-Ⅴ

 まだ小学生にあがったばかりの頃、彼方は初めて姉と顔を合わせた。それまで彼方は両親に、姉は祖父母に育てられていた。細かな事情はいまだに聞かされていないが、あまり褒められた理由ではないだろうというのは察している。

 両親には前もって、姉に変なことを言わないようにと注意されていた。あまりにもしつこい父と母の言葉を鬱陶しく思いながら、彼方は幼心に、姉とはいったいどんな人なのだろうと興味を膨らませた。

 そしていざ姉と会ってみて、父と母がなぜああも口うるさかったのかを、なんとはなしに察した。

 一応、前もって彼方は姉の写真を見せられてはいたものの、ちょうど変身ヒーローや光の国の住人、怪獣などが実際にはいないと知ったばかりだったのもあり、親の真剣な表情や訴えを見ているにもかかわらず、白い髪や白い肌をしたその人物が姉だとは信じていなかった。あまり、周りに外国人がいなかったこと、そして、両親の髪や肌の色が彼方自身とさほど変わらなかったというのもあり、家族全員がたちの悪い冗談をしかけているのだと思いこんでいた。

 そんな疑念は顔を突き合わせた瞬間にすっかり晴れた。眼鏡ごしに青い目をむける姉の髪は真っ白で、不健康そうな色をした顔はどことなく縦に潰れるようにふっくらとしていた。それを見ながら、彼方は教育テレビに映っていた牧場の様子を思い浮かべ、反射的に口にしたのが、白豚、である。

 ……思いだせる範囲ではどこまで悪意があったのかははっきりとしなかったが、物珍しさ以上に、醜さを見てとったという感じはする。とりわけ、当時周りにいた太っちょの同級生たちの陰険さに辟易していた彼方にとって、似たような顔つきをしていた姉に、いい印象を抱いてはいなかっただろう。

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