1-5

 私達は、集団登下校で、登校の時は、上級生もお兄ちゃんもいるのだが、下校の時は、1年生だけで帰るのだ。私は香菜ちゃんと一緒なんだけど、途中で別れてしまう。その後は、一人っきりで、必ず、昂君が帰り道が一緒なので、後ろのほうを離れて、やっぱり、一人で歩いて来る。いつも、こんな感じだ。


 その日、私は、帰り道、子猫を見つけて、後を追っていったんだけど、急に犬が吠えて飛び出してきた。繋いであったんだけど、私は、びっくりしてつまずいて、転んでしまった。膝から血がにじみ出ていた。ぶざまな転び方をしてしまったんだろう。そのまま、自分の膝を見ていて、しばらく、動けなかった。泣く寸前だったのかも知れない。


「お前 大丈夫か? あんな カッコ良い転び方して・・繋がれてるのに、バカかー」 昂君が寄ってきて声をかけてきた。


「なによー その言い方 もっと、優しくしてくれても・・」


 すると、私の膝にツバをペッとかけて、ティシュで拭きだした。


「なにすんのよー 汚いわねー」


「砂が入ると 跡が残ると困るだろー 女の子なんだから・・ ちゃんと、帰って、消毒しとけよ」と、先に立って行こうとしていた。


「昂君 ありがとうね でも、起こしてくれるぐらい、しても良いんじゃぁないのー」


「自分で起き上がれるだろー 礼はいいぞ お前のパンダのパンツ見れたから、ラッキーだったから」


 クソー 見られてしまったのか! 何で、ウチって あいつには弱いんだろうか いつも・・ 


「お母さん 私 キュロットみたいなの持ってないのよ 買ってよ」


「何を 急に そんなの無いわよ どうしたのー」


「うん スカート やめる お友達だって みんな、最近はそうだし・・」


「でもねー そんなこと、急に言ったってー お兄ちゃんの古いものじゃぁ駄目ー 男の子のもんだけどー」


「うん でも良いわ 穿いてみる」と、言ったものの 確かに、男の子のもんだった。けれど、それでも、良かった。昂君にあんなこと言われてしまったんだから・・。


 次の日、香菜ちゃんに


「おはよう 真珠ちゃん 何か、探検に行くようなの着ているね」と、言われた。大きめのベルトで誤魔化していたんだけど、おかしかったのかなぁー。


 昂君は、私を見て「フッ」と、言ったきりだった。


「なによ なんかとか言えよ お前のせいなんだから・・」と、心の中で叫んでいたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る