記憶

土埃とリノリウムの香りが導く

枯れ果てた夢の底

すすすと指を這わせれば

じとりと湿る石膏材

床を這う椅子が歌うは

埋め立てられた思慕の声

正面より近く

真後ろよりも遠い場所

氷菓と心を滑らせる

朱に染まる螺旋階段

違う痛みを分かつ屋上に

簓と割れる胸飾り

叶わないのなら願わなかった


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