第6話「王子風情の言った『黒』など簡単に『白』にできます!」
「そんなこと些細なことです。
シュテルンベルク帝国の力があれば、ホルン王国の王子風情が『黒』と言ったことを、『白』に変えることなど造作もないことです。
シュテルンベルク帝国にはそれだけの力がありますから」
そう言ってレイが笑う、その笑顔はとても黒かった。
「身分のことも心配いりません。
元侯爵夫人とその娘の不正を暴き、裁きを受けさせます。
ロイエンタール侯爵家から出ていくことになるのは、彼らの方です」
「そんなことができるの?」
「できます。
シュテルンベルク帝国の力を持ってすれば、出来ないことはありません!
だからメリー、僕を受け入れて下さい」
「私もレイの事が大好き!
誰にも渡したくないよ!」
「ありがとうメリー!
その言葉が聞きたかった!」
レイにぎゅっと抱きしめられた。
レイに顎くいされ、レイの唇が私の唇に触れたされた。
レイに後頭部を押さえられ、角度を変えて何度もキスされた。
「もう……レイったら、がっつきすぎ。
私、キスしたの今日が初めてだったのに……」
「すみません、嬉しくてつい」
心臓が今でもドキドキしてる。
「もうキスするならするって言ってよ!
髪はボサボサだし、ドレスは泥だらけだし。
ファーストキスはもっときれいな格好しているときに、お花畑が見える綺麗な湖にボートを浮かべて、ロマンチックなムードでしたかったのに……」
「星空の下で、ドラゴンの背に乗って空中散歩というシチュエーションもなかなかロマンチックだと思いますよ」
「そうだけど、服と髪型が……」
「ならメリーのドレスを脱がせば……」
バシン……!
レイの頬をひっぱたいていた。
「変……態!」
自身の胸の前で手を当て、あとずさる。
「メリー、あんまり後退すると落ちますよ」
ドラゴンの背の上だと言うことを忘れていた。
バランスを崩し落ちそうになった私を、レイが抱き寄せる。
レイから距離を取るはずが、逆にレイに近づく結果に終わってしまった。
「誰のせいよ……」
眉根を寄せ、レイを睨む。
「すねた顔のメリーも可愛いです」
レイが私の髪にキスをした。
「もうからかわないで……レイ!」
「すみません。
ですが先程メリーのドレスを脱がしたいと言ったのは、いやらしい意味じゃないんです」
「ならどういう意味で言ったの?」
「メリーが今身につけているその真っ赤ドレスは、もしかしてホルン王国の第一王子の瞳の色ですか?」
ワルデマー殿下は赤い髪と赤い瞳をしていた。
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