蛍光(firefly)

はじめて蛍をみた。


山の奥、水の流れる音が聞こえる場所で彼らは輝いていた。成虫の寿命は約1〜2週間。その間にパートナーを見つけて、繁殖活動を行う。その後オスはほどなく死に、メスはたまごを産んでから死ぬそうだ。


幼虫やさなぎの期間があるとはいえ、なんて儚いのだろう。生きる目的は繁殖であることが明確である。恋多き蛍や、独身を貫く蛍もいるのだろうか、と考えてしまう。


何がしたいか、や何のために生きているのだろうと考える猶予のある人間は幸せであると思った。選択肢が多いと悩みも増えるが、それは地球上に存在する多くの生物からすると贅沢で、傲慢なものなのではないか、と。


そう考える私の隣で、一緒に見に行った友人が言った。

「蛍の光は、本当に蛍光色なんだね。」と。

確かにそうだ。


同じものを見て、違うことを考えられる。

素敵なことだ。

空を見上げると、信じられない数の星が瞬いていた。一つ一つに人間は名前をつけている。不思議な行為だ。


綺麗だね、と一同星を見上げながら、別の友人がぼそっと呟いた。

「人間から見て蛍は儚い。だけど、同じように星から見ると人間も儚いんだろうな。」と。


いい夢が見られそうな気がした。


そんな今日の1曲。

BUMP OF CHICKENで『firefly』


頑張っている時に頑張っているな、と気付かされる曲です。

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