フリーター剣を拾う~正し使えるのは一度が限界のようです~
ヘアターバン
出会いは突然に・・・
「あー俺の人生はいつになったらうまくいくのかなー」
行動しなければ人生は上手くいかないなどとという至極当たり前な事を充分に理解しながらも俺はつぶやく。そんな適当に人生を生きてきたのがこの俺、
大学を卒業してから就活もまともにせず今日も週に四回あるコンビニアルバイトをして廃棄の弁当を食べ適当な時間までアニメを見てゲームをして適当な時間に寝る。
そんな生活を二年弱続けているわけだが、最近こんな生活も悪くないんじゃないかと思い始めている。
だって大学を卒業して新卒で働いてるやつを見てみろよ!行きたくもない飲み会に上司には連れていかされ話したくもない企業のお偉いさんにもペコペコ頭を下げる始末。家に帰っても風呂と飯を食ったら後は寝るだけの生活をしている奴が何人いると思ってる!
「そう考えると俺ってめちゃくちゃ恵まれてるのかもなぁ…好きな時にゲームは出来るし仕事も覚えてしまえば楽だしお金はちょっと少ないけど生活には困らないし!何より週に三日も休みがあるじゃん!!」
正社員で働くべきであるという常識に囚われすぎていたんだと半ば無理やり自分を納得させた俺は街灯の少ない暗い帰り道を今日はどの廃棄を食べるか考えながらスキップして帰る。日頃の運動不足の解消の為ランニングでもしながら帰ろうかと道を曲がった時何かを蹴った感覚がした。下を見ると錆びた鉄くずのようなものを蹴っていたことに気づいた。
「ん?なんだこの錆びまくったオンボロな鉄くず」
よく見てみると中世ヨーロッパやスマ●ラの某王子様剣士が使ってそうなファルシオンの様な剣が落ちている。特徴的なのは鍔のような所がライオンの形をしているという所。普通であればこんな物を路上に捨てるアホは流石にいないと信じたい。
「これ…落とし物か?いやでもこんなでかいもの落とさないよなぁ。」
少し不気味になりつつも一応拾ってみる。ずっしりとした重みがあり、振っても音を立てないので見た目以上に重さはあるようだ。鞘が被さっており錆びすぎているからか抜こうとしてもビクともしない。本来であればこんな得体のしれないものを持って帰るなどありえない話だが今日の俺はさっきの半ば無理やりな自己完結もあり気分がよくなっていた俺は好奇心からその剣を持ち帰るってしまった。
「ただいまー!」
家に着くなり玄関で靴を脱ぎ捨てるとリビングに向かう。
俺は一人暮らしなのでもちろん返事は帰ってこない。でもこうでもしないと孤独感とそれによる寂しさで泣いてしまいそうになる。実家にはフリーターになったと同時に追い出された。一年間いさてくれと懇願したが普通に却下された。鬼め。
温めた弁当を食べながら拾ってきた剣を再度見てみるがやはりただの鉄くずにしか見えない。しかし意外とこういう剣などは高く売れたりするケースがあると今は引退した名司会者がやっていた番組で見たことがある。
「まぁ、どうせ暇だし気が向いたら刀剣店にでも持っていってみるか」
なんて独り言を言いつつ食べ終わった弁当箱を流し台に置いて風呂に入り歯磨きをして剣を物置きに半ば投げ入れベッドに入る。そしてスマホで適当にネットサーフィンをする。
「前回は寝ちまったけど今日はしっかりリアタイで見てあげるからな!アニメ最高!!」
なんて呟きながら深夜の時間を過ごす。この時には既に剣の事など頭から完全に消えていた。
===============
翌日いつも通りにバイトを終え帰路についていると築25年のオンボロアパートの前に明らかに現代の日本には適していない服装の人物が三人何か話しながら見上げていた。
(なんだあれ…コスプレか…?)
背格好から男一人と女二人がなにやら喋っている事だけしか分からない。
(アニメのオフ会の待ち合わせとかか?いやでもここのアパートに住んでるのは俺を除けば何の仕事してるか分からない中年のおっさんと深夜に帰ってくる明らかにワーカホリックなOL、後はシングルマザーの親子しか住んでない筈だよな・・・まさか!大家さんが!?!?!?)
