第28話 呆気なき最期……そして痴女
「な、なんなんだその攻撃は……私の再生が追いつかない!? ……こうなったら何が何でもすべてを飲み込んでしまえぇぇ!」
再生能力というアドバンテージが薄れたことに焦りを感じたのか、シグマは結界を破ろうとより強く圧縮し始める。
それにより結界の一部にひびが発生し、そこからヤツの一部が入り込み始めてしまった。
「少しずつ、少しずつだが破れている……ああ、やはり私の勝利は揺るがない……!」
「くそっ! このままでは結界が!」
『魔王様! 魔力砲を使ってください』
「魔力砲!?」
『魔法を使うのと同じ要領で使えるはずです!』
ライザはそう言うが、やり方など一切わからない。
ひとまず魔法を使う時と同じように魔力を体内で練り始める。そうすると、頭の中にいくつもの我の知らない魔法が浮かび上がって来た。
その中にはライザの言う魔力砲もあったため、無我夢中でそれを発動する。
「頼む! どうにかなってくれ!」
発動した直後、物凄い轟音と共に我の胸の中心から凝縮された魔力が光線となって放たれた。
それはシグマの巨体を焼き、再生できないように蒸発させる。
「くらえぇぇ!!」
我はその場で回転し、全方位に攻撃を行うことでシグマの体の大部分に光線を当てる。
「な……なんでだよぉぉ!! 途中までは上手くいってただろぉぉ!?」
体の大部分を失ったシグマは再生能力を失ったのか、体を再生させること無くのたうち回っている。
「クソ!! お前だけは殺す!! 絶対に殺してやる!!」
「んぐっ……何を!?」
シグマは自らの一部を爆発させて結界を割り、我に向かって落下してくる。
魔力砲のあまりの威力に呆気に取られていた我は、ヤツの咄嗟の行動に対応出来なかった。
その結果、真上から肉塊に覆われてしまう。
アリサに隙が出来るのは不味いとあれほど豪語しておいて、我自身がその隙を付かれるとは……情けない限りだ。
「これだけ至近距離で有れば、ローの電撃を浴びせられる! 私も死ぬことになるが、お前を殺せるのならそれで良い!!」
何とか引き剥がそうと藻掻くが、完全に覆われてしまっているためにどれだけ動いても抜け出すことが出来ない。
「くっ……放せ!」
「放せと言われて放す者がいるかぁ!? くらえぇぇぇ!!」
シグマは電撃を放つ。しかし、それが我に届くことは無かった。
「……どうなっているんだ? 今確かに攻撃を受けたはずだが……」
『魔王様! 今電撃攻撃を受けたようですが無事ですか!? スーツの耐電効果は如何でしょうか!?』
「そ、そんなものまで付いているのか!?」
『それだけではありませんよ! なんと全属性カットの優れものでございます!』
もうこのパワードスーツを着ていればどんな攻撃も効かないのでは無いか?
それほどまでに素晴らしい防御性能をしている。
「止まれっ! なんで止まらないんだぁ!?」
もはや電撃など微塵も効かない我に向かってシグマは電撃を放ち続けているが、何か様子がおかしかった。
まるで制御が効かないかのような言動をしている。
「貴様、急に慌ておってどうしたと言うのだ」
「電撃が……止まらない……。いやだ! 魔王も殺せず権能の暴走で死ぬのは嫌だぁぁ!!」
シグマは取り乱し、我から離れそのまま落下していく。
電撃に焼かれ炭となったヤツの体は、地面に叩きつけられた衝撃で粉々になり霧散した。
壮大な戦いの最後は、なんとも呆気ないものであった。
ヤツは電撃の権能はローのものだと言っていた。そしてそのローという神の使いは、最後までヤツの策に抵抗した者だとも言っていた。
ヤツの中に残っていたローの意思が、ヤツの力を暴走させたのだろう。
結果的に、我らは神の使いに命を助けられたことになる。
取り込まれてなお意思を保ち抵抗する……その戦士としての在り方に、敵ながら天晴という他ない。
◇
「なあディアベル……セクシー魔王様のおっぱい光線って……なんなんだ?」
「あぁぁぁその話はしないでくれぇぇ!!」
下着姿で戦い、胸の中心から放った魔力砲でシグマの大部分を屠ったことから一部の者の中で『セクシー魔王様のおっぱい光線』という言葉が拡大している。
あの時は緊急事態であったため気にしていなかったが、確かに我は端から見れば裸で戦っていたのだ。
つまりは痴女だ。認めたくなくとも、客観的に見れば紛れも無い事実である。
「ふーん、わかったよ。セクシー魔王様♡」
「ああぁぁぁアリサァァ!!」
しばらくの間アリサにからかわれ続けたのは言うまでもない。
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