第49話 四天王の5人目は最強なのか

「私の最大の攻撃を受けなさい」


 詠唱が終了したリエルは炎と氷の混ざった球体を発生させる。とてつもない魔力を放つそれは、直撃すれば塵も残らないであろう。


「相反する二つの魔力を合わせた時、最強の威力となります。はたして、貴方たちは耐えることが出来るでしょうか」


 不敵な笑みを浮かべながら彼女はその球体を放つ。

 しかしその球体は、先ほど我とエレナが放った魔法と同じように地に引っ張られていった。


「おや、私としたことが……」


 彼女はそう言うと再び詠唱を始める。

 

「さっきから妙なことが起こるな」


「アリサよ、体は大丈夫なのか?」


「アイツから離れたらなんとも無くなったぜ」


 とすると、リエルに近づくと何かしらの影響が出ると言うことか。

 思い返せば我の放った魔法も彼女に近づく程に強く地に落ちて行った。


 そう考えながらリエルを見ると、地に落ちていたはずの球体がまた浮かび上がっているのに気付く。

 彼女に近い位置にあるはずのそれが、何故か再び浮き上がっていたのだ。


「……もしや」


「何かわかったのか?」


「まだ憶測でしか無いのだが、あやつの能力は対象を指定できないのでは無かろうか」


 何かしらの方法で対象を指定できるのであれば、我ら自身や我らの放つ魔法のみを指定すれば彼女自身は攻撃を出来るはずだ。

 だが先ほどあやつの放った魔法すらも地に落ちた。つまりは彼女の能力は自分の放つ魔法にも干渉してしまうということだ。


「さあ今度こそ貴方たちは灰と化すことになりますよ」


 リエルが再び魔法を放つ。

 そしてその瞬間、我も同時に魔法を放った。


 リエルの放った球体は先ほどと違いまっすぐこちらを目掛けて飛んでくるが、我の放った魔法も同じく彼女のに向かって真っすぐ飛んでいく。

 どうやら我の考えは正しかったようだ。


「なっ!?」


 命中する寸前でリエルは魔法を避ける。こちらも国王の張った壁により魔法から身を防ぐ。


「いくら何でもずるいですよそれは」


「そっちの能力も十分ズルだからな」


 このやり取り、見覚えがある気がする。


「しかし、これで対処法がわかったね」


「同時に攻撃をすれば通るのなら、わらわ達はリエルに付かず離れずの位置を維持すれば良いのじゃな」


 対処法が分かったため、それぞれ行動を開始する。


「こうなれば、やられる前に倒すだけです」


 詠唱を開始するリエル。再度能力を発動しているのか、アリサ達は少しでも近づくと動きが鈍ってしまうようだ。

 であれば彼女が攻撃をする瞬間にこちらも攻撃を仕掛けるだけだ。


「今だ!」


「卑怯ですよ! 能力を解除している内に攻撃をしてくるなんて!」


 リエルが攻撃を行うタイミングに合わせて神とアリサと海神が近接戦闘を行い、それを援護するように我とエレナが遠距離から魔法で攻撃を行う。

 この猛攻によって、驚く程あっさりとリエルは倒された。


「先ほど戦ったアルマと同じように、自身の能力を過信しすぎた結果耐性を付けやがらなかったんですね」


「リエルがやられたか。だが所詮彼女は四天王最強」


「四天王最強がやられてるのは不味いんじゃないかな」


「うるさいわ! 四天王ごとき私には遠く及ばんのだから、最強だろうがどうだろうが関係ない」


 ディアウスの横暴すぎる発言だが、確かに以前彼女と戦った経験から言うと新生魔王軍四天王は彼女に比べて遥かに弱かった。

 いや、決して弱い訳では無いのだろう。

 高い身体能力や魔法無効と言った特殊な能力を持った彼らは、我が魔王軍の幹部でも全員が一斉に戦わなければ勝てない程の実力者で有り脅威だ。

 

 しかしこちらには勇者が3人と神、あとその他がいる。

 純粋に一人対複数にというだけでこちらが有利であり個々の力も高いのだから、弱く感じてしまうのは仕方が無いことだろう。


「いよいよ私の出番と言うことだな」


 ディアウスは魔力を自身に集め始める。

 今、我々の運命をかけた最後の戦いが始まるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る