…いや、ありえん。大家さんは御年82歳になる爺さんだぞ。流石に82歳でコスプレやってかつオフ会するなんてファンキーすぎる。
結局何の目的でここにいるのか見当がつかないが正直俺には心当たりもない為関係のない話だし今日も疲れたから早く帰って休みたい。少し不気味だがさっさと家に入ろう。そう思い足早に歩くと後ろから歩いてきた俺に気づいたのか三人が振り返る。
「…ツ!!」
振り返った三人を見て俺は思わず息をのんだ・・・
そこには神が作ったかのような完璧な顔面が並んでいた。まず、男の方は彫刻のような整った顔に金髪で中世貴族にいそうな服に身を包んでいて腰にレイピアを携えている。
次に女の方は燃えるような紅い髪をポニーテールにしているツリ目の活発的な印象を受ける美少女。動きやすい軽装な鎧に左手には紅いグローブ、腰には大剣を携えている。最後に青い髪をボブカットにしているシーフの様な服装をしているジト目の少女。両腰に短剣をこしらえている。こちらは感情があまり読めずクールな印象を受ける。
俺はその三人あまりの美しさと随分凝ってるコスプレだなと感心していると男の方が笑顔でこちらに近寄ってきた。
え?なに?俺なんかした!?まさかオフ会の勧誘!?俺も歴としたアニヲタの自負があるから知識マウントだったら負ける気はしないぞ!?お?やるか!?
それか明らかに日本人離れしている見た目の為、外国の人で道が分からないとかか!?でも俺、英語で道案内とかした事ないんだけど!?!?というかそもそも英語が通じる人なのか!?
そんな事を考えているうちにもうイケメンは目の前まで来ていた。そして眩しいぐらいの笑顔をこちらに向け
「こんにちは!...いやもう日が落ちるからこんばんは?かな?」
「……は?……こ……んば……んは……?」
いきなり話しかけられテンパった俺は訳のわからない言葉を発してしまった。それに気を悪くした様子もなく男は話を続ける。
「僕はアルベール。君の名前は?」
「あ……いや……俺は……」
名前を聞かれてもどう答えればいいか分からずに困惑していると横にいた青髪の少女が助け舟を出してくれた。
「アルベール様。先生が言ってたようにこの人間は何も知らない様子。恐らく私たちが何者か分かっていないと思いますよ」
「あ、そうだったね!ごめんね、驚かせちゃって」
少女の言葉で思い出したかのように男が謝ってくる。俺はとりあえず落ち着くために深呼吸をして口を開く。
「いえ、大丈夫です。俺は風間柊っていいます」
「いい名前だ。なら、シュウでいいかな?僕の事もアルベールでいいよ。」
「はぁ…よろしく?」
いまいち状況を呑み込めず俺は返事をする。
「実はね…君の帰りを待っていたんだ」
俺の帰りを待っていた?どういう意味だ?それにさっきからずっとニコニコしていて何を考えてるかよく分からない。するとアルベールの横にいた紅色の髪の美少女が口を開く。
「単刀直入に言うわ。あなた錆びたボロボロな剣を拾ったでしょ?それを返してほしいの。その剣は私達にとって必要なものであなたには必要のないものなの」
「もちろんタダでとは言わない。それ相応のお礼はしようと思っている。」
青髪の美少女が表情を変えずに呟く。剣って昨日拾ったボロボロな錆びた剣...だよな?なんでこいつらがあの剣の事を知っているんだ?しかも俺には必要のないものだと…… 色々聞きたいことはあるのだが何故か頭の中で警鐘が鳴る。ここで何か深く関わってしまったら今までの生活には戻れないかもしれないという直感があった。
しかし、そのリスクを差し引いたとしても俺の純粋な好奇心とアニヲタとしてのオタク心が思わず聞かずにはいられなかった。
...その選択がありふれた日常の終焉を知らす事になろうとも知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます