」
「え?」
「に……ではないんだ」
「え、えと?」
「人間ではないんだ」
「はい?」
「人形だ!」
スポ
「ええええ!!」
先輩は、両耳のあたりを手で挟むと、ヘルメットを脱ぐように首を外した。
「実はな、ボディーは二つあるが、首は一つしかない。そういう人形なんだ」
「あ……えと……首だけで喋られると、勘が狂います……」
「あ、そうだな……よいしょっと」
首をはめると、手で360度まわしてから落ち着いた。
「…………(;'∀')」
「回さないと、ロックがかからないんでな。まあ、見慣れてくれ」
「は、はい……」
「一度に話しても、理解できないだろうから、少しずつな……わたしは、このピボット高校と同時に作られた。このピボット高校を基地として次元や時空の歪を直すための人形、アンドロイド、流行りの言葉ではオートマタかな」
黒のミニワンピで、大剣を振り回す銀髪のゲームキャラを思い浮かべた。
「うん、そういう感じだ。ソウルはヘッドにあるんでな、時々ボディーを付け替えるわけだ。ボディーは二体とも同じ能力なんだが、そっちの方はちょっと前に痛めてしまってな、戦闘のときは、このボディー。日常生活はそっちと切り替えている。しかし、そっちは、日常の動作にも不具合が出てきたようで、こないだの水泳の授業では、よろめいて、鋲にあられもない姿を晒してしまった。そろそろメンテナンスだ」
「た、大変なんですね(^_^;)」
「他にもあるんだが、いっぺんに説明すると混乱するだろ。ま、おいおいとな」
「は、はい」
「騙して参加させたようで申し訳ない。鋲は能力が高いんでな、実は、最初から狙ってピボットに入ってもらった。これは、要の街……いや、日本、世界のためだ。如いては君のためにもなることなんだ、まだまだ疑念も疑問も解けないだろうが、よろしく頼む!」
深々と頭を下げる先輩。胸当てのホックが外れていて胸の上半分が見えて……なんにも言えなかった。
☆彡 主な登場人物
田中 鋲(たなか びょう) ピボット高校一年 アーカイ部
真中 螺子(まなか らこ) ピボット高校三年 アーカイブ部部長
中井さん ピボット高校一年 鋲のクラスメート
田中 勲(たなか いさお) 鋲の祖父
田中 博(たなか ひろし) 鋲の叔父 新聞社勤務
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