天敵襲来(会心の一撃)
周囲の友人らに比べて、たぶん掃除はとても丁寧にやっている方だ。
ただ、細かいところに気になってしまうだけ、ということもあるが、1番の理由はゴキブリだ。どうしてもあの存在だけは受け止められない。
昨日の夜中、パックをしていたらついに出た。一人暮らしをし始めて約7年。はじめてのご対面だった。どこから来たのだろう。おそらくどこかの配管だろう。さあ、どうしよう。
そこまでは冷静に考えられた。
しかし、大きな油断をしていた。
これまで見たことないから、きっと今回の家も出ないだろうと鷹を括っていたのだ。
ゴキジェットの類の備えがない。
なんという愚かなことだろう。
さすが築30年。
侮れない。
私が知らない共存の歴史が数多あるのだろう……。
学生の頃なら自転車でその道の達人(ゴキブリ退治)を呼べば良いという噂があった。ただ、今現在周辺に知人はいない。
自分でなんとかしなければならない。
新聞紙を丸めて強度を出し、戦闘体制に入る。飛ばないよう、近づかないように叩く。
必死に何度も何度も。
それなのに全身の力をこめているはずの棒は、何度も空を切るだけだった。
少し距離をとった位置にどうしようもなく立ち尽くし、ただただ見つめ合う時間が続いた。
諦めかけたその時、玄関の方にいたそれは猛スピードで私のいるベランダ側へ走ってきた。
ベッドを超えて、ベランダへ向かう敵。
咄嗟にベッドの上にのぼり、窓ガラスを開けてベランダを開放した。
途端に風が吹き込み、危険を察知したのか立ち止まる敵。なんとか外へ誘導しようとする私。
攻防戦の末、触角を駆使して敵は外の安全を確かめ出て行った。日頃の動きからの倍ほどのスピードで窓ガラスを閉める私。
完全勝利だった。
おそらく我が家以外に侵入していたら殺されていたであろうゴキブリ。
いつか蜘蛛の糸のように私を救ってくれる、なんてことがあったら嬉しい。
とりあえずすぐにでもゴキジェットを買いに行こう。
そう決心したそんな今日の1曲。
RADWIMPSで『会心の一撃』
もう出ませんように……。
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