第24話

アン子がなかなか帰って来ないので、少し不安になった俺は叫んでみる。


「アン子ーーっいるかーーー‼」


「いるけど溺れそうなのー!」


アン子の所在を視認した俺は、クロールですっ飛んでアン子を半分抱えた。


「だから言っただろう、深い所へ行くなって」


「違うの流されたのん…‼」


「戻るぞ」


アン子は砂浜で城作ってたほうが安全だ。


しかしアン子ほどの体重で、『抱えて走る難しさ』を知る。ダイバーはやはりすごい。


「もう帰ろうか」


「うんなー」


2人は部屋を取っているホテルに向かった。食事もしたいがまずは部屋だ。


部屋に戻ると、部屋のすみに体操座りで心のしぼんだ、すみれがいる。


「どうしたんだ?」


「…じゃないもん」


「何だって?」


「私悪者じゃないもん!」


そう言って泣き出した。


「すみれが謝れば、悪役じゃない。でも謝らないなら悪者だな」


「誰が謝るか…」


俺とすみれはジーっとすみれを見つめる。


「……ごめん」


「聞こえないなぁ」


「だからごめんって言ってるでしょう!わかった?小豆洗い」


やれやれと服に着替えていると、


「キョースケ、日焼けしてるのん!」


本当だ。特に肩が真っ赤になっている。


「私は日よけ止め塗ってるからこの通りよ?」


誰も聞いてない。食事に行くみたいな事を話し合っている。


すみれはまだ水着のままだったのでTシャツを1枚着てキョースケの後を追った。


「グァムと言えばアメリカ!アメリカといえばステーキ!」


「ステーキ食べるのん?」


「ごめんすみれ、お金出してくれないか!」


そう言って俺は土下座した。


「ま、まぁ土下座までさせたんだからいいわよ、カードも持ってるし」


「ありがとなの!」


「キョースケだけにおごりたいんだけど?」


「アン子も土下座しろ土下座」


アン子もキョースケと同じように土下座した。


通りがかったアメリカ人が、


「オー、ジャパニーズ・ドゲザ‼」


と笑って向こうへ消える。


「分かった、分かったから普通にして恥ずかしいから」


「ありがとう!存分にゴチになります!」


「なの!」


そう言ってはしゃぎながら、ホテル内にあるステーキ店に入ってゆくのだった。

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