ベランダの蝉(そんなに好きじゃなかった)
一夏に一度、必ずベランダに蝉が来る。
遊び場としてではなく、終の場所として。
午後一番に健康診断を終えて帰宅したわたしは、熱気籠る自室で冷たい烏龍茶を飲みながら窓の外を眺め、呆けていた。
それは遊び倒した週末を思い出し、ウトウトし出した頃やってきた。
ばちばちと網戸に体をぶつける音がした。
ベランダの壁や地面に跳ね返されながら、何度も何度も。
わたしはただじっとその様子を聞いていた。
程なくしてそれは収まり、また直前の世界が戻ってきた。わたしは無意識に少し眠ってしまっていた。
夕方、起き出し洗濯物を取り込むためにベランダに出た。そこには足を広げて、ひっくり返った音の正体がいた。隅にひっそりとあるそれに、妙に納得した。
それは毎年気づくと、無くなっている。
その時いつもベランダに吹く風が少し涼しくなったことに気がつく。
そんな今日の1曲。
Base Ball Bearで『そんなに好きじゃなかった』
半年後、わたしの小さな世界はガラリと変わっている気がします。
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