28.支援役ロベル 魔族四天王のひとりをカンタンに倒す①



「どうして俺、レベルもステータスも最大限界をぶっち切ってるんだろう……?」



そうだ。みんなにも聞いてみようか。



「サミー。ちょっと確認だけど」



「ん? なあに、お兄様?」



「確か、前に言ってたよな? 冒険者のレベルは99が最高だって」



「うん。ステータスの最大値は999だね。フツーは、だけど」



……ん? 普通は?



「ってことは、普通じゃない場合もあるのか?」



「うん! お兄様みたいに、たまーーーーーに超えられる人がいるみたい」



「そうなのか!? というか、俺がレベル99超えてるって知ってたの?」



「うん、知ってた」



「あ、わたしも知ってましたよ?」



「もちろん私も」



……マジで? サミーもアンリもトウナも知ってたの?



「そ、そうだったのか。俺、てっきり誰も知らないと思ってたよ。みんな無反応だったから」



「だってお兄様だもん! 当然かなーって!」



「あなた様ですし。当然ですよね」



「主様だし当然」



「理由になってないと思うんだけど、俺の気のせいか?」



「うふふ! やっぱりお兄様はキセキの人だね! 上限突破できる確率って、100万人に1人らしいよ!」



「100万人に1人!? そんなに低い……あ、でも待てよ」



あの『プラチナメタル・ブレスレット』のドロップ率が1/10000だから。



「ブレスレット100コ分と同じ確率か。案外たいしたことないな。『エンカウント操作・インスタント』を使えばカンタンにいけそうだし」



「おにーさま? たいしたことあるから! その計算、お兄様専用だから!」



サミーのツッコミが入った。



「とゆーか! そんなことが平気でできちゃうお兄様の『エンカウント操作・インスタント』ってスキル、ハチャメチャだから! 目覚める確率、おそらく100万分の1より低いんじゃないかなぁ?」



「そもそもレベルが上限突破できるとして、ですよ? 普通はレベル99までたどり着かないのでは? かつての勇者様が魔王を倒したレベルは、77だったそうですし」



「主様は確実に歴史上最強。その次が大きく離れて、主様の力を受けた私たち」



……うーむ。



レベルやステータスの上限突破やら。『エンカウント操作』のチート覚醒やら。



「もしかして俺、すごい星の下に生まれちゃったのかなぁ?」



「まあお兄様だしねー。納得だよねー」



「あなた様に運命が味方するのは、当然かと」



「主様なら何でもアリ」



「やっぱり理由になってないと思うんだけど、俺の気のせいか?」



……まぁ、こういうこともあるんだろうな。世の中何が起こるかなんて、誰にもわからないんだ。それに。



「レベルやステータスが高くても。スキルをたくさん使えても。力を見せびらかすだけじゃ意味がない。大事なのは手にした力で、どんな支援ができるか、だからな!」




「クククククククク……! リッパなお考えですネェ……!」




あたりに何者かの声が響いた。




「主様、何かが来る」



「この雰囲気……転移魔法です、あなた様」



「お兄様! 気配が『大聖堂』を襲ったヤツに似てるよ!」



「『大聖堂』の? ということは、高位の魔族か!」




「クカカカカカカカ……カアアアアアアアアッ!」




目の前に、マントを羽織った男が出現した。マントには黒い宝玉が、4つ埋め込まれている。




「クカカカカ! 驚かせてしまいましたかな?」



「いや、特には」



「クククククククク! なかなかユニークな反応をするお方ですなぁ! ワタシの手で殺す価値があるというものですよ! この! 魔王様直属の! 『魔族四天王』がひとり! 『不死のガイナ』の手でね!」



感覚でわかった。確かにこいつは高位魔族だ。しかし。




「あんまり強くはないな。これなら俺1人でも何とかなりそうだ」




「なーんか、お兄様と比べたらぜんっぜん弱っちそう」



「あなた様の敵ではありませんね」



「主様の楽勝が見えてる」



「まあ……そんな気がするよなぁ。客観的に見ても」



別になめてるつもりはない。慎重さを欠いているつもりもない。事実なんだから仕方がない。



「むぐっ……と、とにかくです! この! 魔王様直属の! 『魔族四天王』がひとり! 『不死のガイナ』は!」



「いや別に、そんなに強調しなくていいから」



「だまらっしゃい! ワタシは偉大なる魔王様の命を受け! 『魔族四天王』を代表して! 魔王様の敵となる存在を始末しに来たのですよ! 最有力候補はアナタと、魔王様は考えておられますからネェ!」



「いやいや、俺はそんなに大したヤツじゃない。魔王も的外れだなー。みんなもそう思うだろ?」



と、俺はみんなに振ってみたが。



「なかなかやるわね魔王! お兄様の力に目をつけるなんて!」



「こればかりは認めるしかありません! 見る目があると!」



「敵ながらあっぱれ」



「おいおいおいおいおいおいおい!」



なぜか大賛成されてしまった。



「クククククク! このワタシ! 『不死のガイナ』のチカラは圧倒的! アナタ方がどうお考えになろうが! 『魔族四天王』の力に、人間ごときがかなうはずないのですよ! アナタみたいな男と小娘が何人集まったところで、ワタシを倒すことなど不可能!」



「……まあ。そこまで何度も、四天王四天王言うってことは」



俺は納得した。



「あんた。本当に『四天王』なんだな」



「フザけるな!?」



「いや、別にフザけてるわけじゃ――」



「やかましい! その余裕もここまでですよ! さあ、おしゃべりは終わりです! このワタシ! 『不死のガイナ』が! この場でアナタ方を! 死の世界へと連れて行って差し上げましょう! ありがたく思いなさい!」



「それは無理だな」



そうだ。どんなに慎重に考えてもわかる。



「この状況で俺たちが負ける確率は、ゼロだ」



「減らず口を! ワタシの力を思い知りなさい! 『デス・コネクション』!」




ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




魔族は闇の波動を放ってきたが。




ピキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!




俺たちの体を、プラチナメタル・ブレスレットのバリアが包んだ。バリアの効果で、波動は俺たちに届かない。




「なんですと!?」




「力の差は圧倒的だ。支援スキルを使うまでもない」




俺はショートソードを抜き、魔族に向かって斬りつけた。




ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」




魔族は悲鳴をあげ、その場に倒れた。



「まずはこんなもんか」



「何か拍子抜けー」



「力の差がありすぎましたね!」



「主様とやり合うなんて愚か」



「ただ、まあ。これで終わりじゃなさそうだけどな」



そう俺が言ったとき。




パキイイイイイイイイイイイイイイイイン!




魔族のマントに埋め込まれた、宝玉の1つが砕け散り。




バシュウウウウウウウウウウウウウウウ!




中からあふれ出た闇が、魔族の体を包むと。




「クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!」



ふたたび魔族が立ち上がった。



「クカカカカカ! 理解していただけましたかな? ワタシは何度でもよみがえる! 『不死のガイナ』はダテではないのですよ!」



「復活した? もう! しつこいなぁ!」



「なるほど。『不死のガイナ』……名前だけではない、ということですか」



「往生際が悪い」



「確かにアナタ方はお強いようだ! ですが! ワタシが無限によみがえるのでは、どうすることもできないでしょう? 人間ごときの力では、ワタシを滅ぼすなど不可能なのですよ! さあ! おとなしく降参なさい! クカカカカカカカカカカ!」



魔族は勝ち誇っているが。俺は言ってやる。



「けど、あんた。本当は、あと3回しか復活できないんだろ?」



「クカカカカカ……カ?」


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