第35話 花火が普通じゃない
祭りの屋台で買った...もしくは奪った景品を全て車に積み込み俺は嫁達に合流した。
俺が戻った時、丁度嫁達は金魚すくいを終えた所だった。
恐らくポイでしっかり取ったんだろうが、嫁の手には真っ赤になった金魚袋。
うわっ...きも
真衣と由衣の金魚袋には2匹ほど、快の金魚袋は守り神さんと共同で3匹。
それに比べ...嫁の金魚袋は...数えられない...そこまで大きくない金魚袋にぎちぎちに詰められている。
俺に気付き駆け寄ってくる、真衣と由衣の頭を優しく撫でる。
「パパ!見てみて!」
「すごい?すごい?」
「あぁすごいぞ」
ニコッと笑みを浮かべた後、俺は真顔になり嫁をみる。
「いっぱい取れた」
「・・・戻してあげなさい」
「うん...」
しょんぼりする嫁に罪悪感を抱かなくもないが流石に金魚が可哀そうだ。
それに、例え小分けにして持ち帰ったとしても、どうせ、嫁が飼ってるペットの熊に食べられてしまうのだから...。
嫁が囚われの金魚達を開放していると、どこからともなく太鼓の音が響いて来る。
「パパこれなに?」
「なにかはじまる?」
「花火かな?なんだろうね」
太鼓の軽快なリズムに合わせ空に花火が打ちあがった。
リズムに合わせドンドンと打ち上げられていく。赤。緑。青。黄。
様々な色と形を夜空に作り、儚く散っていく。
美しく咲き乱れる花火に俺達は直ぐに心を奪われた。
初めての打ち上げ花火に子供達も大喜び。
花火の色に照らされ染め上げられる嫁の姿を俺はつい眺めてしまった。
悲壮感の溢れる嫁の横顔。俺がじっと見ている事を知るとニコッと笑みを浮かべ俺の肩に頭を乗せる。
「綺麗だね。菊の花火」
「あ、あぁそうだな」
何故か胸がドギマギし無性に恥ずかしくなった。
激しくなる太鼓もやがてはクライマックスへ...。
「最後は大きいの行こっか」
「ん?」
嫁は人差し指を天に向けて微笑む。
「【
嫁の指先から放たれた花火は天へと上り八重の菊で夜空を埋め尽くす。
色とりどりの輝き。あぁ...綺麗だ...。
言葉なんて出なかった。出るはずもなかった
その絶景に屋台を出していた人達はおろか、数少ない祭りの客も、等しく空を見上げた。
全員が花火に釘付けになって居れば、俺の唇を奪った嫁に気付く人は誰も居ない。
俺の嫁は普通じゃない。
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