第31話 聖なる指輪

「おやおや、このワタシを置いて何処の女と浮気してきたんだい?」


『悪逆非道王様。無断で感知範囲外に外出とは感心しませんな。』


『ワンワンッ!』


合流地点に戻ると、不機嫌三人衆が腕組みをして待ち構えていた。


…しまったぁ。時間計算間違えた。調子に乗って、宝物庫のアイテムを全部回収してしまったのが原因かな。…こうなったら、プレゼント攻撃でやり過ごそう。幸い、ドラゴンゾンビからゲットしたレアアイテムがあったんだよね。~


「いやいや、三人にプレゼントするためにアイテムを取りに行っていただけっすよ。ほら。」


そう言って、アイテムポーチからアイテムを取り出す。


〈聖なる指輪〉

強力な聖なる力で1ターン事にHPの20%回復する。攻撃に〈闇属性特攻〉が付与される。


―ッッッッ!!!―


三人衆は一瞬固まった後、恐る恐るアイテムを手にしていく。


「せ、“聖なる指輪”かい…。…ふ、ふん。…ま、まぁ、そういう理由じゃ仕方ないさね。“天使の指輪”以上の伝説級アイテム…さすがのお前さんでも、そう易易と手に入れることはできまいしな…。ボソボソ…婚約指輪が“天使の指輪”で、結婚指輪が“聖なる指輪”なのかい…これほどの代物を渡されて…断る女なんていやしないよ…。」


『わ、我に“聖なる指輪”を下賜されると…。ふふ、なるほど、影や闇だけでなく、光や聖をも飲み込めということですか。流石は、我がカオスロード。』


『クゥ~ン。ワンワン♪』


…どうやら、正解だったようだ。変な発言が含まれていたかもしれないけど、今更だから気にしないでおこう。…


ヴゥゥゥン―


ホッと胸をなで下ろしていたところ、周囲に転移魔法陣が次々に展開されていく。


「…こりゃ囲まれたね。ヒャヒャッ。―サンダー、アルテミスッ!転移完了するまで待つこたぁないよ。“聖なる指輪”を持つ者−三嫁‐で力を合わせようじゃないか。まずは、正妻のワタシからいくよッ!」


…三嫁ってなに?…


ニーナは魔導書を構えると、詠唱を始める。


「地獄の灼熱の大嵐よ、死屍累々の山を築けッ!

広範囲闇魔法―アビス・サークル・ストリーム―」


詠唱を終えると、漆黒の炎の嵐がニーナを中心に巻き起こる。


―ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ…


「ヒャヒャッ!いつでも転移してきな。転移した途端、丸焦げだけどねぇ。」


炎の嵐の中から転移してきた魔族達の断末魔が次々に聞こえてくる。


「うわぁぁっぁぁぁッ!」

「な、なんだッ?ウギャァァ…」

「こ、広範囲魔法ッ?!」

………

……


『ふふ…。スキルや奥義で回避した者も一定数いるようですね。そうこなくては、歯ごたえがない。』


スキル―広範囲化―

スキル―麻痺毒―

幻術 ―迷いの森―


サンダーがスキルを発動すると、周囲の景色が幻でできた霧が立ち込めた森に変わっていく。


『秘術:夢幻牢獄』


ドサッ…ドサッ…ドサッ………


炎の嵐を防いでいた者も次々に倒れていく。


「か、カラダが動かない…」

「麻…痺…毒…?い…つ…の…間…に…」

「防御奥義がキャンセルされただとぉおぉ…」

………

……


『ワォォォンッ!』


アルテミスの口にエネルギーが集束されていく。


キュイン―


―圧縮型波動弾―


ピュンッ!―


圧縮されたレーザ光線がまだ動けている敵を的確に狙う。


「ウギャァァッ!」


流れ作業のように、次のターゲットに照準を合わせる。


ピュンッ!―


「ホヒェッ…」


ピュンッ!―


「エッ…」


ピュンッ!―


「…


………

……


「…ブロッケン。さっき渡した“聖なる指輪”は見えない場所に装備してくれるッスか?なんか、嫌な予感するッス。」


『シャ、シャー…。』

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